夫婦ごっこ4 ~同床異夢~
信長にはずっと信勝に口に出せないことがあった。
それはほんの少しでも弟は自分を恨んでいないのか? という疑念だった。
明治でその死に方になんの悔いもないと信勝に断言されても拭えなかった。
殺されたのに? 覚悟していても死の苦痛は辛かったのでは? 慕っていても少しは恨まないのか?
信勝が何かを言い出せない事を察しつつも、強く聞き出せないのはその疑念を自分もそれを口に出せないからだった。
しあわせ夫婦生活と内緒の酒1
長尾景虎が酒盛り場所に足を運ぶと見慣れぬ先客がいた。
「おや、どういう状況ですかこれ?」
「ひっく……誰かと思ったら、おみゃえか」
目を丸くした景虎の視線の先に織田信勝がいた。コップに日本酒の瓶から注いでいる。彼の周囲には五本ほど酒の空瓶が転がっている。
よくみると空瓶の中に常連の以蔵も混じって転がっていた。ひっくり返すと完全に酔いつぶれている。
「意外ですね、あなたが彼を潰してしまうとは」
「別に潰してない、勝手に倒れただけだ……まあ勝手に飲み比べとか言ってたけど」
カルデアのはずれにある空き部屋。カルデアの酒好きたちはそこを和風に改造して酒盛り場所の一つとして使っている。大きな木製テーブルが三つ、丸椅子がたくさん、常備している酒は無限大。
さながら様相は場末の飲み屋。
つまり酒飲みサーヴァントがよく訪れる場所を自分たちで作ったわけだ。
そしてここでは景虎は常連の一人だ。金の茶室とちょうど反対の位置にあり、気分転換もかねて使っていた。
時間は夜九時と言ったところか。夜遅くに弟がこんなところにいて信長は心配しないのだろうか。
(心配? 「私たち」が馬鹿馬鹿しい)
そういう感情は「ヒト」のものだ。
景虎は以蔵を瓶の山の中からむんずと掴んで取り出して倉庫の端に寝かせた。そして中央のテーブルの端っこで飲んでいる信勝の斜め前の席に座った。十人は座れるテーブルなので大分距離が近い。
「近い……なんだ? 飲み比べならしないぞ」
「いえいえ、今日は誰かと飲みたい気分なんですよ」
「僕は一人でいい」
「別に話しかけませんよ、まあ貴方が話したいことがあるなら聴きますが」
聞きたいことがある顔に見える。珍しくその時の景虎は顔色の裏が分かった。酒を飲んでいるからだろうか。
「……」
景虎なり出血大サービスだったのだが信勝は無視した。ひたすら日本酒をコップに注いでは五分ほどで飲み干す。このペースで飲んでいては張り合った以蔵はつぶれてしまうだろう。彼は酒は好きだけどあまり飲めないのだ。
「塩漬けピーナッツ、最近気に入っているのですがいりますか?」
「いらない」
信勝はもう一本日本酒をあけると帰って行った。ちっとも千鳥足じゃない後ろ姿に実はザルどころかワクじゃないのかと軍神は思った。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
信勝が死んだ事で信長を悲しませたかもしれない。
それを姉に尋ねることができないまま二ヶ月半が過ぎた。
(どうしよう)
そんな事を聞かれたら嫌がるに決まってる。万一の可能性があるなら嫌われたとしても確かめなければならない。言うか、言わないか。その狭間で信勝は蜘蛛の糸に絡まった虫のように身動きできず、苦しみを隠したまま表面だけ笑ってやり過ごしていた。
「信勝、なにしとる?」
縁側でぼうっと景色を眺めていると姉に声をかけられた。ぎくりとした内心を隠すためにへらっと笑う弟の横にドカと豪快に座り込む。最近の部屋着の定番になった濃い赤と紺の甚兵衛をお互いに着ていた。
「なーにを隠しとるんじゃお前は?」
「何の話ですか? 僕が姉上に隠し事なんてするわけないです」
「よーいうわ」
「……ホントですって」
信長はそれ以上追求せず、信勝の隣で景色を眺めた。シュミレーションの風景でボタン一つで変わるがそれでも無機質な金属の壁を見ているよりはいい。眺めるだけのものなので基本的に地域は日本で季節はランダムにしてある。
季節はたまたま冬だった。空は荘厳な灰色、雪がチラついている。そして庭には山茶花や椿が咲いていて……信勝が腹を切った冬の日とよく似た風景だった。
ピッと信長はシュミレーターのスイッチを押した。風景が春に切り替わると幻の桜の花びらが膝に触れた瞬間消える。信勝が姉を振り返ると「冬は好かん」とつっけんどんに言った。
「姉上、子供の頃は雪遊びが好きでしたのに」
にこにこと笑う弟の顔は柔らかい。昔から柔和な顔立ちで似た顔の姉弟なのにそこだけは違った。
「それでその……姉上に話したい事はあるんです」
「……ほう? いうてみい」
「その……森長可の弟ってどういうやつ……人だったんですか? 地球の方の」
「なんじゃ、急に蘭丸の名など出しおって。地球の方な」
「だって……その、僕、いま、同じ立場な気がするので……僕だって、さ、参考にできるかと」
同じ立場? と首をひねる。そして珍しく信長は微かに赤面した。森長可の弟、愛称蘭丸は信長の若い愛人だった。共に本能寺で死んだので最後の愛人でもある。
二人は夫婦ごっこ生活の末についに(勢いで)姉弟の身で床を共にしてしまった。しかもその後週二度のペースで交わりは続いている。その性生活に信長は特に不満などなかったのだが……。
「蘭丸を参考って……悩んでると思ったら床のことか? なーんじゃ、心配して損した。頭が春なだけか」
「と、床だけではありません!」
「やはり床も入ってるではないか。ほーれ、お前の頭の中じゃ」
シュミレーターのスイッチを押して一面の花畑を呼び出す。信勝は真っ赤になって違う違うと言い立てる。
「だから違いますって! 僕は…その、愛人の経験はなく。というか真っ当な男女交際の経験がなく……姉上のような色の道の達人の方にはこれでいいのかこれでも必死なんです! だから恐れ多くも姉上の愛人を努めたものの事が知りたいのです!」
「わしのこと色天魔王と勘違いしてない? えー、お前が蘭丸の真似とか絶対無理」
信勝が凍りつく。しかし流石に無理があると思うのだ。
「そ、そうですか……分かってます。どうせ僕なんか無能で馬鹿でその辺の石ころっていうか……ぶつぶつ(以下略)」
「いや、あのな、考えてみよ。お前はわしの何歳年下じゃ?」
「年? ……姉上の三つ下ですか」
「わしは本能寺で死んだ時、四十九じゃった。蘭丸は十八、つまり三十一年下じゃった。
わし視点ではお前と蘭丸では十倍以上年の差があるんじゃ。同じに思えるか」
「そ、そんな……!?」
今の年格好は似ている。しかし信長にとっては違う。三歳年下と三十一歳年下で十倍以上違う。
超有能な超年下の愛人と泥にまみれて共に遊んでいた弟。いくら身体を交わしても流石に同じ目では見れない。まあ思い出すとかなり若い愛人だった。
「似とる所はなくもない……蘭丸はよく身の回りの世話をしてくれた。お前と同じでわしの世話が好きで……」
そして二人とも自分のせいで若くして死んだ。その共通点を心から追い払う。
「ま、お前に似ているとしたらそのくらいかな……愛人としては年の差が違いすぎて分からん。わしこうみえて心は五十前の老人なんじゃ」
「……慰めなくていいです」
「違うつーに。お前なら五歳の幼女と十五の女を同じに思えるのか? お前と蘭丸の年の差、それどころじゃないからな?」
「そ、それは……じゃなくて! 誤魔化さないでください。それでも気に入ってた所を真似すればお役に……」
「床のことにお役にとか無粋なことを言うな。……じゃなくて、そのな、わしは物足りなかったらちゃんというから」
気持ちを口に出すのは大切だ。この二ヶ月半、お互いにコミュニケーションが苦手なことは痛感している。しかし「現在、あなたとの性生活に満足してます」とまでいちいち表明しなければならないのだろうか。なんかの羞恥プレイ?
