魔王の涙

※父上についてのねつ造が激しいです。


「姉上、なぜ僕を殺さないのですか?」
 末森城を去るとき、弟から声をかけられた。馬に乗る直前の信長が一人、信勝が一人晴れた空の下にいる。姉弟で争ったばかりなのに二人きり、時期を見て話しかけたのだろう。
「信勝、貴様どこから……何を言い出すかと思えば、そっちが謝っただろう、だから今回は見逃しただけだ」
 織田家を分ける骨肉の争い、稲生の戦いは信長の勝利に終わった。末森城から母と柴田勝家とともに現れた信勝は白旗を振った。降伏を受け入れたというのに弟は不服そうだ。
「形だけはそうですが……姉上が僕を許すはずがないと思っていたので」
「わしの寛大さに感謝することだな、これからは心を入れ替えて仕えるように……」
「僕は母上だけを助けるつもりだったんです!」
 初めて信長は信勝の顔をまともに振り返った。無論弟が刃を向けたことに怒りを感じていたがそれ以上に不思議だった。これが謀反を起こした弟の顔か? 斉藤道三を失って勢力を弱めた姉の隙を逃さなかった野心を持つ顔なのか?
(まるで殺意が感じられないではないか……いや、そんなはずはない。謀反をされて何を今更、戦の世に兄弟の裏切りなどありふれていると分かっていたではないか)
 信勝を侮ってはならない。正直乱世には向いていないが、何事もそこそこはできる性質だ。だから今が姉を追い落とす好機と決起しただけのこと……信長の心境とは裏腹に信勝は自分が生きているのはおかしいと言い続ける。
「母上はいつまでも道理がわかってなくて、本気で僕が勝つと信じていたから気の毒で……でもまさか姉上が僕まで許すなんて」
「もう決めたことだ」
「僕は死んでもよかったんです、だって……負けたんですから」
「お前のためだけではない、母上の頼みだから一度だけ例外だ」
「一度だけ?」
 なぜか信勝の瞳は輝いた。
「本当ですか、今回だけなんですよね?」
「うかつなことをいうな、二度はない。あまり煩わせると本当に斬るぞ」
 信長は腰の刀を抜いた。そのまま信勝の首に刃を当てるが怯まない。弟は丸腰で抵抗の術はないのに穏やかだった。
「このまま斬っていいのですよ。僕はあなたに、姉上に……負けたのですから。理由は性懲りもなく姉上を殺そうとしたといえば通るでしょう」
「……信勝、なにを考えている?」
 信勝は刃先に人差し指で触れ、わずかに滑らせると血が滲んだ。警戒する信長と対照的に微笑む弟は机を並べて学問を習っていた頃のようににっこり笑った。
「姉上、この世はくだらないですね。男が家を継いで、女は家に嫁ぐ。あなたは誰よりも天下に近いのに、女のくせにと言われる。僕は何度も自分の弱さを呪いました、なら自分は男のくせになんなのか……性別なんてくだらないものなのに何度も思いました。
 僕が女であなたが男なら全てよかったのではと」
「それが……今回の謀反の理由か?」
 信長は怯んだ。戦でさえ滅多に恐れなど感じないのにすぐ首が落とせる信勝が不可解でいやな汗が頬をつたう。
「姉上、分かっていますよね。くだらない世の習わしですが、僕はあなたの邪魔なのです。僕たちが織田家の姉弟である限りずっとずっと僕は障害になる……今回はあなたにとっていい機会だったのに。
 二度と子供のように僕を甘やかさないでくださいね」
 このままではあなたが汚れますねと信勝は刀から離れ、そのまま一人末森城に戻っていった。
「……信勝?」
 謀反までされたというのに。
 生まれて初めて信長は信勝の考えている事が分からず、戸惑った。

 二年後、信勝は謀反の準備をしていると柴田勝家に密告され、そして信長は捕らえた信勝に死を命じた。


魔王の涙




 弟は笑顔で腹を切った。母に何か言われた気がしたが聞こえなかった。誰にどう思われようがどうでもいい、信勝はもう帰ってこないのだ。
 自分がもっとうまくやれば……殺さなくてすんだ。
「しばらく誰もわしの部屋に通すな」
 信勝の切腹の日は決まっていた。だから信長はあらかじめ三日休みをもうけておいた。不意に涙がでたり、食が細くなったりするだろうと先手を打っておいた。そのあたり信長は抜かりなかった。
「……あれ?」
 しかし、夜が明けても涙は出なかった。それどころか腹がぐうぐう鳴り、朝食もぺろりと平らげた。昼前には退屈で本まで読み始めた……心身ともに健康そのもの。これではただの休暇ではないか。
(わしは弟が死んでも悲しくないのか? 本当は信勝を疎んじていたのか? 逆らったから死んで当然だと?)
 一つ一つ自分に尋ねるが全て答えは否だった。大切な家族だった、どんな形でも生きていてほしかった。今だって過去を悔いている。
 こんな事なら稲生の戦いの時に全部取り上げて寺に閉じこめておけばよかった。姉上姉上という声がうっとうしいこともあったが、いてほしいから傍にいさせたのだ。二度の謀反だって……もし何もかも捨てて逃がしてくれと言えばあるいは。
「馬鹿馬鹿しい」
 信勝は笑顔で死んだ。逃げることだって拒否したのだ。穏やかな死に顔はかえって信長の心に焼き付いた。全部平気ですといいたげなその表情をどうしても受け入れられない。
「……母上は泣いているか」
 ふと母のことが気になってそっと様子を見に行った。見つからないように部屋の様子をうかがうと声が漏れた。予想通り嘆き悲しみ、床にふせっている。襖の向こうから信勝、信勝と涙混じりの声が聞こえてくる。
「信勝、信勝……ああ、助けられなかった母を許しておくれ……!
(わしも三日ばかりはこうなるつもりだった)
 人の悲しみとはそういうものだと思っていた。大切な人が死ねば、泣いて、食事が喉を通らなくなり、眠れなくなると信じていた。
 しかし信長は昼食も腹が減り、じっとしていると退屈だった。ちっとも涙がでない。血だけの姉弟ではない、本当にかわいがった弟だった……悲しまない自分は人の心がないのだろうか。
「……母上はまだ泣いておられるか」
 数度母の様子を見に行くが変わらず息子を亡くしたことで泣いていた。戦国の世に身内の死は珍しくない……けれど母のように悲しめないことは自分が欠陥品と言われている気がした。どうしてその半分でも涙が出ないのか。
 部屋に帰り、一人になる。寝室の窓からは尾張の地がよく見える。青空をじっと見上げて、目を閉じて自分のまぶたを押すが涙は出てこなかった。
(わしはなんじゃ、最後の様子から信勝の真意はだいたいわかっているというに一滴もでてこん)
 時間だけが過ぎていく。空に月が昇り、夕食もきれいに平らげた。心は平静、体は健康。それが苦しい、なんともない自分が呪わしかった。
(大切だった、嘘じゃない、大切な家族だった)
 つまり自分は大切な弟が死んでも、全く問題なく日常に戻れるのだ。
「……父上が正しかったというわけか」
 父は信長を肉親を失っても平然としているだろうと言っていた。そしてそこが素晴らしいといつも褒めていた。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 父は信長を男として育てた。五、六才までは姫として育っていたが何かが父の目に留まったらしい。国を守るものは銭だと言った日の夜、十になったばかりの信長は父に呼び出された。
「女の身だがお前には戦乱の世を勝ち抜く才がある、織田の家を継げ」
「……本気ですか?」
 意外な申し出に思わず敬語になってしまう。とっさに大名の立場で国を治めるのは大層面白そうだと思った。しかしそれは今の世では非常識だ。どれだけ家の中が揉めるか、家臣たちが反発するか、分からない信長ではなかった。
「信勝はどうするので、今まで跡取りとして育てておいて。出家させて、高野山にでも閉じ込めるおつもりで?」
「織田の一員としてお前を支えればいい、あやつにはその方が向いている。平穏な時代なら信勝で十分だったが、今はまともでない才がなければ生き残れない。母はお前を嫌っているようだが……お前たちは仲がいい、お前だって信勝の首が戦に転がることが望むまい」
「これは随分と買ってくれたものですね」
「お前が望むなら寺に入れても構わんぞ、信勝は戦乱の世に向いておらんから案外幸せかもしれん。別に斬りたければ斬っていい」
「息子一人、どうとでもなれと?」
「ああ、織田家が残ればいいのだ。子供の人生など親が決めればいい、それが世の習いだろう」
 信長と父が側に寄ってきた。面を上げよと言われると芸術品に触れるようにそっと頬に触れられた。
「お前はきっと妻や子が死んでも、戦場で平然と戦える。信頼した存在に裏切られてもそれすら戦いを勝ち抜く力にできる。柔軟な思考や大胆な行動力も買っているが……なにより人の持つ弱さがないのだ。たしかにわしの子なのにまるで人でなく、精霊や鬼のようだ」
 いやお前の場合は夫か、と父は妙に楽しそうに笑った。まあ妻でも夫でも好きにしろと酒を勧められる。父として最大限褒めたのだろうが……情がないと言われて気分は良くない。
「まるでわしに……人の心がないとでも?」
「ああ、人一倍人の心は読めるが絶対に情に惑わされない。感情豊かに見えていつも遠い場所から人を計っている。それなのに冷たく感じないのはいささか面妖だが……天に目があるように視野が広い。身体に血ではなく鋼が通っているようだ」
 酒を注いだ杯を受け取ると自分が映っていた……映っているのは確かに人間の信長なのに父はそう思っていない。鬼や妖のように扱っている。
「なにが不満だ?」
「わしは……人が好きじゃ、決して鬼じゃない」
「鬼で何が悪い、人なぞ弱い。今は落ち葉のように死ぬばかりだ。わしは嬉しい、お前の才は本物だ。女の身であることが惜しくないとはいわないが、その才と引き替えなら安い買い物だ……わしの血筋から信長が生まれたことを誇りに思う」
 今度戦に連れていってやろうと言われた。

