拍手お礼SS 「季節編〜春〜」 コンプ















強い風が吹いて、ふわふわした純白の花弁が宙に舞い、鼻先をかすめた。コンラートは手元の花束を慌てて確認した。大丈夫、さして乱れてはいない。ほんの数枚流れた花びらが澄んだ青空に映える。

すっかり春だ。「麗しのヴォルフラム」もその名を冠するものが生まれた月に合わせて、まさに今が花盛りで、零れんばかりに咲き誇る白い花びらは雲の白も穏やかな青空にとてもよく映える。もっとも、彼ほど映えるものなど無いだろうけれど。

今日はやたらと足が軽い。羽でも生えたのだろうか、こんなに早く走れたのかと自分で驚く。素直に理由を認めたがらない自分の心を誤魔化す。この先にあの金色が待っているからじゃないと、バレバレな言い訳を自分にする。

紺碧の軍服が背を向けて精一杯肩を怒らせている姿が目に入ってくるとコンラートの足は駆け始める。心臓が嬉しがるのをなだめることは今のコンラートには不可能だった。


「ヴォルフ!」

「・・・コンラート。呼び出しておいて、ぼくを待たせるとはいい度胸だ」

「ヴォルフラム、おめでとう」

「・・・・・・何の話だ」


謝らない兄に、そういって振り返った弟は蜂蜜色の髪をふわりと舞わせて碧の瞳を伏し目がちに向けてくる。やっぱり、だ。ヴォルフラムが一番春の青空が似合う。春の青空がヴォルフラムに一番映えるのかもしれないけれど。
手元の花束を差し出す。純白のそれを受け取るヴォルフラムは憮然としていたが、捨てたり足し無い。花束を支える両の手は花びらやリボンを少しでも崩すことのないように繊細だった。


「おめでとう、俺も嬉しいよ」

「だから、何を言いたいんだ・・・!」


ほんのりと赤い頬。それに満足してコンラートはますます笑みを深くした。金色に覆われた碧の瞳が伏しているのは分かっているのに、遠回しな言い方をする次兄へのささやかな抵抗か、呆れているのか、照れているのか、それとも・・・喜びを押さえているのか?

そう思い至ったコンラートの心はあっけないほど弾んだ。春の陽気にやられてしまったのか、いつものポーカーフェイスの笑顔ではなく、崩れてはしゃいだ笑顔を惜しまない。なかなか素顔を見せない次兄の無防備さにヴォルフラムが驚いたように目を見開いていると、コンラートは隙を突いて花束から「麗しのヴォルフラム」を引き抜いて、その耳元に飾った。

純白に映える金色と碧。でも、真っ赤になって怒り出す直前のヴォルフラムの表情には負けるかもしれない。


「きれいだよ、ヴォルフ」

「////・・・・・・っ、いい加減にしろ!!だからなんだと言うんだ!!」

「今日は俺が一番嬉しい日だから、お祝い」

「だから、何の・・・」


兄がしつこければ、弟は強情。分かっているくせに、向こうが言うまで言う気はない。それがむずがゆい弟は、それが楽しくて仕方がない兄にはなかなか勝てない。唇を尖らせているうちにコンラートのそれを重ねられてしまう。
真っ赤になって罵声をあげようとする弟も唇を塞がれているせいで罵声を飲み込んでしまう。そのせいか、激しさが表情から消え次兄と同じく目を閉じる。

コンラートがヴォルフラムを放すと、少し崩れた花束を発見して「どうしてくれる」と睨み付ける。その態度に余計に上機嫌になったコンラートが「今度は待宵草の花束にしようか?」といって今度は本気で睨まれた。しまった、と内心で慌てると「冗談だよ」と手を振った。


「まったく・・・お前は調子に乗りすぎだ!」

「ごめん、ごめん・・・でも今日は特別な日だったから、嬉しかったんだよ」

「うるさい・・・何だというだ」


嘘を付くときに目を逸らす癖は幼い頃からのものだった。でも、その手は相変わらす花束を大切に支えている。大切に思ってくれていることだけはこれ以上なく明白。花束に触れるその手にヴォルフラムに撫でられている気がしたコンラートは降参して、今日が何の日か白状する。