「い、いや、床のことだけじゃなくて、茶の温度とか、好みの誘い文句とか……!」
「ああ、あるある! 不満はある! 蘭丸は特に関係なく! 回数に不満がある、週二回は物足りぬ! せっかく肉体は若いんだから増やせ!」
「か、かかか、回数って……はわわ、姉上が回数って」
信長は真っ赤になった弟をびしりと指さした。
「あとな! お前とあいつは違う! あいつは愛人でお前は夫じゃろ! なんども否定されるといい加減腹立つぞ、わしらは夫婦じゃと言ってるだろう……逆にそれが不満か?」
それは強引に夫婦生活を始めた信長の不安だった。信長に信勝は逆らわないから無理に始めてもなんとかなると強めに手を引いてしまった後ろめたさがある。
けれど信勝はきっぱりと首を横に振った。
「たとえ仮初めの夫婦でも……初恋の人を妻にできて不満などありません」
「そ、そうか」
内心少し赤面するがすぐに冷めた。
あなたは初恋の人。妙に胸の痛む言葉だった。嬉しいけれど過去形なのだ。
「その挙げ句、床を共にして不満などあり得ません。なにもかも非現実的で竜宮城の夢かと疑うほどです」
「現実だからな?」
ただ。
彼女に自分は相応しくないから心配なだけだ。
こんなに眩しい宝石のような人を石ころの自分が腕の中で抱いていいのか悩みは尽きない。
「……ふぅん」
「そもそも僕が姉上に不満を持つわけないでしょう」
「じゃあ回数は?」
「そ、それは……その姉上さえよろしければ」
珍しく。
幸い夕方でもあったので。
信勝が先に信長に口づけ、腰を抱き、寝所へ誘った。
それでその週は週四となった。そして信勝は地球の蘭丸が十八と思い出し「そうか、回数なのか?」と影で自問自答したとか。
そういえば。
数日後、弟は頬を染めて訊いた。
「あ、あの、姉上。僕はお、夫と申してましたが生前に夫だった人は……」
「おらんぞ、外向きには男で通していたし、面倒だったしな」
子供はほとんど養子ですませていたので問題は起きなかった。姉の初めての夫。信勝は目を回した。
「ま、わしも妻なんて初めてじゃからよくわからんがな」
「あわわわわ……!」
「いちいち動揺するな……そのな、信勝」
珍しく迷い、姉は弟の手をぎゅっと握って真っ直ぐに前を見た。
「これからは疑問があったらわしにきけ。いいか……わしの意志をきかず、わしの気持ちを決めつけるな。お前はどうもそういうところがある……その、わしも悪いところがある。苦手だからと伝えることを怠りがちだ、生きていたときは特にな」
「で、でも、僕ごときの疑問など姉上のお邪魔に」
「ほー、お前ごときなのに、わしの気持ちはきかんでも分かるってか? これは大きくでたのう」
「違いますよ! 確かに僕ごときが姉上のお心を読める訳じゃありませんが、でもお時間の無駄に……や、やっぱり無理です!」
「ええい、いいから聞け! ……『今度は』わしの気持ち、聞きにこい。五十近くまで生きた。わしもお前の最後に知るわしよりは……ちゃんと正直に話すから」
信勝は逃げようとしたが、信長はとても優しくその首を抱きしめたので動けなくなった。
「大切なことはちゃんと口に出せ、夫婦の掟じゃぞ」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
しあわせ夫婦生活と内緒の酒2
まだ姉に本当のことを聞くことができない。ただ、なにかが壊れてしまうようで怖かった。
(姉上のためならなんでもするって思ってたのに、こんなことで僕は)
その事実に弟の胸は自責で潰れ、苦しみのはけ口にひたすら酒を飲んだ。最初は勇気を出すためだったのに逃げ出すために酒を飲む自分を責めた。
(もしも本当に姉上が僕のことで悲しんだとしたら、だからって今更何が出来るんだろう……?)
そんなわけで信勝はまたカルデアの外れの酒盛り場に来ていた。リビングで吐いて以来、自宅では飲まないようにしていた。仮初めの夫婦とは言え大切な場所は汚したくない。
「ふふ、貴方が飲む姿というのはなんだか意外ですね。写真をとって信長に送ったら面白そうです」
そしてよくこの軍神に出くわす。景虎は信勝の三倍以上の量を顔色一つ変えずに飲み干すと話しかけてきた。しつこく塩漬けピーナッツを勧めてくる(実の所信勝だけでなく「いくらなんでも辛すぎる」と飲み仲間からも受け取ってもらえなくなっていた)。
「二十歳すぎるまで生きたんだ、酒くらい飲むさ。姉上が面白がるもんか、生きていた頃に行事で僕が酒を飲む姿なんて何度も見た」
確かこの少年は二十歳前後に死んだはずだと不意に思い出す。
「前々から謎だったのですがあなたと信長ってどういう関係なんですか?」
「なんだ急に」
「だってあなた、信長を畏れていないでしょう」
「畏れる理由がないだろう、姉上は僕の姉上なんだから」
「血縁だから……ねえ?」
信勝は普通のヒトなのに?