 信長は人間が好きだ。だから父の言葉には反発した。
(父上の奴、あれではわしが情を持たぬ本当の鬼のようではないか) 鬼だから女の身でも大名を継げと言われるといやな気持ちだった。新しい市や銭で作る兵隊を作る夢が揺らぐほど、人の心を持たぬという言葉に反発した。それくらい信長は人間を愛していた。
(わしが物怖じせんのは否定せんが鬼であるはずがない)
 だから迷うようになった。二つの夢が信長の中で生まれ揺れるようになった。姫として城の中で生きるより、戦国大名として生きるのは大層面白そうだからやってみたい。新しい兵隊や市、そして新しい世をこの手で作りたい。
(いいや、大名にこだわることはない)
 いっそ織田家など飛び出して自由に生きたい。大名家など窮屈だ。そうだ、南蛮の船に乗って大陸を見てやろう。明帝国で商売をしてもいい……人が好きだ。父のいうような心のないじゃない。好きにしろと言われた弟だって、共によく遊び学んできたのだ。
(どうしよう)
 大名と自由のどちらを取るかで迷う。もし大名になるなら、最終手段として弟から命以外を奪うことも視野に入れる。しかし飛び出すなら命以外全て奪うなどあんまりではないか……。

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 初めて父に連れられた戦は小さなものだった。
 お忍びという事で信長の存在は伏せられていた。家臣に守られた後方で控えているだけで信長は少し退屈だった。戦といっても実践するというほどではない。
(後ろにいるのは退屈じゃ、だが風に戦の匂いがする。血と血に高揚する心の匂いがする)
 それに心躍ると父の言葉を思い出し、感情を抑えた。
(わしは人じゃ)
 決して鬼ではない。人間が好きだ、そんな自分に情がないはずがない。
 しかし、一人の兵が信長に斬りかかってきた。もう戦の勝ちは決まって、準備を終えて帰るだけの時間。血塗れの男が背後で刀を振り上げていた。
「信長様!」
 声は柴田勝家のものだったか。しかし信長は冷静に刀をかわし、手直にあった脇差しで首を突き刺した。ちゃんと息の根を止めるために手首をひねって動脈をえぐった。手元に血の花が咲く。
「我々がついておりながら、申し訳ありません!」
「よい、大したことではなかった」
 じっと自分の手をみる。ちっとも震えていない。涙もでない、恐怖も感じない。危ないから、殺した。初めての殺しはそんなものだった。
(ふつう、人を殺すと多少は動揺するのでは……?)
 はじめてなのに殺した相手への怒りすら湧かない。家臣たちがおそらく貧しい農民で、たまたま体格に恵まれたからここまでこれたのだろうと教えてくれた。そうか、惜しいなと本気で言ってしまった。
(戦の世だ、こんなものだろう)
 けろっと笑っていた。強がっている、気の毒だ、我々の失態だという家臣たちの目線が辛かった……だって本当にちっとも怖くなかったのだ。
「十になったばかりの姫君だぞ……気丈にされているが本当はどんなに恐ろしい思いをされたか」
「上様はなにを考えておられるか、いくらお転婆で聡明なお方とて姫をこんなところに」
「我らがついていながら人を殺させてしまった、どんなに怖かったろう」
 この距離なら家臣がやるより自分で殺した方が早いと身体の方が自然と動いた。殺されそうになったのに有能な人材が死んでもったいないとしか思わなかった。
(怖くないというのは……おかしいのか?)
 時間差で恐怖を感じて、少しは震えないか手のひらを見つめていると声をかけられた。
「人を斬ったそうだな」
「父上、はい、危ないと思ったのでとっさに」
 父と合流すると肩に手を置かれて、微笑まれた。
「やはり恐怖を感じないようだな」
「……」
「これできっと我が家はこの戦乱の世を生き抜ける……心なんてもたんでいい、鬼であれ、それこそがお前の力だ。これでわしの織田は滅びずにすむ」
「わしは……鬼ではない、心がある人じゃ」
「なにを厭う? 鬼で素晴らしいではないか! ただの人であったらこんな世生き残れるものか……戦乱の世だ、是非がないのだ」
 高笑いする父の誉め言葉は呪いのようにも感じだ。
「天はわしに味方した! お前なら神にでも魔王にでもなれるだろう」

