【 超高校級の幸× 】  3

 


αの3

 


『一日目:
ここでは日付がわからないから、これを書き始めた日を一日目とすることにした。
今日はよく晴れた、いい日だった。
みんなもそう言っていた、明日からひとつずつ始めよう。
とりあえず、この日誌をちゃんと毎日につけよう。
オレはもう忘れたくない。』


『二日目:
みんなはやはり体調が悪そうだった、それはオレも変わらない。
仕方ないあんなことがあったんだ、それでも未来を創るように進んでいかないと。
今日は住む場所が決まった、今日もひとつ未来へ進んだのだと笑ったら空元気と言われた。
でもそれでいいとも言われて笑った。』


『三日目:
住む場所が決まったら次は食べるものや生活の役割分担を決めた。
みんなそれぞれに頑張った、嘘でもいい、笑っていようとした。
病は気からと言うけど、本当にそうなのかそうしていると空が本当に青く見えた。
この日誌も三日坊主にならないように明日もちゃんと書かないと』


『七日目:
たくさん思い出した
みんなの泣き声が聞こえる
オレは消えたくない』


『十日目:
三日は絶食していただろうか、覚えていないが三日と思ってこれを十日目とする。
食べることも寝ることもできない、ただ泣くか叫ぶか、宙を見ていた。
ようやく歩けるようになると、みんなの部屋に行った。そうしたら先客が二人いた。
なんだろうと見ていると、二人が寄りかかっているものを見てオレもそうしようと思った。でも誰を選べばいいのか、よくわからなかった。
自分のことで精一杯だったけれど、二人の姿を見て今はもう頑張ることは出来そうもないけれど。
せめて明日も未来のことを考え続けようと思った。』


『十一日目:
頭がいたいたいいたい、いやだいやだいやだ。
オレは消えたくない、消えたくない。
まだやり残したことがたくさんあるんだ。
こわい。』


『一四日目:
明日はここからオレだけ移送されることになった、おそらく一時的なものだと思うけどやはり不安だった。
出発する前にみんなの顔を見ていった、絶対ここに帰りたい。』

 

『十五日目              』

 

『十六日目              』

 

‥‥‥‥‥‥………‥‥‥‥‥‥

 

 


 

 

「ここまでしか書いてないな……」


それ以降のページは白紙だった、めくってみるとめくられたという形跡すらない。
するとこのノートの執筆者である「ヒナタハジメ」はここで完全にここノートを使うのやめたらしい。

ボクは窓の下でパタンとそのノート閉じた、どうやら消灯時間である10時を超えると電気も使えなくなるらしい。月のよく見えるよく晴れた夜でよかった。


「・・・・・・日向クン」


君は生きていたのか?そしてここにいたのかい?


(やっぱり、七海さんが言うようにモノクマの処刑はなかった?
日向クンは生きていた。今のボクのように未来機関に絶望として軟禁され、この日誌をここで書いて……そしてそれを『偶然』忘れていった?)


それにしてもあまり要領を得ない内容だった。
日誌というより日記なのだろう、気持ちを整理したり自分にしかわからないことを書くのは日記という方が自然な内容だ。

それに途中で途切れてしまって、十四日以降は二日だけ日付が書かれていて、その先は何ページも白紙が続いていた。
日向クンにその頃なにかあっと見るべきか、それともこのノートよりも良い日記帳を見つけて書く対象を変えたのか。


「最後の記述のある十四日目は、日向クンはどこかに行ったようだけど」


もっとも日向クンも絶望として未来機関に拘束されていたとしたら、そのまま……処刑されて帰ってこなかったという可能性も……あるけれど。


「日向クンはボクと同じ部屋にたまたま軟禁されて、そしてたまたまこの日誌を本棚においていった?」


そんなことがありうるのか?
ボクが超高校級の幸運だから?だから何もわからない状況の手がかりを手に入れられた?