景虎は信長を自分は同類と見なし、そして信勝は同類ではないと見なしていた。信勝は景虎には理解できないヒト、つまり普通の人間だ。信長と景虎は異能。それなのに姉をちっとも畏れず慕っているのはどういうからくりだ。
父も兄も姉もあんなに自分を恐れていたのに。
「ところで……どうしてあなたたちは仲がいいのですか?」
「はあ? なんでお前にそんなこと……別に仲良くないだろ、僕が姉上にくっついていってるだけだ」
今の生活はあくまで姉の気まぐれだと自分に念押しするように吐き出した。調子に乗ってはいけない。
「挨拶もすれば時々笑いあうこともあるでしょう。それが確か「仲がよい」ということです」
こんな家族は景虎にはいなかった。父も兄も姉も下の兄弟たちも敬い、そして畏れていた。日頃の信長と信勝の親愛など無縁だった。
……『姉上を一番理解しているのは僕だからな!』……
(……やばい、ちょっとムカついてしまいました)
景虎の家族は初めから理解など放棄していた。同類なら、信勝がヒトならざる異能なら理解できる。けれど彼は精神の一部が壊れているだけでヒトなのだ。
そして壊れているのはおそらく信長のせいなのだろう。
「だから奇妙に思い、図書館であなたたちのことを調べたのです」
「……調べた?」
「すると仲がよいどころかあなたは二度信長に謀反を起こして、かつ信長に殺されている。それがどうして今のような関係になったのです? 確か「普通のヒト」では憎みあう関係になるはずですが」
「そんなこと……お前には関係ないだろ!」
気分を害した信勝は席を立って帰ってしまった。景虎も追わなかった。ただどう聞き方を変えれば答えたのか夢想した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
信長は時々花を生ける。
昨日から床の間とリビングのテーブルにそれぞれ一つ花瓶が置かれた。シンプルな白い陶器の花瓶に赤い花が二本ずつ揺れていた。
「茶は分かるが、華道とやらはさっぱりでな」
それでも信勝には十分きれいに見えた。二つ花瓶の赤い花は大きくて品のある佇まいだった。
「その花、違う花なんじゃぞ」
「ええ、そうなんですか!?」
「専門家でなければ瓜二つにしか見えんよな。それは椿と山茶花という」
「へえ、言われてみれば……ちょっとだけ違うような?」
花の知識はさっぱりな信勝は近づいて二つの花瓶の花を見比べた。ちっとも違いが分からない。
「花の見分け方は散り際で分かる。椿は花の根本からぼとんと落ちる、花の形をほとんど損なわずにな。逆に山茶花は花びらを一枚一枚散らし、花の形を失っていく」
「さすが姉上、博識ですね」
「ははは、もっと褒めよ褒めよ」
瓜二つの花なのに随分と両極端な最後だと思った。潔く花のまま死ぬか、最後まであがいて花の形を失うか。まるで人間の生き方や死に方のようだ。
「お前はどっちの花が好きだ? どちらの散り方が面白い?」
「僕は……やっぱり椿でしょうか? 散り方が潔いかと」
深く考えていない答えだったが、その時姉は少し悲しそうに見えた。
「お前らしいな」
「姉上、僕は何か……?」
「いいや。珍しく花を生けたから感傷的になっているだけだ」
それからも信勝はちょくちょく花の様子を見ていた。数日たっても椿も山茶花もきれいなままだった。自分が生けた花を見つめられるのは悪い気分ではない信長も信勝の後ろ姿を眺めた。
丈夫な花なのかもしれない。一週間経っても椿も山茶花も花びら一つ散らない。ちゃんと減った水を補給しながら信勝は首を傾げた。
「実はこの花、姉上の魔力を吸ってませんか?」
「さて、そんなこともあるかのう」
花の水が減っているということは確かに花が生きて、呼吸をしているということなのだが造花のように変わらない。
「ところで姉上、前に話していたことなのですが……」
「またわしの個人情報の話か」
「う……そ、そうです、姉上も僕の話を聞きだしたのですから、少しくらいいいでしょう?」
「わしの恋人の数のう」
「姉上がいったんですよ! め、夫婦なら知っていて当然だと……うっ」
そうやって泣くから言いにくいというのに。涙を滲ませていやとは言わせない弟に姉は呆れた。理由を聞くと羨ましいらしい。今同じ立場なのに謎だ。
しかし酒の勢いで弟の性体験の人数を聞き出したのは事実だ。手招きをして赤いソファーの隣に座らせる。弟の肩の位置は姉より少しだけ高くついつい頭を置きたくなる。
「ひい、ふう、みい……」
「そ、そんなに!?」
指を折る度にびいびいうるさい。
「百人も女を買った男に言われたくないわ。ええと、十一、十二……」
「そんなの多すぎます~」
「ええい、うるさくて数えられん! ……えーっと蘭丸で最後だから、十五人、そうじゃ十五人の男女と付き合った!」
ちなみにうち二人は女性である。二十代は色々試した。
人生五十年。若い頃をのぞくと基本は年単位のつきあいなので多い方だろう。思い出せば恋人がいない期間の方が少ない。
(ヒトの声もろくに聞こえんかったのに不思議なもんじゃの)
彼らの言葉の価値はやはり分からなかった。けれど他よりは楽しい時を過ごせるから選んだ。
「十五人も姉上のお体とお心を……うぎぎぎぎ! ……こほん。分かりました、教えてくださりありがとうございます。それでその、その方達は、えっと、どういうタイプで……?」
「そんなん決まっとらん。その時興味を持った相手と付き合っただけじゃ、気まぐれに近いぞ?」
「で、でも好みとかあるじゃないですか! ……その、僕も少しでも似るように」
「まーた余計なことを考えおって。好みとかそういうのはな、ろくに知らないから効果があるんじゃ。お前のことは……」