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 他にもいくつか戦を経験した。それが十を越えてくると殺した数や実際に兵を率いた数も増えた。そうして、ようやく父の言うことが腑に落ちてきた。
(信勝には……無理だな)
 戦を通して、身に染みた……今の世は化け物が跋扈する時代、まともでは生き残れない。むしろまともさは邪魔になってしまう。甲斐の武田や越後の上杉の戦の様子を聞いて、そちらの方が自分には近いと感じた。
(信勝はまともすぎる。あやつが家を継いだら、確かに戦で早々に首が落ちても不思議はないな)
 弟は無能ではない。これまでの戦でもそこそこの働きはするだろう。しかし、信勝は初めての殺しには動揺するだろうし、殺した相手を惜しいと思う余裕まで持てない。今の時代に向いていない……戦に慣れるまで時間がかかりすぎる。
 そして信長には慣れなど必要ない。
(わしを女と侮るものも多いが……今は時代が呼んでいる、功績を挙げればどうにでもなる。ついてこれないものは切り捨てるだけじゃ)
 それでは弟はどうする。正室の男は信勝だけだ。ただでさえ女が大名を継ぐと揉めるだろうに、余計に争いの元だろう。弟は聡明だが人に流されやすいところがある。御輿として利用される前に……寺に入れてしまえば命くらいは守れるはず。
(しかし、そうすれば家族を持つこともできず、俗世と縁を切らねばならん……わしが大名になるならそれでもいいが……)
 それでも家を捨てて自由に生きるというもう一つの夢を捨てきれなかった。父の跡を継いだら、本当のに心がなくなるようで恐ろしかった。
 そして、信勝を寺に入れる理由がお互いの性別のせいだということが納得できなかった。

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


……あねうえ、あねうえ……
 弟の声がした。ようやく両足で立った頃からそんな風に姉をいつも探していた。紅葉のような小さな手が信長に向けられる。
……そんな所にいたのか、信勝……
 いつまでも甘えん坊の弟で困る。差し出された手を握り返すと辺りに鮮血が飛び散った。幼い信勝は消え、二十歳を過ぎたばかりの信勝が血塗れで足下に倒れている。
……いやだ、死にたくない。お願いです、僕を殺さないで姉上……
 半ばまで切断された首からかすれた声が聞こえた。反射的に信長は信勝の首に手を伸ばした。それは溢れる血を止めたかったのか、その声を塞ぎたかったのか。
……もっと生きていたいんです、もっとやりたいことがあるんです。死にたくない、死にたくない。コワイ、イヤダ。痛がりの僕に腹を切るなんてできるわけありません……どうして、あねうえは、ボクをコロしたんですか?……
 恨めしいと骸骨になった信勝が姉の首を絞める。信長は弟の骨だけの手をつかみ、そして……。

 悪夢から目覚めると夜が明けたばかりだった。息は少し切れていたが冷や汗はかいていない。もした頬に手をやると涙は流れていなかった。
「……なんでダメなんじゃ」
 あんな夢を見た自分は苦しんでいるはすなのだ。きっと明日また同じ夢を見れば泣けるはずだ。ずっと忘れられない光景の延長のあんなを見続ければ……涙が出て心があると証明できる。
「わし……うそつきだな」
 夢は全部嘘だ。弟は生きたいとも、死にたくないとも一言も言わなかった。そう言って欲しかった信長の願望の鏡に過ぎない。
 ぼうっとしていると日が昇り、腹が減った。信勝の死から二日、目が覚めても涙は出なかった。
(今日のめしもうまいな……体も軽い)
 朝食の味もちゃんと分かるし、空気もうまい。弟の首を見たのはほんの数日前なのに食は細ることはなかった。
(結局、父上の望みどうりなのか……?)
 どんな悲劇があってもケロリとしている。愛するものが死んでも翌日になれば食事ができる。それが戦国大名にふさわしいと言われれば返す言葉もなかった。
 ただそれなら自分はこれからなんの為に生きればいいのか。
「信長さま、いつ頃政務にはお戻りになるので?」
「日時は言っただろう、予定は変えん。今日も腹が痛いし、頭が痛い。ああ、今日は昼から遠乗りにいくから馬を用意しておけ」
「……か、かしこまりました」
 矛盾した言動の主に家臣は不思議そうだったが従った。いつもの気まぐれと思われるだろうがそれならうつけも悪くない。今日も体調は万全、頭も良く巡る。
(それでもわしは悲しいはず……時が必要なんじゃ。確かに只人ざる力があるのは認めるが、父上のいう鬼でなく人のはず)
 机の本を手当たり次第にめくった。正直何度も読んでいるので頭に入ってこない。もっと違う本をもってくるか……と、めくる手がある文章で手が止まった。
……『涙がでないからと言って悲しんでいないとは限りません』……
 それは架空の物語だった。ある少年が戦で家族を亡くしたが涙を流すことはなかった。その代わりか優しかった少年は口汚い乱暴者となった。持て余す周囲の人々は少年を遠ざけたが、学問を教えた師だけは変わらずに接していた。
 ある時、師を殴ってしまい青ざめる少年の頬を師は叩いた。そして少年を抱きしめると師はその台詞を言った。
……『悲しみ方は人それぞれ、涙がでないからと言って悲しんでいないとは限りません』……
……『嘘だ! 涙がでないんだから悲しいはずないじゃないか!』……
 叫ぶ少年は師から逃げるように走り去る。信長が頁をめくると続きはなく、その後は白紙だった。かっとして机に叩きつける……写し飽きたのか、不良品か……少年はどうなったのか。
「……悲しみ方は人それぞれか」
 信長は窓辺によりかかって尾張の地を眺めた。地平の向こうで雲が流れていく。信勝と学問を学んだ寺が見えて、その側の帰り道を思い出した。
(今思うと仲がよかった)
 それは空気のようなもので意識などしてこなかった。うっとうしいほど信勝がくっついてくるのは信長にとって当たり前だった。
 今でも目を閉じれば弟の姿を思い出せる。最初はなんと小さな手だと思った。
「あねうえ、あねうえ」
 そう言ってよく足下にひっついた。母上と呼ぶより、姉上と呼ぶ方が多いのではと疑うほど姉を呼ぶ弟だった。少し大きくなれば一緒に城下で遊ぶことが増えた。
「いくぞ信勝、遅れれば菓子はわしのものよ」
「ま、まってください~! ぼくはずっとあねうえのおそばに……!」
 話ができる年になるとそうやって追いかけられるようになった。うっかり本当に振り切った時はさりげなく待っていた。
 気が弱く姉にくっついて離れない弟だった。母は姉を遠ざけ、弟をかわいがったのに自分たち自身は不思議と意に介さなかった。一緒にいれば楽しい、二人にはそれで十分だった。

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 馬に乗って草原を駆ける。供をつけろとうるさい声をかいくぐるのはなかなか面倒だった。
(風が冷たい、冬だな)
 柴田に信勝の謀反を密告されたのは十一月の初めだった。前の冬は一体何をしていたっけ。
「どうどう、止まれ」
 信長はある地点を目指してた。そしてすぐに見つけた。馬の手綱を引いて、道に寄せる。慣れた馬なので樹につながず、草原に放っておく。
 斜面を滑り降りるように走ると石ころが草履が踏みしめる。向こう岸が見える河、水の流れが運ぶ冬の風。そこは幼い頃姉弟でよく話していた河原だった。