わけがわからないまま連れてこられた仮の住処で、現状を知りたくて堪らないボクのもとに手がかり日向クンのものらしきノートが偶然あること。


『一度ならまだしも、二度もそんな偶然が重なるなんて……うーん、そんなことがありうるのかな?』


ジャバウォック島の最初の学級裁判での七海さんの言葉を思い出す、そんな偶然がありうるのか?

そして……日向クンはジャバウォック島にいたからには『超高校級』じゃないしても、やはり絶望だったのか?


(日向クンも、絶望だったのか?)

 

それはなんだか、彼の名の通りの唯一の日向に真っ暗な雲が隠すような嫌な感覚。


(確かに絶望ばかりが集まったあの島ではその方が自然なんだけど……予備学科なんかが、日向クンが、どうでもいいはずだった彼までも絶望……?)


超高校級の絶望であるボクに対する未来機関である七海さんとモノミの態度はボクを処刑するという風には見えなかった。

あくまで感覚だがあの二人からはボクを守ろうとする意志を感じた……なら日向クンは処刑されていない?
モノクマは未来機関によって絶望として処罰されて、それで彼らは処刑をまぬがれたのか?あの解きようのない謎を彼らに解けるはずもないし……。


(いけない、思考が逸れている……今は日向クンのことじゃない、重要なのは日向クンのものらしきノートだ)


まだ決まったわけじゃない、今はこのノートに集中しなければ。
そもそもこのノートがなぜボクの部屋にボクが来る前からあったのか、それが問題だ。


「ボクは超高校級の幸運、幸運だけど……」


これはなんだか『ボクの幸運』ではない気がした。
ボクの幸運は自分の経験から自分でもある程度制御できるけど、ボクの願いをここまで細やかに先回りしてくれるものでない。

どちらかというと絶体絶命になって奇跡的に助かるとか、くじを細工なく引き当てられるとか、そういう選択肢を選ぶ状況で正しいものを手に取れるというもので……経験から言うとこれは違うと感じる。

ベットに寝転がるとノートをパラパとめくった、日向クンの字はそんなに見る機会があったわけじゃないけどなんとなく似ている気がした。


「……けど、これが偽物ってことも十分にありえるよね」


超高校級の絶望の処刑……七海さんとモノミは否定したけれど、行われていないとは限らない。

日向クンはこの部屋にいたことなどなく、ボクがこの部屋に滞在すると知っていてボクがこのノートを取ると知っていて日向クンのノートを偽装したというのも十分にありうる気がした。

ボクにとっては多くの偶然はただの必然となってしまうことが多い、けれどやはり作為的なものを感じた。
幸運にもこの日誌を手にできたというよりは、誰かにここでボクにこれを読ませようとしている、誰かの意図……それは悪意なのか、別のものなのか。


ノートをもう一度開こうとすると、ズキリとした痛み。こめかみから根を張るように痛みが広がる。


(あ、どうしよう、また頭が痛い……何も考えられない)


我慢も限界かもしれない、思考がまとまらない。ズキズキ痛む、まるで脳を鷲掴みされているように頭蓋の奥が痛む。

 

「……明日にするか」

 

処刑が行われた行われない以前に、毒薬と槍で死んだはずのボクが生きていることがそもそも不可解だ。現時点では情報が少なすぎる。


「明日は外に出ていいって、モノミも言ってたし……そうしよう」


ずきずきずきずき、痛みはどんどん思考は遠ざけていく。なんなんだこの頭痛は……。

最後にと一度手にとって『ヒナタハジメの日誌』を開いた、あまり丁寧な字じゃない。
どちらかというと最初の頃は走り書きという感じで、最後に至っては殴り書きという感じだ……不意に消えたくないと書かれたあたりに何か小さなシミのようなものを見つけた、水の濡れたような。


(涙?)