本当は知らなかったとこの生活で思い知らされた。けれど首を横に振る。少なくともちょっとした性格や外見くらいは知っていた。異性の好みなんてその程度知っていれば十分だろう。
「とにかくそういうのいいから。わしは誠に気まぐれよ、お前だってその気まぐれに好いたのだからええじゃろ」
「それではもう一つ」
「まだあるんかい!」
「その……姉上が子を産んだことがあるか知りたいのです」
信勝は一度正面を向くともう一度姉に向き直った。真っ直ぐな目をして。
「わしの……子?」
「僕の、その恥ずかしい体験を聞いたのですから……姉上の子のことも教えてくれてもいいじゃないですか」
「いや別にわしの子恥ずかしくないし……産んだことはあるぞ」
信長は語った。二人の子を産み、それぞれ別の父親だった。
男の子と女の子でこれと言った病気もなく成人した。男の子は織田家の一員となり、女の子は名家へ嫁いだ。こればかりは今は叶えてやれないので信勝は嫉妬するかと思ったが酷く真摯な目をしていた。
「その、それではその子達はその後健やかに……?」
「いいや、死んだよ。戦と病で……あの時代よくあることじゃ」
「しかし……姉上のお気持ちを考えると」
「わしの死んだ後の話じゃ」
両方とも織田の家でそれなりの地位につけたが、二人とも子を残す前か子供諸共に死んでしまった。それでも早死にではないのはあの時代らしい。
「それでは織田の家には……姉上の血は残っていないのですね。残念です。もう大名の位はなくなったけれど二十一世紀にも織田の血脈は残っていると聞いたのですが」
「まーたわしのことでよくわからん執着をして」
「もし姉上の血が残っているなら白紙化した地球を救う理由が増えます、僕にとってはですが」
「ま、わしは血を残すことに興味はない。ないが……まあ子があまり長く生きれなかったことは気の毒に思っておる」
姉は語らなかった。当時の恋人の子を産んだのはたまたま出来たからだったが自分の理解者になるか期待したことを。サル、羽柴秀吉だけではなく、自分の血を引く子なら自分にも声が聞こえる、話す言葉に価値が感じられるのではと浅はかな企みをした。
結果は聞こえなかった。他の人間と同じように言葉の意味は理解できても、価値はさっぱり分からなかった。つまりは我が子は普通のヒトだった。
数年後新しい恋人と仲良くやっていた時も少し考えたが、安定した時期だったこともあり腹が目立つ頃まで放っておいた。そうして産んだ子もやはり普通のヒトだった。
「子のことはわしもこちらに来たときは図書館で一応調べたが、運には恵まれんかったようじゃな」
「織田の家は江戸でも残っていたのに……残念です」
「なんじゃ、自分の子は残さんかったくせに、わしの血は気になるか」
「僕は姉上のことならなんでも大切です」
息子と娘のことは気の毒に思っていた。信長には愛するということが実感として分からない。それでも親に愛されぬ子を思うと母のと関係のことを思い出した。だから大切にはした。息子はもう既に跡取りだった養子たちより贔屓をしたり、娘には豪華な着物と他の娘たちよりいい嫁ぎ先を用意した。
「……今思うと間違えたかもしれん」
信長は信勝の肩にもたれ、その左腕を両腕で抱いた。ぴゃと弟は変わらぬ奇声を上げた。
「間違えた、ですか?」
「ああ、我が子ということでできるだけ贔屓をして大切にした。鍛えもしたし、教育も高度なものを受けさせた。けれど今お前と過ごすような時はあまりなかった……ろくに言葉をかけなかったのじゃ」
それは養子たちにもそうだった。当時大切だと言葉をかける意味が分からなかったからだ。今は思う。もう少し、言葉や態度で大切だと伝えるべきではなかったのか。母としてでも父としてでもいい。フリでもいい。子たちは自分に必要な存在だと分からなかったかもしれない。
(信勝、お前は自分はわしに要らぬと決めつけている。今だってわしの「好き」という言葉を無視して……けれどあの子達だってそう思っていたかもしれない)
息子と娘の顔は覚えている。けれど本心までは分からない。今では確かめる術もない。
「冷たい親の元に生まれたと嘆いたやもしれぬ……なんじゃ?」
珍しく信勝の方が身を寄せてきた。そっと姉の腕の絡んだ左腕をほどくと信長の肩に回して抱き寄せた。
「そんなことはありませんよ、きっと姉上のお気持ちは子に伝わっております」
「……会ったこともないくせに」
ひどく誠実な顔を近づけられると妙に照れて顔を背けた。
「うっ。そ、それはそうなんですが……でも僕だから分かることだってあります。姉上の家族でいるってすごく誇らしいものなんです。あなたは強くて眩しくて……とにかく嬉しいものなんです」
「それはあやつらではなくお前の気持ちじゃろ。ふん……お前はわしがいくら好きというても信じぬくせによういうわ」
「い、いいい、いえ、子達と僕とでも色々違うというか、その、姉上の好きという言葉が嘘だと思っているのではありません。ただ姉上は好きなものがいっぱいあるし、次の好きを見つけるのもあっという間だし、なにより僕が調子にのって舞い上がらないかが不安で……むぎゅ!?」
信長は信勝の近づいた顔に不意打ちでキスをした。弟の唇はあたたかくてそのまま首に腕を回してより深く口付ける。三分ほどそうしていると離れた。
「好きじゃよ、信勝。誰よりもというにはわしは年をとりすぎたがの」
「ぼ、僕なんかにもったいない……あ、あの」
信勝は相変わらず「好き」という言葉を姉の気まぐれとして真に受けない。
その疑心暗鬼は生まれつきではない。確かに子供の頃の弟は姉に必要とされていてると信じていた。ではいつから?
(誰がお前をそうした?)
幼き日とは逆だ。十になる前の信勝はもっと姉に愛されている自信があった。だからいつも笑顔で姉上と走り寄ってきた。
(やはりわしがそうしたのか?)