 成長して四書五経を学んだ頃は信勝もしっかりしはじめた。
「姉上! 僕この前のお話やっと分かりました」
 帰り道の河原で長い話をする時は並んで座った。大分口が達者になったので寺の帰り道に新しい世の形を話してやった。武士の学問は寺で学ぶ、母は反対したが二人は同じ寺で基礎教養や礼儀作法を学んだ。まあ大名がやる公家の真似事は信長は好かず、蹴鞠はあまりしなかったが。
「こんなことを思いつくなんて……姉上、すごいです!」
「ははは、本当に分かっておるのか、信勝? 適当にわしがすごいすごいと調子を合わせているだけではないか?」
「ち、違います! ……か、完全じゃないですが、姉上の言ってることは分かってます」
「本当か~? お前は調子がいいところがあるからなあ」
「本当ですって! えっと、さっきおっしゃったことは……」
「……ふむ」
 信勝の話す内容は半分程度ではあるが確かに信長の考えを理解していた。実際信勝は学問の覚えも早く信長が語った当時は非常識な戦略や国の形を半分は理解していた。
「姉上はすごいなあ、どうして女のくせになんて言われるんだろう……本当に姉上のことを分かっていればみんな父上は当たり前のことを言っていることが分かるはずなのに」
「いいさ、言わせておけ。いずれ分かることだ」
 いつも弟は姉の陰口に本人よりも傷ついていた。姉が自分が鬼か悩んでいるとは知らず、姉の方が跡取りにふさわしいと本人よりムキになっていた。
「だいたい本当に男がすごいなら、僕がこんなに馬鹿で間抜けなはずないのに」
「なんだ、一丁前に男のつもりか、こんなに小さいくせに」
 信長の顎ほどの位置にある頭をぐりぐりと撫でるとむっとされる。これですぐ笑っていたのに最近は子供扱いに敏感な年頃、姉というのも大変なものだ。
「だ、だって~、姉上はすごいのに女のくせにっていつも言われて……僕は男のくせにそいつらを黙らせることもできなくて」
「ばぁか、男とか女じゃない。信勝は信勝じゃ、他の誰でもないわしの弟よ」
 涙ぐむ弟の頬を撫でると河に石を投げた。川面を跳ねる石に信勝は目を輝かせる……弟は違う考えを理解できることが才能だと気付いていなかった。姉もわざわざ伝えない、うつけと笑い飛ばされる考えに真剣な弟が嬉しかったと見抜かれたくなかった。
「すごい姉上の弟なのに……どうして僕はすごい弟じゃないんだろう」
「なぁに泣いとる、そんなことはもっと一人前になってから言え」
「い、いたいです、頬をつままないでください。痛いのは苦手だってしってるくせに~」
 珍しいことに信長は照れていた。
 頬を引っ張って顔を逸らさせるほどに。
「姉上、僕はいつかあなたの役に立てますよね?」
「はは、いつになることやらのう」
「なってみせます、いつか必ず。僕はすごい姉上の弟だから大きくなればきっと……」
 夕焼けの中、姉弟で手をつないで帰った。

 その頃と似た花でも咲いていないか探したが冬なので見つからない。代わりに雑草を抜いて手の上に乗せて遊んでみた。
「……」
 思い出はいくらでもあった。思い出の中でいつだって弟は大切な存在だった。
(つまり……父上は正しかった?)
 拒絶していたことを受け入れつつあった。ほんの二日前そんな弟を手に掛けても信長は涙一つ流さない鬼であることを……心がないからこの戦乱の時代を生き抜けるのだと。
(でもなんのために?)
 守りたいものを壊してもなにも感じないのに国を、土地を、人を治めてなんになる。新しい市? 新しい戦? 誰のために? 自分のためか、ならばこの冷え切った心でどうする。
(なにをすればいい、捨てることも進むこともわからんくなった……)
 力任せに地面を拳で殴りつけると血はにじんだ。しかし涙は流れなかった。

 草をたっぷり食べて満足げな馬をつれて、城に帰還するとさっさと自室に戻った。そのためにうるさい家臣を振り切って一人近道をしたのがまずかった。
「あ……母上」
 自然と声が漏れたのも見つかった原因だった。外れの廊下、庭に面したその場所では椿が咲いていた。その花の横に土田御前が一人立っていた。涙も枯れ果てたという様の母は信長を見つけると乾いた瞳に怒りが灯った。
「よくも、そんな平然と……信勝を殺したばかりのくせに!」
 感情に任せた平手打ちを咄嗟に手首を掴んで止めた。しまった、ひっぱたかれておいた方がよかったか。
「なんです、その格好は!? また鷹狩りですか、あの子を殺したくせにもう忘れましたか!? ……あの子はもう二度と馬に乗ることもできないのに」
「母上、暴れないでください」
 柔術の要領で拘束しようとすると思わぬ力に信長の方が驚いた。
「あの子は二度と歩くことも、食べることも、話をすることもできないのに。この前二十歳になったばかりだったのに、これから沢山の時間があったのに……返して、信勝を返して! 返せ信長ああああああ!」
 もう一方の平手打ちも自前の反射神経で自然と避けてしまった。
(また泣いている、いいなあ母上)
 母の言葉はちっとも辛くなかった。だって信長自身ずっと自分にそう言い続けているのだから、いっそ同じ気持ちの言葉を聞くのは孤独な道に小さな明かりが見えた気さえした。こんな時代だ、信勝が死ぬのは仕方ないと言わない母に安堵さえした。
(なのにどうしてわしは母上のように泣けない)
 泣き叫びながら信長に逃げられ続けている母は家臣たちに取り押さえられてしまった。母は温室育ちで、か弱いはずなのに三人の家臣たちが総出で床に押しつけるのが精一杯だった。母の頬には羨ましいほど涙が溢れていた。
「お前たち、母上を離れで休ませるように。しばらくわしに近づけるな」
「黙れ! 離しなさい、この無礼者共! 痛い、はなせ、いたい……もう私も殺しておしまいなさい! 私はこれからずっとあの子を奪ったお前を憎みます、そんな邪魔者この場で斬っておしまい。実の弟を殺したなら愚かな母など造作もないことでしょう……どうせもう生きていても仕方がないのです……子が母より先に死ぬなんて……この世は狂ってしまった」
「丁重に扱え……母上は乱心している、刃物の類は持たせるな」
 母は夢にも思わないだろうが、信長は母の言葉が嬉しかった。弟の死に否と叫ぶ声に共感していた。
(そうです、母上……仕方なくなんかないのです。父上のいう力がわしにあったなら、迷わなければきっと信勝は今だって……ただ)
 本人がそれを望めばだが。
 家臣に両脇を固められて、離れに引きずられていく母の姿を確認している信長に静かな声がかけられた。
「本当にきれいな顔。血色がよくて、泣いた跡もない……お前はもう信勝をもう忘れてしまったの……殺したのはたった二日前なのに?」
「いいえ」
「……嘘つき、そうやって一人で修羅の道をいけばいい」
 遠ざかる母はずっと泣いていた。
 それがずっと羨ましくて、ひっぱたかれていたら泣けただろうかとくだらない夢想をした。
 部屋に戻ると一人で修羅の道へ行く理由を考えた。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 ひと騒動起こした父の葬儀が終わった数日後の夜に弟は訪ねてきた。
「姉上、よろしいでしょうか?」
「……信勝か、何用じゃ?」
 蝋燭を灯して私室で酒を出す。信勝の元服後は昔のようはいかず、久しぶりの二人だけの空間だった。一年ちょっと見なかっただけなのに生意気にも自分より背が伸びている。
「なんじゃ、抹香を投げたことか?」
「はい、その件です。もしや姉上は……織田の家を継ぐことが負担なのですか?」
 相変わらず妙なところで鋭い。後継者の指名に父らしいとお返しのつもりだったのか今でも分からない……期待通り鬼と自分を認めることをまだ割り切れてなかった。父の妄想だと切り捨てるには信長はあまりに早く戦国に馴染みきっていた。いつまでも慣れない目の前の信勝とは対照的に。
「……虫の居所が悪かっただけよ、お前はわしを買いかぶりすぎじゃ」
「昔語った新しい市を作るつもりはもうないのですか、新しい戦の形を実践することは?」
「……」
「新しい世を作るのではなく、別にもっとしたいことを見つけられたのですか?」
 弟はあくまで静かに話していた。まるで今日は晴れていますね、というほど自然体だった。
(あんな昔の話を覚えていたのか、いや十年も経っていないか)
 元服、戦、父の死。特に信勝の元服後は母が遠ざけることもあって信勝と話す回数も減った。それなのに弟は河原で話していた頃と目が変わらない。
「僕はずっと姉上はあの頃のままでいると勝手に信じていて……でも父上の葬儀の姉上を見て、それはとっくに過去の話で今の姉上が望んでいることではないのかと、だから」
「……もすこし話せ」
「え?」
「わしも忘れていた、幼き日にどんなことを考えて、これはやってみたいと思っていたことを……お前と話せば思い出すだろう」
 父に認められるほど鬼になっていくようで。
 自分が夢見たことを忘れていた。
「姉上、やっぱりちっとも変わっていないじゃないですか」
「たわけ、わしは死ぬまでわしじゃ」
 楽しく姉弟は語りあかした。信長はかつての夢を再確認し、信勝はずっと子供の頃のように笑っていた。
「最近、お会いできなかったので変わってしまったのかと……大名家など窮屈で、飛び出して大陸や南蛮に行きたいと思っているのではないかと」
「まあ、そういうのも悪くはないな」
「もし本当なら僕も連れて行ってくださいね!」
「ははは! それは母上がひっくり返るな!」
 本当に楽しい夜だった。
 夜明けまで話したのに姉弟はちっとも眠くならず、軽やかに朝日を前に手を振った。
「いつか姉上の作る新しい世を見せてくださいね」
「ああ、必ずお前に一番に見せてやるとも!」