その時、ボクはこれがニセモノではないと……信じた。
たとえ裏にどんな意図があったとしても、日向クンはやはり……生きていたのだと。

そして、ボクはノートを机の引き出しに投げ込むようにしまうと、ベッドに寝転んだ。頭が痛い、ずっと痛い。でも一番痛いことは、


(生きていた)


絶望かもしれない彼が生きているかもしれないことを喜んでいる自分が許せなかった。

 

 

 

 

 

 

仮の住処の初めての朝は能天気なウサギの声と共に始まった。


『狛枝クーン!朝でちゅよ、顔を洗って朝ごはんを食べましょー!先生は待ってますよー!らーぶらーぶ!』

「モノクマが嫌いなくせにこういうところはおんなじなの?」


もっとも微妙に電子音混じりのモニターに言っても仕方ない、モニターの向こうのモノミの朝の挨拶はなんだかモノクマを連想してあまりいい気分ではない。

上着を羽織ると忘れ物がないかチェックする。大したものはないが昨日のノートだけは肌身離せない。朝の放送前からボクは出かける準備はしていた、とにかくこの周辺の探索をして少しでも現状を把握したい。

ロビー出るとモノミが「朝ごはんですよー!」とパンと目玉焼きとそのほか諸々を出していた。モノミ本人はロボットで自分は食べないのによくやるなあとやたらと美味しいその朝食を急いで食べる。


「うふふー、ホッペが落ちるほど美味しいこと間違いなしでちゅよ!」


本当にたかがボクが食べるためには無意味なほど途轍もいなくおいしい、異常なほどだ。食欲など皆無だったのに……いっそ何かの罠のようだ。

食べながらモノミにボクが行っていい外の場所と行ってはいけない場所、して良いこととしてはいけないことを訪ねた。
一見快適なように見えてもここはある意味ではコロシアイ修学旅行と同じで、ボクの身の自由はボクものではない。

あの時と同じここでのボクはあくまで囚われ人、ルールは把握していないとルールをそれを破るタイミングすらわからない。


「狛枝くんはまだ目を覚ましたばっかりでちゅから、そのあたりの砂浜と公園広場とー。
あ!後は図書館に行けます、狛枝くんは本が好きですからよかったでちゅね!あ、図書館の先はまだ、その……千秋ちゃんの「裁判」が始まらないと行けないでちゅけど」

「そのルール違反に対する罰則は?」

「もちろん!あちしが狛枝くんのところに飛んでいってマジカルステッキで「めっ!」でちゅ!」


囚人の立場は分かっているつもりなんだけど……モノミの呑気な様子にはなんだか肩の力が抜けてしまう。


「……それだけ?」

「ちゅ!?こ、狛枝くんはデコピンが怖くないのでちか!?」

「しかもデコピンなんだ……えーと、他に禁止されていることはないの?破ったら見せしめ処刑とか、目をえぐるとか、指を順番にへし折られるようなやつ」

「いやあああああああ!怖い単語禁止ー!……修学旅行の最初の時と一緒です、狛枝くんはこの島で平和にほのぼの〜と過ごしてくれればそれでいいんでち!」


胸を張るモノミはなんだか修学旅行の始まりの時のようで、その時と同じようにどうしたものかとボクはこっそりため息をついた。
結局あまりルールはわからなかったけれど、これ以上聞いても無駄だと判断してボクは外に出た。

 

(ボクは囚われの身、外に出られるといっても制限がある…でも)

 

このノートようなの手がかりがどこかにあるかもしれない。
希望を持ってコートの下のノートを抱きしめるようにボクは走り出した……。

 

 

 

 

……そして、何も見つからなかった。

 

「あ、狛枝くん、おかえりでちゅー」

「……モノミ……別にボクなんか待っていなくてよかったのに」


キッチンに立つウサギのぬいぐるみのシュールさは今のボクには苦笑すら生みそうにない。


(何もなかった)


砂浜はただの砂浜、公園広場はただの広場、ジャバウォック島もあったものと比べると小さな図書館にあったのは文学書や写真集ばかりだった。

日向クン達やモノクマ、未来機関のことはなんの手がかりもなかった。ここがジャバウォック島に似た南国の島だということ以外は何も。


(このノートを見つけて舞い上がってたのかな……)