若い日、誰の言葉も聞こえなくなっていった。そして聞こうともしなくなった。
「大丈夫ですよ。姉上のお気持ちは必ず子に伝わっております……今の僕、とっても幸せですから」
「……どうだかな」
妻の愛を信じない夫に太鼓判を押されても説得力がない。
それでも姉弟はしばらくソファの上で肩を寄り添わせていた。シュミレーターの夕陽に照らされながら、二人の姿を椿と山茶花だけが見ていた。
「なあ」
「はい」
「お前はわしが好きか?」
「は!? ええっ、そ、そんなの言わなくても分かるでしょう!」
「言わん言葉のことなんか知るか、ちゃんと言え」
「そ、それはもちろん、す、す、す……誰よりも尊敬しています!!」
姉は懐からハリセンを取り出して弟の頭にすぱーんとやった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
酒場の異変
また姉に真実を訊けなかった。姉は子供のことを話してくれたのに。自分が情けなくて、酒の量が増えた。
「それだけ飲むとあなたでも目が回るのでは?」
外れの酒盛り場ではまた景虎だけがいた。以蔵もいたがとっくに酔いつぶれている。景虎はまた塩漬けピーナッツを食べては勧めてくる。
「いらない、僕には辛すぎる。塩の塊としか思えない」
「そうですか、この塩と同じなのに歯ごたえがあるのが面白いのですが」
今日は既に信勝はかなり飲んでいた。姉のいる家に帰るまでには醒ましてしまわないと。大切な場所に持ち込みたい匂いではない。
「もう何回も聞きましたが、あなたはどうして歴史書とは違うんですか? どうして普通のヒトのように信長を畏れるか、憎むかしていないのですか?」
「……そうだな、お前からみれば変なんだろう」
姉に本当のことを言えない苦悩が積み重なったこともあり、その日信勝は素直に喋った。飲み過ぎたのかもしれない。
愚かな家臣たち、予定調和の敗北、なぜか拒絶された一度目の謀反での死。その全てをまとめて自分の死の裏話を語った。
景虎はじっと聞き役に回り最後に「ふぅん」と言った。
「というわけで最後に僕が死んでしばらく後、姉上は尾張を統一したんだ」
「へえ……信長とあなたにそんな裏話があったのですね」
「軍神からみればつまらない話だろう、忘れろ」
「いえいえ面白かったですよ。私が生前知ったら信長への警戒度を上げていたかもしれない話です」
「……どうして?」
景虎はけろりと答えた。
「ようはあなたが忠義者の弟だということでしょう。己の死も謀反人の汚名も省みずただ信長に尽くした。身内からそれほど尽くされるなら一角の人物だろうと身を引き締めたというだけです」
信勝が目を丸くしたのが景虎は逆に不思議だった。
「私たちの時代の忠義とはそうじゃないですか。共に討ち死にする家臣こそ忠義者。汚名を着ても家に尽くす者こそ真の孝行者。そしてそれほどの忠義を向けられるものは実力がある違いないと見なされた」
死よりも名誉を重んじる。思い出したくもない時代の美徳を持ち出されて信勝の酔いは少し醒めた。
「僕は別に忠義者の弟じゃない。ただ……姉上が好きだった。女だと馬鹿にした家臣たちが許せなかった。あいつらを集める僕自身も憎かった。忠義なんかじゃない、織田の家なんてどうでもよかった」
「まあやりすぎ感もありますが……毛利元就ならどう思うか聞いてみたいですね。三本の矢の話って知ってますか?」
「知らない。その……」
「おや、私に何か質問ですか? 昔話の礼にある程度は答えますよ」
「その、お前も一応。大名だったんだろう……どう思う? 僕のしたことは少しは姉上の役に立てたんだろうか」
「んー……」
景虎は悩んだ。信長と自分は異能として近い。けれど景虎には自分を畏れぬ家族はいなかった。ヒトなのに理解できない存在を慕う家族。そんな人間が死んでしまったらどう思うのだろうか。
だから越後大名として当時の常識的感想を告げた。
「役には立ってますよ。だってそれで逆臣は減り、織田はまとまった。あの時代によくある面倒事を綺麗に処理しています……でもそれは損得だけの話です」
「損得だけって何だよ、はっきり言え」
見た印象でしかないが損得では測れまい。この姉弟は相手の痛みを自分の痛みより大きく感じるのだ。信勝が話しているのは信長の損得だけだからズレる。
「信長が悲しんだかは本人でないと分からないだけです。だってほら、あなたたち仲がいいじゃないですか」
「かな……しんだ……」
信勝が顔をひきつらせたので景虎は首を傾げた。信勝の頭に人魚姫の姉の話をする信長の顔が浮かんだ。
「謀反を起こしたとしても……血の繋がった家族なら悲しんだろうか? 足を引っ張る僕みたいなやつでも?」
「どうですかね。血が繋がってる家族だからってそれだけで我が身のように思えるわけじゃない。どうでもいい家族なら形だけ悲しむフリをするだけです」
「フリってなんだよ」
「世間体というやつです、ヒトというものは異端を恐れるので悲しいフリも時には必要。あなただってそれくらいは知ってるでしょう?」
「いやなことばっかり思い出させるな、お前は」
ふと随分話し込んだなと景虎は信勝に振り返った。
「なにかあったのですか? 随分込み入った話まで私にするなんて」
「それは……別に意味なんてない」
真相を暴いてしまいそうな金色の瞳から信勝は目をそらした。
「ま、当時の常識で見るなら忠義者の弟がいて嬉しかったんじゃないでしょうか。お家騒動を収めるのは大変ですからね」
「仮に僕が忠義者だとしてもあの頃姉上は知らなかった。殺そうとした謀反人の弟だ。しかも二度。……それでも悲しいのか?」
「仲はよかったのではないのですか?」
「そんなのほんの子供の頃だけだ」
「じゃあわずかな間でも仲がよかった分悲しかったんじゃないですか?」
「……それは」
人魚姫の本を買って二ヶ月半。その間に気がついたことがある。……生前より今の方が問題なのではないだろうか。
「知らない方がよかったんじゃないだろうか」
「というと?」
「知らない方がよかったことだってあるだろう」
「抽象的で意味が分かりません」
ただの謀反人の弟のままではいられなかったからとは言えずに口ごもる。素知らぬ顔の景虎は塩漬けピーナッツを一つ口に放り込む。
「信長あなたにがそんな話をしたのですか? なにかあなたのことを知りたくなかったと」
「いや、直接言われた訳じゃ……」
「直接言われてないなら忠義者の弟だと思ってるんじゃないですか? 信長はその辺割とはっきり言うでしょう」
「そう……かな?」
「生前謀反を起こしたことが自分のためだったと分かっていなければ、今話したりしないと思いますが」
「そうだと……いいけど」
五本目の日本酒で信勝はそのまま眠ってしまった。その横で景虎は塩漬けピーナッツを山にして十二本目の酒瓶を開けた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
最近信長が引っ越したという部屋のベルを鳴らした。十時を過ぎていたので出てくるまで少し時間がかかった。