「今日は、俺が運命の人に会った日だよ」


ありがとう、生まれて初めて俺の手に真っ先に抱かれてくれて。あの日から、会うべき人に会えた幸福を忘れはしない。あの春の日から、ずっと。




















春なので三男の誕生日編。

ひたすらいちゃいちゃしているコンプが書きたかった。

















拍手お礼 「季節編〜夏〜」 陛下&次男→三男









「おい、ユーリ。もうすぐお前の誕生日だ、何か欲しいものはないか?」

「え?誕生日って結構先だぞ」

「だから聞くんだ、お前にはちゃんと誕生日に贈り物を贈るからな。
まあ、すぐに欲しいというなら簡単なものならやるが。ぼくにできることでもいいぞ」

「え!!?ホ、ホント!?」

「ぼくに二言はないぞ!何でも言ってみろ!」

「じゃ、じゃあ・・・そ、その、こ、婚約歴も長かったけど、お、おれ、ヴォ、ヴォ、ヴォルフが欲し・・・」

「おやユーリの誕生日の話か、ヴォルフ?だったら俺も誕生日が近いんだが・・・」

「!!?・・・コ、コンラッド!?」

「コンラート?そういえばお前も夏生まれだったな。何だ、何か欲しいのか?」

「うーん、どっちかっていうとヴォルフに何かして欲しいな」

「!!?・・・コンラッド、おい!」

「フン、仕方ないやつだな。まあ、言ってみろ」

「そうだな・・・お前最近血盟城の近くできれいな泉を見つけたっていってたじゃないか。
そこにお前が俺を連れて行ってくれればうれしいよ」

「は?そんなことでいいのか・・・?
まあ、お前もいい歳だしそこまで大袈裟にすることも無いだろうが、いくら何でもそれだけでいいのか?」

「十分だよ。2人で馬に乗って人気のない、じゃなくて静かな場所で2人きりで・・・」

「ストーーーップ!!ちょっと待て!2人きりで人気のないとこは駄目!ゼッタイ!」

「は?どうした、ユーリ。別に大したことではないと思うが・・・」

「いやいやいや、大したことだって!ヴォルフ、そのきれいな泉って何だよ!
そんなロマンチックで人気のないところにコンラッドと2人で行ったら・・・」

「?別にどうということはないと思うが」

「ユーリ、誕生日の願いを弟が聞いてくれる兄の願いを無下にするなんてひどいですよ」

「く・・・コンラッドめ(ぼそ)。ええと、おれも行きたい。そこに行きたい!!ものすごく!!
もういっそ、それがおれの誕生日プレゼントとかでいいから!!」

「何だ、ユーリ。お前も行きたかったのか。
別に連れて行くことくらい誕生日の贈り物にしなくともいいと思うが・・・?」

「いや!おれにとってはそれが最大の贈り物ですから!!とにかく、おれも連れてけ、な?」

「全くユーリはいつまで経っても子供だな!ちょっとでも婚約者と離れるのが寂しいとはな。
まあ、わかった、今日は特に予定もないし今から3人で行くか。
よし!そうとなったらさっそく準備だ・・・ユーリもコンラートも遅れるなよ・・・!!」

「・・・行っちゃいましたね」

「・・・・・・あー・・・ほっとした」

「おや、何か悩みでもあったんですか?」

「いけしゃあしゃあと・・・コンラッドって油断も隙もないんだからな」

「いえいえいえ・・・・・・ちゃっかりヴォルフにヴォルフをお願いしようとするユーリほどじゃないですよ」

「う・・・・・・でも、どさくさにまぎれてヴォルフを連れて行こうとするコンラッドに言われたくない」

「何を言っているんですか?俺は純粋に兄として弟との交流を深めようと・・・」

「いや、うそだろ、それ」












夏なので陛下と次男の誕生日ネタ。

なのに三男争奪戦になるのはなぜだろう・・・萌えるから?

・・・・・・いやいやいや、二人にとって一番の誕生日プレゼントは三男だか(殴)。










拍手お礼 「季節編〜台風〜」  ムラユムラ

 





 

 


この季節は苦手だ。

 

 

「ねーねー、渋谷〜。映画に行かない〜?」

「ええ!?村田、お前何いってんだよ!?
今日は台風だぞ、さっき強風警報で小学校の登校日が休みになったってニュースで」

 

電話越しに聞こえてくる声は茶化すことを知らないかのように真剣そのものだった。

夏休みが終わる直前、九月まで待てないのか風がうねりとなり、視界一面を雨粒で覆うそれはやってくる。

 

「いいじゃない、きっと建物の中はどうもないよ。一緒に「ジョーズ」を見ようよ〜、一人じゃ怖いんだよ〜」

「今はやってないからな、それ。だからお前何歳なんだよ!?」

 

いままでは、そこまでは気にしていなかった。問題なく泳げたし、プールにも海にも行った。
視力の関係でスイミングからは足が遠ざかっていたけれど、水を怖がることなんてなかった。