 信勝と話し、信長は久々に晴れやかな気持ちだった。
(決めた、織田は継ぐが信勝は寺に入れない)
 認めよう、信長が大名であるには信勝は邪魔だ。前例を破ってばかりの信長は身内に敵が多く、正室の弟は反発する輩の格好の餌だ……そして男だ、どんなに力があっても信長が女であることは変えられない。
(だがそれくらい越えられなくて、世が変えられるか)
 女の身で弟がいるから追い落とされるなら自分はそこまでなのだ。その時は堂々と信勝に織田を譲ろう。命を落とすかもしれないが、それが越えられなくて奇想天外な夢が叶えられるものか。
 信勝には感謝していた。父の言葉で忘れていた夢を思い出させてくれた。
「さあ、天下はどれほどのものか」
 これからは姉弟で尾張を治めるのだ。ただ……信勝が敵になることも考えねばならないがそれだってきっと自分ならなんとかできる。殺すことも殺されることもきっと納得いく結末にできる……自分ならできる。弟の言葉で夢を思い出した自分は鬼ではないし、父の言葉など忘れて人のまま自分を貫けるはず。

 織田信秀の死から四年後、信勝は謀反を起こした。信長は信勝を殺さなかった。
 結局二度目の謀反を起きた。いや、二度目は起こす前に柴田勝家に密告され、見舞いの罠にかかり捕らえられた。
 信長は後悔した。自分の力を過信したことを、弟を見誤っていたことを。

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 捕らえた信勝を清洲城の牢に閉じこめた。見逃すのは一度だけと決めていたくせに信長はまだ迷っていた。……確かめたいことがあった。
「……あねうえ?」
 捕らえていた信勝の前に信長は一人で現れた。弟は白い着物を着て、太い木の格子の牢で座っていた。
「率直に聞く、死んだことにしてやる。全てを捨てて、孤島の寺に入る気はないか? 二度と尾張には戻れんが命だけは残せる」
「……お断りします」
 穏やかな笑顔だった。
「このまま死を望むか、それほどまで織田が欲しいか」
「その……あなたが妬ましかったのです。それだけ、それだけです。何度話しても同じです、甘やかさないでください」
 仮面のように信勝は微笑みを浮かべていた。
「解せぬ! お前からわしへの殺意がちっとも感じられんのだ、憎しみも嫉妬もなにも! 稲生の戦い時もそうじゃ、なぜこうなったのか……ちっともわからん!」
 信長の目には信勝は一度も姉を憎んだり、妬んだりしたように見えなかった。一緒に河原で話していた弟そのまま。好敵手や追い落とす敵ではなく、味方のままにしか見えなかった。
 このまま殺すには信長は自分に正直でありすぎた。
「身の程知らずだったんです、それでも願わずにはいられなかった。それ以上のことはなにもありません。本当に僕は馬鹿で弱くて、それでも諦められなかった」
 一度目の謀反から一年半、信勝には監視をつけていた。確かに謀反のような行為をしていた。けれど信長は解せなかった、どの行為も信長を害するにはなにか欠けているのだ。慎重な信勝がこんなミスをするとは考えられなかった。だから寺に閉じこめるのを迷っているうちに柴田がやってきた。
「姉上、僕をまた許せばまた謀反を起こしますよ。何度も何度も、僕が死ぬまであなたの邪魔になる」
 味方ならなぜ謀反をするのか。味方ならなぜ殺さなければならないのか。
 信長は信勝がそうする心当たりが一つだけあった。
「……お前が男でわしが女だから死ぬのか?」
 初めて信勝から笑顔が消えた。
「やはりか、なら」
「違います! 僕はなんでもできるあなたが妬ましくて、無力な自分が呪わしかった。それ以上のことはなにもないのです!」
「うつけもの、ならお前はわしの味方ではないか!」
「これが僕の意思です……二度で終わりにしましょう。これ以上この件で人が死ぬのは姉上の本意ではないでしょう」
 信長は牢の木枠を殴りつけ、中にいる信勝に手を伸ばした。襟首を掴まれた信勝は木格子にぶつかった。間近に迫る姉の目は怒りに燃えていた。
「お前の意志なんか知るか! ここを出ろ、夜明け前に連れ出す!」
「寺に閉じこめたって同じ、逃げ出してまた乱を起こします。織田の不穏分子も周辺の大名もいくらでも利用する。その度人が死ぬ、たくさんたくさん……どうしても僕を生かしたいならこの目を潰して、腕と足を切って、喉を潰してください」
 絶句する信長に信勝は堰を切ったように喋り続けた。
「そうすればどこかの寺の部屋で寝転がっているだけの生を送れるでしょう。見えて、動けて、喋れる限り誰かを巻き込みつづけます。姉上、あなたは勘違いしています、僕はもう泣いている子供じゃない。自分の意地で人が死んでも平然とやり続ける卑小な人間なんです」
「どうして……そこまで?」
 信勝は本気だ。弟の考えなど手に取るように分かると思っていた子供時代が酷く遠い。そのくせ牢の中の姿にその頃の面影が何度もよぎる。
「わしが女で大名になるべきでなく、お前が男でなるべきだからか!? わしを信じろ、それくらいどうにでもしてやる! どうして身命を賭けてわしに賭けるお前が死なねばならんのだ!?」
「仕方がないのです、僕はダメだったから……」
「何の話だ!?」
「……戦国の世に向いていないのです。姉上が女のくせにと言われるように僕は男のくせに心がこの時代に向いていない。それなのに本当に男だ女だとくだらないことばかりがしがらみの世でした」
「そんなしがらみより……わしならできるとは信じられないのか。こんな世でもわしならできると……お前はわしの才を認めていたではないのか?」
 信勝は首を横に振った。
「僕は姉上に負けました……僕をここで殺すか、遠い寺で生きた屍にするか、お好きな方を選んでください」
 その目には絶対の意志が宿っている。ここで死ぬと信勝ははっきりを意志を決めていた。そのくせ信長には雀が死んだだけで泣いていた幼い弟の姿が重なって見える。
「それくらい……それくらいわしは!」
 がしゃんと牢の鍵が開いた。鍵を格子から外すのも忘れ、信長は信勝に飛びかかり、床に押し倒した。懐から短刀を取り出し、無抵抗で倒れる弟の眼球に向けた。
「なら、そうしてやろう……死ぬほど痛いぞ、痛がりのくせに平気か?」
 右の眼球すれすれに刃を向ける。痛みに怯えてくれ。せめて片目を潰したら、許してくれ、寺に入るといってくれ。
「痛いのなんて平気です……手が汚れてしまいますが、どうぞ。目だけでなくちゃんと全部潰してくださいね、全身が使い物にならなくなればもう誰にも利用価値がなくなりますから」
 信勝はまぶたを閉じず、刃を見つめた。信長の手の方が震えた。信勝の身体には弛緩してまったく怯えていなかった。それ以上刃を目に向けることができず、喉を潰すように首を絞めたがそれも抵抗なく受け入れた。
(そこまで本気……なのか、本気なら命以外を全て……)
 この子から目や声を奪い、まともに動くことも奪い、生涯幽閉する? そんな状態で生かすこととここで殺すこと。どちらが酷いことなのだろう……生きているといえるのか、死ぬ以上の拷問ではないか。
「げほっ……姉上は強いけど、優しいから時々心配です」
 信長が喉から手を離すと信勝は数度セキをした。呆然と牢からでると鍵を閉めるこそすらせず扉の位置で信長は座り込んだ。
「……なんの為にわしはお前を殺さねばならんのだ? 味方で弟なのに?」
「仕方がないのです、僕には他にできることがないから」
「女のくせにと散々言われた、腹が立っていまにみていろと……だがこんなに女に生まれたことが呪わしいのははじめてだ」
「いいえ、姉上はそのままで。きっと僕が男であったことが間違っていたんです……もう不出来な弟のことは忘れてください」
 最後の台詞だけは信勝は一滴の涙を流した。
 自分のことは忘れてくれと。