「信勝、いったいどこをほっつき歩いて……なんじゃお前か」
「信長、弟殿を回収してほしいのですが」
「は?」
「なんだか酒を飲むだけ飲んで寝てしまったのです、ま、私と飲み比べして潰れないわけもないのですが」
「……あいつ、帰ってこんと思っていたら酒か」
大きなため息。一瞬、信長の目に警戒の光が宿るが大人しく景虎についてくる。弟を心配する信長はただの姉にしか見えず、同類の自分として奇妙に映った。
「あなたの苦労も分かった気がします」
「なんの話じゃ」
二人、廊下を歩く。景虎から話を振った。
「こんな弟がいたら私にいたならどうだったかと思いました。ただのヒトのくせに本気で異能の家族を慕うなんて」
死んだくせに、その死が相手を悲しませたかの方が気になるという倒錯。自分より他人が大切という異常性。ヒトには違いないが心が壊れている。
「は、軍神が人の家族を羨むとは驚きじゃな」
「元々思っていたのですよ、あなたの弟、壊れているなって。一度、彼の宝具を見れば大抵の者は思うのでは?」
「……」
自分の命こそをもっとも軽く扱う。普通のヒトとは真逆の行動だ。本来の己のあり方に逆行するように信勝は壊れていた。彼と一度戦って、宝具を見れば分かる。
「自分を壊して喜ぶ異常性。私やあなたのような異能なら不思議じゃないけれど信勝殿はほとんどただのヒト。ある種、私たちより異様です」
「……お前にあいつのなにが分かる」
「私が分かるのではありません」
既にあなたが知っていることだと軍神は笑う。
「昔一度や二度は思いました。どうして父と兄は私を畏れるのか。どうして姉は優しくしてくれるのに内心ではビクビクしているのか。私は家族を傷つけようなど考えてないのに……だから自分を畏れない家族がいたらどんな風だろうと空想したことがあります」
「……」
「けれどそれもまたうまくいかないものですね。あなたの弟をみれば分かります、私たちをただのヒトが理解しようとすると精神を壊してしまう」
だって元々相互理解など不可能な者同士なのだ。猫は犬が本当には分からないし、犬だってそうだろう。異質なのだ。全く違う存在なのだ。だから無理に理解しようとしたら「オカシク」なる。だから景虎の家族は理解を放棄した。
「ならば私を理解不能として畏れた家族たちは正しかった。ちゃんと自分を守ったわけです……私なら見たくないですね。私を愛し、理解に努めた故に壊れた家族の姿なんて。流石にしばらく人生の意味とか考える旅に出てしまいそうです」
「……お前とわしを一緒にするな、あいつのことだってなにを知っているというのだ」
「そうですね。今のは信勝殿がもしも私の弟だったらというという話なので信長には関係ない話です。なにしろ私は毘沙門天の化身であなたは魔王なのですから」
異能の姉を持って、愛した故に弟の心が壊れた。
もしそうだったとしても今更どうしようもない。
「くだらん」
「そうそう、くだらない暇つぶしの雑談です。意味なんてないんですよ」
無駄話をしている間にも足は進む。目的地にはすぐそこだ。
「……あれ?」
景虎は首を傾げた。酒盛り場に特に変わった様子はない。酒瓶は空っぽで転がっているし、酔いつぶれた以蔵が床で寝ている。
しかし信勝だけはいなかった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
消えた信勝
ずきずきと頭が痛い。信勝は目を覚ますとそこは休憩所のソファだった。
「目が覚めたか?」
「……誰だ?」
横には一人背の高い人物が立っている。表情の見えない仮面が信勝の顔をのぞき込んでいた。和風の装束はカルデアで数回見かけた。たしか……。
「我か。我は平景清。源氏を殺すもの」
自分よりあとにカルデアにきたアヴェンジャーだ。信勝はさあっと青くなった。
「ぼ、僕は源氏じゃ……」
「わかっておる、お前を殺しはせぬ。酷く酔っぱらっていたから介抱しただけぞ」
記憶がさっぱりない。しかし相当飲んでいた覚えはある。迷惑をかけてしまったのかと慌てると景清はミネラルウォーターのペットボトルを渡した。
酔いを醒ませと言われてばつが悪く飲み干す。少し頭がクリアになった。
「ところでお前には姉がいるのか?」
「ど、どうして?」
「「姉上、ごめんなさい」と呟きながらうなされておった」
かなりまずい寝言を言っていたらしい。しかし景清が続けた言葉に信勝はさらに目を丸くした。
「最初は姉弟喧嘩でもしたのかと微笑ましく思っていたのだが「僕が死んだのはあなたのせいじゃない」と何度もうわ言を言うたので興味がわいた」
「……っ」
致命的なことを寝言で言い過ぎだ。今後は酒を控えよう。どうせもう酒で勇気はでないと分かっているのだ。
「水の礼じゃ、いくつかお前のことを訊かせろ」
「な……なにが目的だ」
信勝はソファから起きあがり、立ち上がって逃げようとした。しかし酔いで足がいうことをきかず、ソファの右の肘掛けにもたれるように座り込んでしまう。
どうしよう。たしか平景清はアヴェンジャーだ。「わしもそうじゃが、基本的にアヴェンジャーに会ったら長居はするな。お前には少々危険すぎる」というのが姉の言いつけだった。
立ち上がろうとする。しかし景清は信勝が立ち上がりにくい位置に移動してしまった。
「そう怯えるな。とって食いはせぬ。……お前のことはカルデアで何度も見かけた。気になることがあり図書館の本で読んで名前を知った。そして興味を持ったのだ」
「興味……本?」
信勝は歴史書にかかれるようなことはなにもなしていない。載っているとしたら信長のことで、彼女に対する謀反のことくらいだろう。
「ああ、知り合いに似ていてな……お前も兄に殺されたのか?」
「姉上は兄じゃない。ただ殺されたんじゃない、僕が逆らったからだ」
「ふむ、そうだったな……どちらにせよ景清には分からぬのだ。カルデアでの明らかにお前は姉を慕っていた。しかしなぜ殺された相手を慕う? ……義経といい」
酔いで最後の一言は聞こえなかった。しかし姉のことでは黙ってられないのが信勝だ。
「ふん、お前は知らないだけだ。姉上は凄いんだ。誰よりも強く賢く勇敢で大局をみている……この世で一番すばらしい人なんだ。だから僕の命なんてどうでも……」
「ふむ、つまり大きな才をもつゆえに慕っているのか」
「え……?」
なるほど。圧倒的な才能があるからどんな目に遭わされても愛しているのか。
景清は信勝から目を離し、目を閉じて宿敵の姿を思い浮かべた。源頼朝。この肉体の持ち主である義経の兄。初めて日の本で武家からなる鎌倉幕府を作り、朝廷と渡り合い、多くの偉業を成した。一つの歴史を作ったといっていい。
憎い仇とはいえそれが常人には成し得ぬ業績ということは分かる。
「ふむ、座の知識にもある。織田信長は残虐非道ながらも大局を見据え、幕府も朝廷も意のままにした。それほどの才があるから慕うなら、まあ一応理解は……」
「違う!」
「……何が違う?」
「僕は例え、姉上に才覚がなくたって……あ、いや」