それが今はどうしたのだろう?前世で水に押しつぶされて、逝ってしまった軍医の記憶なんて水中にいるわけでもないのに思い出すなんて。

外の世界を荒らすあの轟音はただの強風で、味方の誤爆ではない。わかっている、わかっているのに。

 

「とにかく、今は外に行ったら危ないんだから映画とか言ってる場合じゃ・・・・・・」

「・・・・・・・・・ふーん、だ。いいよいいよ、ただの冗談だよ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・渋谷のけち(ぽそ)」

「けちってなんだよ!」

「ああー、ひどいよ。傷心の友人が頼ってきているのに、渋谷ったらそんなふうに真面目一辺にNOとしかいわないなんて、それでもNOといえない日本人なのかい?」

「・・・・・・・え?」

 

今までとぼくが一つだけ違うこと、その心当たりは一つしかない。


渋谷、君とぼくは友達になった。膨大な記憶を話しても奇妙なものを見る目で見ずに、真摯に聞いてくれた。心を分かち合える存在になってくれた。


そのことで、ぼくは強くなったつもりだった。でも、本当は弱くなったかもしれない。


ひとしきり電話越しにひどーいひどーいと繰り返す。本心を悟られないように。

 

「ホント渋谷君はひどいよー・・・・・・なんてね。あはは、本気にした?
単なる冗談だよ。家から出られないから、ちょっと渋谷と話をしたかっただけで・・・・・・」

「・・・・・・・・・じゃあ、今から行こう」

 

電話越しなのに鮮明に聞こえてくる。茶化すことなど知らない真剣な声で君は言う。

 

「・・・・・・・・・は?」

「だから、映画だよ。たぶん停電にはなってないからやってなくはないかも・・・調べれば一つくらいはどっかでやってるって」

「い、いや、渋谷今日は台風で」

「大丈夫だ、雨もだいぶやんできたし、お前のその傷心の方が大変だろ」

「ちょ、ちょっと、渋谷これはほんの冗談で」

「待ち合わせどこにしようか・・・・・・ああ、そうだ。いっそおれが迎えに行くよ」

「ちょっと渋谷聞いてる!?」

 

この台風の中で無茶をさせてしまうなんて、何とか冗談にしてしまいたくて止めるぼくに渋谷は聞く耳を持たなかった。それどころかこんなことを言う。

 

「誤魔化してもおれにはわかるんだよ!待ってろよ!!」

 


そんな、ぼくの視界を歪めるようなことを。眼球の奥を熱するようなことを。

 


「・・・・・・・・・・・・・・渋谷、渋谷?
・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと、渋谷ったら!?」

 

声が聞こえなくなったら、切られた音がした。ああ、くそ!

 


ぼくは部屋を飛び出して、玄関の傘をひっつかむと彼の家の方向へと駆けだした。

外の世界では雨と風が荒れ狂っていた。







四季編といいつつもうひとつ入れたかったので台風編。

台風編にしようと思ったときから、なぜか「これは村田の話だ」と天啓が下ったのでこうなったお話。









拍手お礼SS 「季節編〜秋〜」 陛下&三男→次男

 

 

 

 


木枯らしが頬を冷やすようになってきたある日、血盟城の執務室でコンラートが馬小屋に行ってから帰っていないとグウェンダルが渋い顔で困っていた。

そこで執務中の休憩がてらユーリはコンラート探しにグウェンダルの目を盗んでこっそりと部屋を抜け出した。そして当然のようにヴォルフラムはそれについていった。


全くあいつはどこで遊んでいるんだとぷりぷりと怒っている婚約者にユーリは苦笑していた。彼が帰ってこないコンラートにユーリと一緒にそわそわとしていたことをよく知っていたからこそ、彼のストレートでないからこそストレートな態度が面映ゆい。


おそろいのクマハチ帽子をかぶって、上着を羽織ってコンラートを探して血盟城中を歩き回った。


さて、どこにいるんだろう?