ボクは囚人の立場だ、それを七海さんやモノミの態度で忘れていたのかもしれない。
このノートが「幸運」によってもたらされたものではなく「誰かがわざとボクに読ませた」物ならば、それ以後の情報を知るのはボクじゃなくてこれを見せた誰かの手の内だ。その先を教えるのもそいつの手の内のはず、ボクはそれを待つしかない。


(でも、いつまで待てばいいんだよ)


ロビーにはささやかな飾り付けがしてあった、なんだかボクがコロシアイを始めるためにやった旧館の飾り付けを思い出してしまった。
あの時はコロシアイ自体がより大きな希望の踏み台となり、殺し合いを始めされる行動こそがボクがするべきことだと信じて……でも結局ボクたちは誰一人希望じゃなかった。

裏切り者の七海さんを除く、もしかしたら日向クンを含めて、みんな超高校級の希望なんかじゃなく「絶望」だった。

それなのに希望になると信じていた自分のおめでたさに反吐が出る。
だから被害者になってしまうボクは処刑を受けることはないだろうと自分を絶望としてできるだけ痛めつけた。希望を愛していたはずのボクを裏切った未来のボクへのボクなりの復讐でもあった。

仕組んだボクの他殺の偽装工作の意味もあったが、どうせ消火弾を投げさせた時点で誰にも解くことができないと思っていたものだからそちらはどちらかというとおまけのようなものだった。


(あたまがいたい)


この頭痛は何なのだろう、ボクはいったいどれくらいの間眠っていたんだ。死んだ、はずなのにどうして生きているんだ。

ボクは確かモノクマのグッズ倉庫にいたはずで砂浜から遠い場所にいたはずなのに、なぜかモノミと七海さんに探されて……なんだっていうんだ。


(あれから何があったんだよ!)


「……っ!」


いつの間にか唇を噛んでいたらしい、鉄の味が口の中に広がった。慌てて手を当てたのにモノミが飛んでくる。


「あわわ!?狛枝クンが怪我してまちゅ!?血があああああ!!」

「………モノミ」

「外で転んだのでちか!?消毒薬、絆創膏〜!!」

「モノミは知ってるの?どこまで知ってるの?」

「狛枝クン?そんなことより怪我を」


そんなこと、なんて言われるとひどくいらついた。声にどうしても棘が混じる。


「処刑は?日向クン達は?世界はどうなったの?ねえ教えてよ、君なら知ってるんだろう?」

「……それは言えまちぇん」


てっきりいつもの過保護な様子で誤魔化すと思っていたのにモノミは予想外にはっきりした返答を見せた。


「君は昨日ボクに君と七海さん、ひいては未来機関が超高校級の絶望を閉じ込めているって言ってたよね。
じゃあ、彼らはやはり生きているの?未来機関に改めて処刑されたの?」

「……あなたがそれを知るのはまだ早いのですよ、狛枝クン」


早いも遅いもあるもんか、何で生きているかもわからないのに。


「狛枝クン、昨日言ったはずでちゅ。君が知りたいことは全部全部教えます、でもその前に知ってほしいことが沢山ありまちゅ。
君は今日外に出て何も感じませんでちたか?空の青さや海の青さや、コロシアイのない世界の穏やかさを感じられませんでしたか?」

「答えになってないよ……そもそもさなんでボクがここで生きているかもわからないのに青さも何もないよ」


モノミはいつもみたいにちっとも慌てず、ボクの傍に近寄る。その指のないフェルトの手には消毒薬と脱脂綿……あくまでボクのどうでもいい傷を治療しようという気らしい。


「そうでちか、でももしかしたら明日には感じられるかもしれませちぇんね」

「……じゃあさ、これは?」


モノミが置いた可能性が高いと思っていた「ヒナタハジメ」のノートを取り出してモノミの眼前の差し出した。


「ねえ、これはいったい何なんだろうね。ボクの部屋に置いてあったんだけど?」


これは負け惜しみのようなものだった、だからさしたる期待なんてしていなかった。


なのに、

 

「……そんな、なんでそれがここに」

 