 信長がもう少し自分を信じなければ。
 信勝がもう少し自分を信じていれば。
 何かが違ったのかもしれない。
 これはそれだけの話。


 翌日、信長は家臣に斬らせるのではなく、武士として信勝に切腹を命じた。命以外全てを奪うには信長は姉でありすぎた……だから見るつもりはなかった、それでも足は自然と動いた。
「信長さま?」
「続けろ……わしが介錯する。いつものうつけの気まぐれよ……下がれ」
 切腹の場は冬の花が見える部屋だった。いないはずの信長が新しい刀を持って現れると家臣は面食らった。信勝はもうすでに自刃用の刃を手にしていた。
「姉上、それでは手が汚れてしまいます」
 幼い頃、虫の死骸を掴んだ姉をとがめるような声だった。
「もういい……黙れ」
「……はい」
 信勝は不思議なことに昨夜より精気が感じられた。今から手にし刃で腹をえぐって死ぬというのに、信長の方がよほど顔色が悪い。
「ーー後はお任せします、姉上」
(どうしてそんなに幸せそうなんだ……っ!)
 信勝の首を落とした刀を信長は二度と使わず、そして捨てることもなかった。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 信勝の死から三日目。また死にたくないと恨む嘘の信勝の夢を見て、朝を迎えた。信長は一日部屋にこもり、当たり前に感じる空腹も無視して一食も食べず、水すら飲まなかった。それでも心も体もなんでもないように元気だ。
(母上の言うことも一理ある、これでは修羅だ)
 いつのまにか日が沈み、夜になっていた。結局涙はでなかった。自分を心のない鬼だと受け入れつつあった。
「これから、どうしよう……」
 生まれて初めてなにもしたいことが思い浮かばない。
 月を見上げると少し欠けていた。昔、信勝がどうして月は欠けるのでしょう? と不思議そうにしていたことを思い出す。まったく尾張にいる限り、信勝のことは忘れられそうにない。
「信長様」
「……だれじゃ?」
 入り口に向かうと誰もいない。ただ一通の手紙だけが残っていた。手紙は白い紙で包まれ一筆添えられている。開封された跡はない。
……『信勝様が信長様の様子がおかしいなら渡すようにと』……
 この字は柴田か……中身は信勝から信長への短い手紙だった。


……『

 姉上へ。

 ばれてしまって自分が情けないです。必死で隠していたつもりだったのですが僕はやはり間抜けなようです。
 これから姉上の道にかつて語ってくれた夢が叶うことを祈っております。僕も微力になれれば望外の喜びです。

 ただ、もしあの夜に語った夢よりも今大切な夢があるなら、その時は僕のことなぞ忘れてください。南蛮でも、大陸でも、もしや一介の民になることだって姉上が一番望む生き方をされることだけ僕は願っています。あなたは強いけれどやさしいから、気に病まないでほしいのです。
 僕は父上とは違います、織田の家なんかどうでもいいのです。信勝はいつでも姉上の味方です。ただ一番の味方になれないことだけが残念です。僕は男のくせに、あなたの家臣になるほどの力がどうしてもなかった。