彼の部屋、厨房、お気に入りの窓辺、兵たちの詰め所、馬小屋・・・・・・


どこにもいない。一体どこに・・・・・・

 


「「あ」」


 

ユーリとヴォルフラムは馬小屋からの帰り道の血盟城の庭園の一部である小さな森でそんな声を出した。

二人の前には赤みがかっていたり、黄色がかってたり、濃い色だったりする色とりどりの褐色の落ち葉が舞っていた。そして、褐色の落ち葉たちは地面に振りつもって大地のその色たちで染めている。さっきから足下にさくさくと落ち葉を踏む音が聞こえていたが、二人が見つけたその一角ではふかふかという音でもするのではというほど落ち葉が降り積もっていた。


そして、その一角で一番大きな木の下にもたれてコンラートが眠っていた、ただし半分くらい落ち葉に埋もれて遠目には彼がいると分からない状態でだった。


慌てて二人が落ち葉に埋まっているのに微動だにしないコンラートに近寄ると・・・・・・すやすやと眠っていた。起きる気配はない、熟睡している。

 

「コンラッド−?・・・・・・うーん、これは熟睡してるな」

「何をしているんだこいつは、こんなところでのんきに昼寝なんてしたら風邪を引くぞ」

「しかし、見つからないと思っていたら、これじゃみつかんないはずだよな。
落ち葉に埋まってるなんて、コンラッド髪も服も落ち葉色だもんな」

「ふん、こんな森の奥で眠っているからだ。
まあ確かにこいつは落ち葉色の髪をしているが・・・・・・別に分からないこともないだろう」

「あ、おにーちゃんのことならどこにいても分かるの?」

「べ、べべべべべ、別にコンラートのことなら何でも分かるわけじゃないじゃり!!」

 

へえーとユーリは気のない返事をした。実はユーリも遠くからでも一目でコンラートがいると分かったのだから、なんだか名付け親コンプレックスみたいだなと照れくさかったのだ。

熟睡するコンラートの頬を二人はグウェンダルが作ってくれたクマさん柄(ただしグウェンダルはキツネたんだと主張していた)の手袋でつついたがいっこうに目覚めない。幸せそうな寝顔だ。近くで見ると結構落ち葉のふとんおかげで暖かいようにもユーリには見えてきた。

 

「・・・・・・なあ、しばらくコンラッド寝かせてやらない?
なんだかすっごく疲れているみたいだし、ゆっくりさせてやろうよ、な?」

「何をいっている、こんなところで寝たら風邪を引くだろうが。
疲れているなら、ちゃんと部屋に帰って休めばいい。ほら、コンラート!いい加減起きろ!」

「・・・・・・(すやすや)」

「案外落ち葉のおかげで暖かいんじゃないかな、それにここいいところじゃん。景色はいいし、静かだし実は隠れスポットだよな。さすが、コンラッド、この辺がモテ男の豆知識ってところかな」

「だめだ、風邪を引くかもしれない。そういえばこの前こいつはくしゃみをしていた。
ほら!いい加減起きろ、コンラート!風邪を引くと言っているだろう!!」

 

相当な大声で兄を心配するヴォルフラムになんだかユーリは照れると婚約者から目をそらして、名付け親の顔を見た。ぐっすり眠っているコンラートの顔は、なんだかいつものそつのない彼と違って無邪気で無防備で・・・・・・少しだけかわいい。

思いついたユーリはぶんぶんと頭を振った。大人の男相手にかわいいはないだろう・・・・・・たとえ実際どんなにかわいいくても、だ。コンラートには絶対内緒にしようとユーリはこっそり誓った。



「なあ、寒いんならさ、おれたちの上着かけてやればいいんじゃないか?それなら大分ましだろうし」

「はあ?そんなものじゃ寒さは防げないぞ」

「ちょっとの間でいいんだから大丈夫だよ・・・・・・あ、そうだ、いっそこっちのほうがいいかも」

 

言ってユーリはコンラートの左腕に抱きついた。即座にヴォルフラムは顔を真っ赤にして「この浮気者!」と言ったが、ユーリが「うわ大変だ!コンラッド冷たい!ヴォルフも触ってみろよ!」といったので、顔色を変えて右腕に手を伸ばし、勢い余ってコンラートに抱きつく形になった。慌てて離れようとしたが、くっついた頬にコンラートの頬を冷たさが伝わってきて離れらない。

こっそりとユーリがしてやったりと微笑んだことも知らず、ヴォルフラムは「ふん、暖まるまでだぞ!」コンラートの右側に抱きついたままにそっぽを向いた。

コンラートの文句を言うヴォルフラムに、彼の兄思いぶりをからかうユーリ、二人に抱きしめられながらコンラートはやはりすやすやと寝息を立てていた。幾分か、さっきより幸せそうだ。


そして、三人に色とりどりの落ち葉が降り注いだ。水入らずの時間をこっそり隠してくれるように。





 

 

 

 

 

・・・・・・一時間後、すっかり眠ってしまったユーリとヴォルフラムに抱きしめられてコンラートはしあわせだった。
「すうすう」という寝息と「ぐぐぴぐぐぴ」といういびきに挟まれて心はあったかそのものだった。