モノミがそんなことを言うから。

 

「もしかして千秋ちゃん……がっ!?」


「ねえ、それどういう意味?」

 

だからボクはモノミの首を絞めて、ノートが床にばさりと落ちた音がした。


「こ、まえ、だクン……やめなさちゃいっ」

「あはは、君って本当に高性能だよね。もしかして人間と同じように痛みを感じるの?
 それと器官でもあって息が苦しかったりするの?だったら悪いから早くしゃべってもらえないかな」

「だめ、でちゅ……危険でち……」


絞め上げた首の手ごたえは確かにフェルトと中綿なのにモノミは苦しそうだった、


「いま七海さんのこと言ったよね?これは彼女が置いたの?君たちは未来機関のただの監査役じゃないの?
それとも彼女は君よりもっと上役なのかな?こんなゴミクズに構っているのに君たちは組織の末端じゃなかったの?
全部教えてよ、ねえねえねえねえねえねえねえねえ!!」

「……てを、はなしちください」

「これは本物なの?じゃあ、日向クンは生きているの?ああ、彼が記憶を失う前に書いたって可能性もあるね。
それも含めて君たち、いや七海さんがボクの部屋にこれ見よがしに日向クンのノートなんて置いたのはどうしてなんだい!?」

「こまえ、だくん……!」


モノミは泣いているようにも見えた、でもボクは手を緩めなかった。


「だいたいなんでボクが生きてるのさ!死んだはずだ、2回は完全に死んだはずなんだ!やっとやっと、ボクは……っ!!」

「狛枝クン!」


あぶない、というモノミの声が聞こえた瞬間ボクの頭痛が消えた。


そして、首の下からばちんという音がしてボクの視界は真っ白になった。

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 


βの1

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

コレハナンダ?

ナニカユメヲミテイタキガスル、ヒドクバカバカシイユメ……。


「…………ここは?」


石の天井が見える、固いベッドに寝かされていたようだ。


「保健室だよ……」


肩のあたりまで髪を伸ばした少女が傍らに立っていた。
儚く幼い容貌をしているはずなのに、着ているコートが一点の光もない真っ黒なロングコートなのでどこか死神のように見えた。


「へえ、そうなんだ……倒れていたのかな」


アア、トテモオダヤカナキモチダ。ココハナゼカトテモオチツク。


「うん、だからもう眠ったほうがいい……と思うよ?」


少女がそう言ったので、ボクは黙って微笑んだ。

アア、コノママネムルヨウニシネタライイノニ。

 


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

「………ん」


激しいサイレンの音が響く、それをうるさいと思ってボクは今まで眠っていたことに気がついた。

ボクは椅子に座らされていた、両手には鎖が椅子の手すりにくくりつけられている。
立とうとすると足からじゃらりという音がする、両足も同様らしい。

首は自由だったので、自分の体を見下ろす。服はそのままだった、パーカー付きのコートもそのまま。だからある種余計に異様だけれど。
そして気がつく、ボクの首には銀色の金属の輪がはめられていた、囚人らしくなくその先には鎖はなかったけれど。


(ここは……)


記憶を順繰りに思い出す、そうボクはモノミの首を絞めたのだ。ならこれは……。

 

「おいたをした恩知らずの囚人に、遂に処刑の時間ってことなのかな?」

「違うよ、狛枝クン。君を処刑なんてしない、させない」

 

見上げるとそこには七海さんが立っていた。

裁判所の裁判官が立つような(本当に裁判所なのかもしれないが)高い位置に七海さんは立っていた。
真っ黒な一点の光もないコートを着ている、それは温和な彼女の風貌を死神のように見せていてあまり似合っていない。


「……じゃあ、処罰かな」

「それも違うよ」


でも、その時の彼女の厳しい表情はその色の厳しさによく似合っていた。


「さあ狛枝クン、始めようか私たちの「学級裁判」を」

 

 

 

 

 

 


 

つづく

 

 

あとがき

>

案の定の冗長癖である(・∀・)

2013/09






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