 どんな形でも姉上の幸せが僕の幸せです。心のままに生きてください。

      』……


 ぐしゃりと手紙にしわがよった。
「この、うつけもの……」
 どこまでも、弟は弟だった。手紙を床にたたきつけようとしたが腕がおろせない。
「なにがわしと違って真面目で礼儀正しい弟だ。お主はわしよりずっとずっと尾張の大うつけではないか……!」
 頬に手をやっても変わらず乾いていた。嘘だ、悲しい、心がないのではない!
……『悲しみ方は人それぞれだから、泣いていないから悲しんでいないとは限らない』……
 読んでいた本の文章が脳裏に蘇る。ならばどんなに悲しくても母のようには泣けない。それでも泣く以外に悲しみを表す方法があるなら。
(悲しみ方にそれぞれの形がある、か……)
 ならこういう形はどうだろう。
「刀は……どこか」
 二本の刀があった。打ち刀と脇差し。少し迷って脇差しを鞘から抜き、窓に向かい夜空にかざした。月光を浴びた刃は青白く、冷たく感じた。
 ぶんと夜空に刀を振る。数度振ると月を何度も斬った。もちろん月は斬れない。そして振り返るとそのまま月を斬るように障子を斬った。障子の細い格子が斬れ、折れ、最後はぼろ切れのように畳の上に転がった。
「どいつもこいつも勝手なことばかり、いいおって!」
 切り、叩き、拳を叩きつけた。信長の手からも血が滲んでいったが気に留めない。それを繰り返すと一つ壊れ、次は隣の障子を壊した。次は裸足で何度も蹴りつけたので足が血にまみれた。
「なにが仕方ない、だ!」
 湧いたのは悲しみではなく怒りだった。ぼろぼろになった障子を蹴飛ばし、折れた格子部分を裸足の足が切れることも構わず踏み砕いた。畳に刃を突き刺し、横に何度も斬った。
(父上も、信勝も、いちいち今の世は仕方ない、是非もないと!)
 机を蹴り倒し、ふすまを斬った。一度怒り始めると止まらない。凍った雪が春に鉄砲水になるように。
(早く決断してればよかった! 出て行くにしろ、継ぐにしろ、親の言葉一つに縛られて弟の命をなくした! 父上が死んだら無理にでも傍にいさせて、担ぐ連中に近寄る隙を与えないことだってできた! 母上が文句を言うならそれこそ何年でも閉じこめてしまえばよかった! 全部できないことではなかった!)
 とんだ無能だ。あんなに褒め讃える父と弟はおかしいのだ。その決断の積み重ねが泣くことも進むこともできない自分だというのに。
(時間はあったではないか! 稲生の戦いから二年以上わしはなにをしていた!)
 姉弟で色々な話をした。母に苦い顔をされたが一緒にいて楽しかった。そして自分のために笑顔で死んだ。
 父と弟は同じ言葉を言った。
……『戦乱の世だ、是非もないのだ』……
……『仕方がないのです、僕には他にできることがないから』……
「何が仕方ない!? 是非もない!? わしはあるぞ、是非があるとも!」
 稲妻のような怒りが全身を駆けめぐり、我が身が嵐のよう。寝室の襖に刀を刺し、横に振るとまっぷたつになる。その拍子に脇差し柄から刃が抜け、反動で信長の肩を浅く切った。けれど痛みは感じずもう一本の打ち刀を取ってまた振るう。
「認めぬ、絶対にこれは当然などではない!」
 読んだ本や壁が抉れていくと流石に息が切れてきた。遠い場所で「乱心された」「殺される」と怯えた声が耳をかすめ、思わず笑った。好戦的な主が部屋で刀を振り回していれば鬼が出たようなものだろう。
「鬼か……そうさな、これが人の世なら、人なんぞじゃなくていい」
 父の歪んだ期待も、弟の度を過ぎた献身も、こんな時代なら仕方がない……それが今の世か、戦乱の世なら諦めなくてならないのか。
「ならわしは人でなくてよい! もともと鬼じゃ、人の世の常識なんぞ知らぬ!」
 もはや部屋は半壊していた。丈夫な木の机が刃と蹴りで粉砕され、打ち刀は土壁を中途半端に突き刺さり、柱も傷だらけ。誰かくるかと思ったが信長を恐れてか、遠い場所から怯えた視線を感じるだけだった。
 ぜえはあと呼吸が乱れ、刀を壁から抜いたところで体力がつきて床に崩れ落ちた。
「それが当然なら、そんな時代を壊す人ならざる魔王にでもなってやろうではないか……ははは、ははははは!」
 これが世の常ならこんな世界壊していい。
 刀を畳に突き刺し、ふらつきを支えるとすっとさっきまでの怒りが引いていく。呼吸の乱れが嗚咽にも似て、きっとこれが自分の泣き方なのだと刀を鞘に収めて抱きしめた。
 静かだった、静寂と月と信長だけがそこにいた。刀と膝を抱えて月を見上げると自然と言葉が零れた。
「そうだ……天下、とるか」
 その時初めて信長の頬を涙が伝った。
(なんだ……今更……)
 涙があふれると胸に悲しみが染み出した。子供のようなみっともない嗚咽と共に涙が溢れた。
「……うっ、く、はは……なんだ、泣けるではないか……っ、うっ、うああっ……あああああっ!」
 涙と嗚咽と共に父の言葉が遠ざかっていく……多くの人とは違うけれど、心はある。自分はちゃんと人なのだ。弟に死なれて、悲しいと何日も引きこもってようやく泣ける人に違いないのだ。
(よかった……いやよくない、手遅れだった)
 皮肉なことにまた大切なことを思い出させてくれたのは弟だった。最悪の痛みを与えた弟から人の感情が贈られた。なんと因果な姉弟か。
……『いつか姉上の作る世を見せてくださいね』……
「ああ……そうだな、信勝」
 語ったように新しい世界を作って見せよう。姉弟で殺し合うのが仕方ない世を壊してみせる……あの夜に願ったように弟に見せることはもうできないけれど。
「そうじゃな……まずは銭で作る兵隊、そして新しい市の形を……」
 これより数年信長は泣くことはなかった。


 その後織田信長は尾張の平定を大きく進めた。
 織田分家の信長は守護大名の岩倉織田家を破り尾張の大半を支配した。信勝の死後、二年も経たず今川軍に桶狭間で勝利し、戦国大名として頭角を現した。
 彼女はその生涯で男装し、女と公言することはなかった。しかし過剰に隠すこともせず接したものは当然気がつき、侮るものも多かった。そして性別で侮った者には容赦しなかった……それに弟の死が関わっているか誰も知らない。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 死にたくない。しにたくない。臆病者なのに腹を刺すなどできるわけがない。どんなに痛いだろう。怖い、こわい、コワイ……たすけてあねうえ。
「……」
 信勝は夢から目を覚ました。牢屋には見張りが一人、泣き声が聞こえていなかったか慌てたが睫毛が少し濡れた程度だった。それにしても我ながら往生際が悪い。
(なにが助けて姉上だ……姉上は昨日助けにきた。命だけは助けるって。自分で拒否したのに全くくだらない、僕はどうして最後まで馬鹿なんだろう)
 馬鹿で無能な弟、姉が全ての信勝にとって信長にふさわしい弟でないことにずっと苛まれてきた。どうして自分は凡庸で、姉のような新しい世界をみる力がなく、そのくせ姉を女と侮る連中ばかりがよってくる。一番大切なものが自分のせいで貶められ続ける、それが元服後の信勝の境遇だった。
 弟は型破りの姉と違って常識人のようにも見られたが、姉への評価はいつも常識側ではなかった。いつでも姉の言葉や行動が一番輝いてみえた。
「……権六?」
「……はい」
 気がつくと見張りはなく、柴田勝家が格子の向こうに立っていた。悲しみを押し殺した顔、全く人のいい男だ。
「なんだ急に、まさか今更後悔しているのか?」
「いいえ……ただどこで間違えたのか考えております」
「調子のいいやつだな、まあ次はうまくやれ」
 柴田勝家。一度姉を裏切ったが、信勝には眩しい男だった。強く人望があり、信勝と違って姉の家臣にふさわしい。
「……失礼ですが意外です、あなたがこんなに平然とされているとは」
「本当に失礼なやつだな、覚悟くらいしてたさ。こんな世だ、当然だろう」
 直前まで泣いていたことがバレないか内心冷や汗をかきつつ、誤魔化すように一通の手紙を柴田に差し出す。どうやって渡すか悩んでいたのだ。
「これは?」
「姉上への手紙だ。不要だと思うが、もしこの事で姉上の機嫌が悪くなったら渡してくれ。今回のことの謝罪と礼の手紙だ」
「……謝罪と礼ですか?」
「意外か? 本当は家臣に命じて斬らせてよかったのに、武士として名誉の切腹を許されたんだ。それくらいの礼儀は僕にもあるさ……まあ姉上は強いからどうもしないだろうけど、その時は燃やしてくれ」
 大嘘をついて牢屋越しに精一杯手紙を持った手を柴田に伸ばす。新しい主に反逆したものの言葉など無視してもいいのに、律儀な男は丁寧に手紙を懐にしまった
「……信勝様はこれでよかったのですか?」
「これでよかった……?」
 姉の邪魔になる者たちを焼き滅ぼす、それが信勝の見つけた唯一の姉の役に立てることだ。そして自分が一番の邪魔になると知ったからには自分を殺すまで終わらない。これで尾張はやっと姉にとって安定した場所になる。
(これで僕の役目は終わり、少しでも姉上の立てて満足な人生だ。ただ……)
 本当はもう少しだけ、傍にいたかった。
 いいや、嘘だ。叶うならあの子供時代に居続けたかった。いつまでも河原で姉の話を聴いていたかった。きっと悪魔が囁けばきっと信勝は永遠の子供時代を願うだろう。
「こんな時代だ……やるだけやった、悔いはないよ」
 少しでも早く姉が自分を忘れてくれるといいのだけど。