ただ彼女が彼女だから好きだ。才覚なんて関係ない。言おうとして黙る。生前の無惨な記憶が信勝の言葉を止めた。
才覚があるから彼女は孤独で、ないから信勝は不要。あんなに理解者を求めていた彼女に何もできなかった。才覚のない彼女なんて自分の空しい妄想だ。
「それでも……違うんだ。姉上に才覚がなかったら好きじゃないなんてことは絶対にない」
「……ではなぜ許す? 殺されたのだぞ、いくら謀反をしたといえ恨むのが普通ではないのか?」
才能が圧倒的だからなにをされても許すのではない。ようやく義経を理解できたつもりだった景清は肩を落とす。仮面越しにじっと信勝をのぞき込んだ。
「この身は義経であり、内側にいるは景清である。だが景清には分からぬ。なぜ義経はそこまで頼朝を慕うのか」
「……お前は兄姉に殺された者が気になるのか」
景清は頷いた。
「見放されて殺されてもなおあやつは頼朝を心から慕っている。兄妹とはいえ普通なら見放された時点で憎むのではないか? どんなに慕っていても殺されれば恨むものではないか? どうしてあやつは兄を未だに好きなどというのだ?」
「僕は……あくまで僕の話だけど、自分の命はどうでもいいんだ。姉上のことは好きでいられればそれでいい」
「それは才覚が理由ではないのか?」
信勝は首を横に振った。
「お前が話してるのは源義経の話だろう。なにもかもが違う。僕には軍事の才能はないし、状況も全然違う。僕と源義経は違うんだ」
「ではお前は義経の立場なら姉を恨んだのか?」
「それは……多分ない」
おそらく慕ったままだった。気持ちを疑われたら、悲しんだろうが最後まで好きだった。
「わからぬ、どうしてそこまで慕うのか……景清は義経がわからぬ。その死まで見たというのに」
「そんなの……」
「そんなの?」
自分にそんな才能はないけれど。
それだけは源義経と同じ気持ちだと信勝は半ば確信していた。
「理由はないんだ」
「……なんだと?」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
信勝がいない。ワインセラー中を探したが見つからない。万一と思って酔った以蔵を起こしたが知らないという。
「おい、本当にここにいたんだろうな!?」
「本当ですよ、目を覚まして部屋に帰ったのでは?」
景虎の言葉に部屋に戻るがいない。さすがに景虎も焦り、二手に分かれて探しましょうと信長をおいて廊下の角に消えた。信勝が帰ってない自宅の玄関を見ていると焦りが募る。信勝になにかあったのでは?
(そうだ、こういう時は)
ダ・ヴィンチちゃんだ。通信を入れて近くのモニターからダ・ヴィンチを呼び出す。深夜の呼び出しにも顔色一つ変えず彼女は信勝を探した。
……「探索・対象サーヴァント織田信勝。あれ……確かにおかしいな」……
まず心配するなと念を押された。「たしかにカルデアのどこかにいるし、特に危機的状況にはない、ただ彼の通信チャンネルに繋がらない」と返事をする。
……「位置はわかる……でも妙に位置がわかりにくい。ぼやけてるっていうか。私も探査を続けるけどそっちでも引き続き探してほしい……大丈夫だと思うけど援軍を送ろう」……
「援軍?」
信長が一分も待たないうちにその人物は現れた。
「もちろん私もお手伝いしますよ! 姉弟離れているのはよくないことですから」
「う、うむ?」
駆けつけたのは牛若丸だった。カルデアの初期からいるサーヴァントで信長もなんども会ったことがある。生前の教養として信長は彼女のことは別の意味でも知っていた。……牛若丸。兵法家として名高い源義経。
(……兄に殺されたもの、そのくせ今でも兄を慕っている)
妙に心がざわつく。手伝ってくれるのに顔を背けてしまう。対照的ににこにこした牛若丸は信長に何度も振り返った。
「深夜にいなくなった弟を探すなんて姉弟仲がいいのですね」
「……最近はそうかもな」
「まあ家族なら仲がよいのは当然ですよね。私も兄上のことは大好きですから」
「……」
信長の知識が確かなら義経は兄の頼朝に殺されたはずだ。兄妹で戦うなどいやだという手紙も黙殺された。それなのになぜ今も大好きなどというのだろう。牛若丸は若い頃の記憶が全面に出ているからだろうか……。
「……兄のことが好きか?」
「はい、もちろん!」
「歴史の書物でしか知らんが、お前たちは相当大人になってから初めて出会ったのだろう。それから数年も一緒ではなかったはずだ。それでそこまで好きになれるものなのか?」
「殺された相手を兄妹だからと慕うのはなぜか」とはさすがに言わない。下手すると戦いになる。ただ牛若丸が自分を殺した兄を慕う理由は気になった。
「子供の頃から兄上の話は家族に聴いておりましたから。挙兵を聞きつけ、お会いした時に兄上のためならなんでもやると決めたのです」
「なぜだ?」
「どうして不思議に思うのですか?」
きょとんと目を丸くする。牛若丸は小首を傾げて目を丸くして立ち止まる。不快という風ではなく不可解そうだった。
「だって兄妹です、好きになるなんてそれで十分じゃないですか」
「確かにお前の兄は幕府を開いた大した人物じゃ。再会した頃は兄も心からお前を大切にしたのかもしれぬ……だがそれだけで殺されても慕うのは解せぬ」
「あなたは随分と理由を求めるのですね」
どう説明したものかと牛若丸は目を閉じて首を左右に傾けた。
「あのですね、理由はないんです。好きだから好きなんです。命をかけてもいいから命を懸けるんです。もちろん兄妹だからというのはありますが……本当はきっかけはなんでもいいんですよ。兄妹ですが、私も他の兄弟を全員そう思うのではないので」
「……理由がない?」
「ええ、好きなことに理由はいりません。もちろん理由は付けられますが大抵後付けですから」
立派な人物だから、優しくされたから。
それが人を愛する理由になるわけではないという。
信長には理解不能だ。
「どうしてお前たちはそうなのだ!」
「たち?」
殺されたのに。
何もなかったかのように慕うなんて。
今でも弟はまた姉のためにならいつでも死んでみせると言っている。
……「元々思っていたのですよ、あなたの弟、壊れているなって」……
景虎の言葉がちらつくと追い払う為に声を上げた。
「なぜそこまで兄を慕う? 最後の頃は悪し様に扱われ、追っ手を差し向けられたのに!」
「……確かに最後の頃兄上は私を誤解していたんだと思います」
「お前たちの事情は学んでいる。しかし……殺されたのだぞ? どうして慕うことをやめぬのだ?」
「好きであり続けたからです……後一度直に話せばきっと大丈夫だった。今でも私は兄上を誰よりもお慕いしております」
信勝と同じ笑顔だ。殺されてもむき出しの好意を失わない。
「逆にあなたはどんな理由があるから弟が好きなんですか?」
「あいつを好きな理由?」
「ええ、好きだからこうして探しているのでしょう?」
記憶をひっくり返して理由を探す。慕う笑顔。利発な会話。うつけと言われた大言壮語な話を真剣にきいてくれた夕暮れの川辺。いくつもそれらしい理由は見つかった。
(だから……好きなのか?)