三人を前にした探しに来たグウェンダルにため息をつかれた。

 

「何で起こして帰らなかったんだ?」

「だって、可愛くてとても起こせないじゃないか」




落ち葉色の男は、頬だけ紅葉の色をして兄に幸せそのものの顔をして笑った。










秋には誕生日のはっきりしている人がいないので「秋」→「落ち葉」→「茶色」→「茶色といえば次男」の思考回路でこんな話になりました。

次男がやたらと幸せそうな話ですが、テーマが陛下&三男→次男(純愛きゅんきゅんでちょっと絵本チック)だから、仕方ない。次男は二人に攻められて幸せになってればいいと思っていた日もありました、ていうか今も思ってる。作品に反映されないだけで。











拍手お礼SS 「季節編〜冬〜」 アニグウェ編

 

 

 

 

 

それはまだ上の弟が赤ん坊だったときのこと、吐く息も白く雪がちらつきだした季節の「ある日」のこと。

 




 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・ふう、どうやら諦めたようだな」

「そんな薄暗い茂みの中で丸まって何をしているのですか、グウェンダル」

「!!!!!????ア、ア、ア、アアア、アニシナ!?」

「なんですか、ひとをまるで悪魔か何かのように」

「・・・・・・・・・実際、悪魔のようなものだが(ぼそ)」

「何か言いましたか?」

「いいいいいいや!!なにもいっていない!!」

「まあ、いいです。こんなところで何をしているのですか、そういえば先ほどツェリさま・・・もとい魔王陛下があなたを捜していましたが、それと関係が」

「う!・・・・・・い、いや、別にただ諜報活動を勉強していただけだ」

「後ろから丸見えで何が諜報活動ですか、よく見つかりませんでしたね・・・・・・まだ、あなたは新しい父親から逃げ回っているのですか?」

「う!・・・べ、べつに逃げてなどいない。たまたま、顔を合わせないだけだ」

「薄暗い上に寒い茂みで半日近く丸まっていて何がたまたまだというのです。
まったく・・・・・・いつもともかく今日はあなたの誕生日の席とのことでしたが、それでも行かない気ですか」

「・・・・・・別に、今までは誕生日なんて、祝ったことはない。元々そんなもの魔族は祝わない。一生に何回あると思っている、いちいち祝ってなどいられない」

「おや、陛下が残念がりますよ、せっかく三人で待っていたのにと」

「だからだ・・・・・・あいつが、ダンヒーリーがおおかた言い出したんだろう。
人間の言いそうなことだ。寿命の短い弱い人間の言い出した・・・そんなものに行く気はない」

「ほほう・・・いいのですか?」

「何がだ」

「あなたの誕生日の席にはコンラートも来ているそうですよ、小さくてかわいい赤ん坊の」

「・・・・・・べ、別に」

「先ほど私も見ましたが、小さいながらにちゃんと爪がありましたよ、ぷにぷにの手の先に」

「・・・・・・わ、私は」

「赤子ながらに私の偉業が分かるのかこっちを見てにぱあと笑っていましたね、その声はたとえるならばきゃっきゃっといったところでしょうか」

「ぐがあ!!・・・・・・ぐ、おのれ・・・・・・やはり悪魔だ」

「何か言いましたか?」

「いいや!・・・・・・とにかく!私は行かないと言ったらいかない!!アニシナ、たとえお前がどんな手段をとろうとも私は・・・!」

「そうですか、それは好都合です」

「そうだ、好都合・・・・・・って、え??」

「ちょうど生きのいいもにたあを捜していたところです」

「ちょ、ちょっとまて、私はそれは・・・!」

「どうせ一日中隠れるしかすることがないほど暇なのでしょう。そんな時間と魔力の無駄はアニシナが許しません。さあ、その時間を私が有効に活用して差し上げましょう!!」

「ちょ、アニシナ・・・・・・いたいいたい!髪をつかむな!」

「あなたの時間は私の時間、あなたの魔力は私の魔力!無駄は許しませんよ!」

「何を言って・・・・・・は、はなせーーーーーーー!!」

「おはははははははは・・・・・・!」














冬ということで長男編。そして幼少アニグウェ編。

ダンさまに対する反発を否定しないアニシナは実はグウェンよりも大人だという話。

そしてグウェンに関してはひたすら省エネ志向なアニシナ。

うちのアニグウェはアニシナが強すぎるなー、たまには弱いアニシナが書いてみたい・・・。