 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





 とてもーー懐かしい夢を見た。
「……え、……え、姉上!」
「……信勝?」
 目覚めると信勝が毛布を持って、畳に寝ころぶ信長を揺さぶっていた。また出たのか、虚ろな霊基設定はどこへいったと思ったがそういえば邪馬台国の一件で正式にカルデアに所属したのだった。
「寝るなら毛布をかぶって寝てくださいよ、風邪を引いてしまいます」
「……サーヴァントは風邪など引かん」
 カルデアの金の茶室、二人以外は出払っているらしい。最後の記憶で沖田と話していた気がするがいつのまにか眠っていたらしい。
「それでも冷やしてはいけませんよ、昔はすぐ風邪を引く方だったじゃないですか」
 いつも暴走気味の弟はめずらしく真面目に腹に毛布を掛けてくる。こういう弟だった、しっかりした面とうっかりした面を持っている。
「……」
「姉上? ……いたたたたたっ!?」
 信勝の頬が思い切り引っ張られる。信長は無表情にもう片方からも頬を引っ張る。
「ひどいです~、僕が痛いの苦手なの知ってるでしょう?」
 両側から引っ張られた信勝は少し幼く見えた。
「……痛いのはイヤか?」
 先ほどの夢の中、信勝は死にたくないと言っていた。弟が死んだ直後にみた姉の願望の夢。あの後数年は尾張で時々みた。あの時は現実は逆で痛いのも死ぬのも信勝はかまってくれなかった。
「イヤにきまってますよ~、僕は痛がりなんですから」
「……死ぬのはイヤか?」
 信長の声は少し震えたが信勝は気がつかなかった。
「いやに決まってますよ! だってせっかく姉上と……その助け合えるようになったのに……」
 おこがましいですがと自信なさげに俯くと手を握ってくる。
「せっかくサーヴァントになれたんです。一秒でも長くお側にいて、生きていたいです……この状態は生きているとは言わないかもですが死にたくないです。
 えっと、とにかく僕は少しでも姉上の役に! うわああああああ!?」
 胸にもたれてくる姉の急接近に弟は喜びながら絶叫した。
「ねむい……部屋までおぶれ」
「は、はい! この信勝、命を懸けても!」
「そこまでせんでいい……」
 本当に眠そうな姉をおぶって弟は部屋へ急いだ。……昔より広くなった弟の背中で姉はほんの一滴だけ涙を流した。なんの涙かわからなかったが魔王は自然と言葉がこぼれた。
「信勝、お前強くなれよ」
 死ぬなといえないのは信長も弱くなったからなのか、やはり父の言葉は嘘だ。今思えば泣けないと苦しんだこと自体心があればこそだがあの頃はどうしてもわからなかった。
「はい、もちろん! ずっと姉上のお側にいられるように頑張ります!」
「……そうか」
 信長は目覚めてから初めて笑った。
 その日、珍しく信長は信勝を追い払わず、ベッドに戻っては弟をこき使った。茶を持て、やっぱり抹茶ラテがいい微糖で、バナナが食べたい、やっぱりバニラアイスがいいと次々と注文した。姉に命じられることに喜びつつも走り回る信勝は疲れ果ててしまった。食べるだけ食べてうたた寝を始めた信長のベッドに目を回して突っ伏してしまう。
「ノッブー、風邪引いたって本当……おや、姉弟仲のいいことで」
 帰ってきた沖田が訪ねると姉弟は二人で眠っていた。




 おわり



あとがき

 カッツのプロフィール6と絆礼装の感想小説です。
 信勝の手紙は最初なかったのですが絆礼装の効果、退場時に信長に回避二回を考えたら自然とそうなってました。あと柴田殿に十字架背負わせすぎてごめん(でも君関わりすぎてるんだよ……)。

「そうだ、天下とるか」は「そうだ、京都行こう」くらいの感じでいわせるつもりがそうでもない感じに……米津のLemon聴いて書いたせいでこんなことに……Lemonドラマ的に死に別れの曲だから……一万字越えたのは米津のせい……カルデアの織田姉弟には感電エンドを希望します(すぐ米津に頼る)。

 参考に信長公記とかなんやらとか読んでみたのですが、謀反の準備を柴田に密告されて信勝はおびき出されて家来にざくっ! ぎゃー! とやれてんじゃないの? って感じなので、いきなりぶっ殺さずちゃんと切腹させてあげてる経験値先生はやさしいんだなあと思いました(こなみかん)。


マイ設定

 このノッブは腕力は同世代の男以上だが人間レベル、精神が誰よりも強く、心底悲しんでいても平然と戦ができる大きすぎるメンタルの持ち主です。他者から見ると冷酷に見えるし、実際本人も「自分はただ冷血なだけなのでは? 涙一つでない心なき鬼なのでは?」と悩んだこともあったようです。

父上(信秀)
「織田家が残れば他の事はどうでもいい」

信勝
「姉上がよければ他の事はどうでもいい」

母上(土田御前)
「夫も信長も型破りでついていけない! 真面目な信勝だけが癒し!(人選ミス)」

「いや~、母上にはめっちゃ嫌われてるけど、母上だけわしに対して正気なんじゃなあ……いいんじゃ、わしにはお市とかおるから(フラグ)」

>>
父上の気持ちは、ガチャに失敗すれば即死デスゲーム戦国時代で無料石から星5が十枚でたみたいな感じを想像していただけると……。

次はほのぼのとか平和な話が書きたいです(いつも言ってる)


日本史おべんきょ

「ハニ台国でノッブが言ってた正一位ってなんだろ、多分名誉的な位だよね? ウィキ……やっぱ位だ。正一位が一番上だからノッブは一番上の位を死後貰ったんだんだね。……え、正一位を最後に貰ったのは織田信長? じゃあ、正一位は随分昔で止まってるんだね……は? おくられたの大正? 1917年? サルと一緒に? ホワイ……ていうか正一位、藤原家多っ!(ウィキ以外見ても大正時代みたいです)」

「切腹が名誉になったのは江戸くらいからだけど気にしない、本作では安土桃山からなんだ……もしくは尾張の習慣だったんだ……」

 最近アマゾンプライムでマンガ日本史(教育アニメ)を南北朝時代あたりから信長の死までみました。戦国時代のあたりで一分間に一回くらい謀反が起きてた体感です。

 ※ 個人の感想です

 でも戦国時代ってまだ南北朝~応仁の乱~北条早雲立つ、あたりに比べれば全然グダグダしてないと思います。どれだけ人が死んでも織田~豊臣~徳川の三連コンボで江戸時代という平和がやってくるので「長かった戦乱は無駄じゃなかった……!」感がある。

 南北朝~応仁の乱あたりは「なんのためにこの犠牲はあるんですか?」「この犠牲で何が生まれるんですか?」「さあ……」「しらね」みたいな感じで特に意味はないけど時代的に平均寿命下がった感じで(南朝はマジで何だったんですか)(そりゃ日野富子も阿漕な商売始めるわ)(応仁の乱から80年経ってるのにまだ廃墟の京都見てどん引きしてるザビエルの気持ち分かる?)。

 ※個人の感想です。

 あと一分くらい信勝(信行)映ってて驚いた(父上の葬式シーン、例によってうつけの兄より真面目な弟の方が……みたいに言われてた)

 大物でもナレ死が多い教育アニメの中、信長はかなり贔屓されて、丁寧に描かれた気がします(平出のじいとか、父上の死とか、本能寺の敦盛とか)(信行は当然ナレーションすらないです)(ユッキ……)