しかしこうして探している決定的な理由には思えない。どれも大切な記憶だ。けれど慕ってくれたから好き・利発だから好き・真剣に話を聴いてくれたから好き……と言われるとなんだか違う気がする。
愛してくれたから愛する。心地よかったから好き。なにかしてくれたから好き。
どれも自分の気持ちとは違う気がする。
「……後悔しているだけかもしれん」
「後悔?」
「わしはあいつを……生かすことができなかった。それで放っておけないだけかもしれん」
信勝に苦しめられたのは死後の話だ。本人も覚悟している。二度あれば三度目も。それが戦国の習い。愚かにも自分はそんなことで弟を切腹させたのだ……結果は死ぬまで続く後悔だった。
(だって知らなかったのだ……わしがあいつを失ってあんなに苦しむなんて)
人を失って苦しむなんて人らしさ。
自分に与えられていると気が付いたのは随分あとの話。
賑やかな笑い声を持つ理解者に出会って。
自分の感情というものを自覚し始めたしばらく後の話。
「後悔してるだけってそんなの嘘です」
「……嘘?」
牛若丸は信長は怯えている風に見えた。この傲岸不遜な少女が怯えの影を見せるなんて初めてだった。
「だって……後悔だけでそんな苦しそうにしませんよ。いくら私でも分かります」
苦しい顔をしていたのかと信長は顔に手をやった。牛若丸の澄んだ瞳には信長のこわばった顔が映っていた。
「そんなに苦しむほど必要ってことは好きなんでしょう? 後悔してるだけなんて自分に嘘をつくほど」
「わしが……己を偽っているというのか? 侮るな、殺すぞ」
「侮ってなどいません! 心配しているのです……本当に自分で気付いていないのですか? 今自分がどんな顔をしているのか」
牛若丸の目には信長はとても苦しんでいると映った。それを自覚していないとはどんな深い裏事情があるのだろう。
「……もういい、探索に戻るぞ」
「別に……いいですが」
さすがに言い過ぎたかと牛若丸も引く。二人で再び廊下を歩き始める。数分、足音だけが響くと信長が先に口を開いた。
「……のう、好きに理由はないと言うたな。それなのにそのために死んでもかまわぬと言うのか?」
「かまわないとは言ってません。ただ好きという気持ちはそんな出したり引っ込めたりできないだけです。疑われて死ぬことは辛かったですが。それは私が兄上を大好きなことを変えることがなかっただけです」
「兄上が大好き、のう……だんだんわからんくなってきた、人を好きになるとはどういうものか」
兄に殺された牛若丸が兄を「好き」と無邪気に言う度、信勝の「姉上」と慕う声がちらつく。どうしてあんな苦しいことをなかったかのように振る舞うのか分からない。
「そんなの決まってますよ、この人を好きになると決意するだけです!」
「……なに?」
「きっかけはなんでもいいんですよ。血でも出会いでも些細な言葉でも、きっかけで好きになると「決め」て、あとは気持ちが時間と共に「育って」いく……だから後からくるくる変えられるものじゃないんですよ。時間がたつほど樹木のように大きくなるのです」
「……樹木」
「そう、一度生えてしまえばそう簡単には抜けないのです。抜くときは心という土をずたずたにしないと終われないのです」
「……そんな」
魔王は心はもっと簡単だと思っていた。取引やパズルのように理路整然としているものだと侮っていた。自分と同じように。
ふと牛若丸は気付いた。
「もしかしてあなたは弟に恨まれたいのですか?」
「……は?」
「殺されたと恨まれた方が楽だと言っているように聞こえます」
「だって……恨む方がヒトにとって自然なのではないか?」
牛若丸は少し魔王の弟に嫉妬した。いっそ恨んでおくれとなどきっと頼朝は思うまい。
「あのですね、私も大概ですがあなたもヒトの心を単純にとらえすぎです」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ダ・ヴィンチちゃんから通信があった。信勝が見つかった。急にレーダーが正確さを増したと。
……「なぜかはわからないけど、とにかく織田信勝は見つかったよ。君たちの歩いているブロックからすぐ行ける場所だ」……
映像のダ・ヴィンチちゃんは修正した地図の位置を送った。
地図の通りに信長と牛若丸は進み、廊下を二つ抜けて開けた場所にでた。酒場と反対側の使われていないホールの隅で信勝はあっさり見つかった。
「な、なんですこれ……!?」
牛若丸はとっさに刀に手をおいた。信勝は倒れていた……血だらけの姿で。血で汚れた見慣れたマントと帽子が見える。
「……信勝?」
今朝まで「はい、姉上」とすぐ返事をしてくれたのに倒れた体は何一つ返してくれない。見つかった信勝は胸に刀を刺されて倒れていた。
(信勝、どうして……)
どうしていつも手遅れになって気付くのだろう。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
姉の昔の話
「兄上、釣りですか?」
「釣れんがな」
河原で釣りをしていると弟に声をかけられた。随分久しぶりに二人きりになる。信長が腰掛けた大きな石の横に信勝は座った。丸い石が敷かれた河原に膝を抱えて座る。
「お前に兄上と呼ばれるのは慣れんな」
十年以上は姉上と呼ばれたのを父の死をきっかけにそう呼ばれるようになった。信勝なりに姉の立場に気を遣ったのだが信長としては他人を呼ばれている気がする。
「僕も姉上を兄上と呼ぶのは結構苦労しています」
「なら止めよ、今はわしたち以外おらんだろう」
信長にも信勝にも護衛はいる。二人共織田家の後継ぎと見なされているのは変わりない。死んだ父が信長を後継者に指名しても反発があり、両方が後継者のような扱いになっている。
「……姉上」
「どうした……?」
信長は声がこわばった。弟は真っ青になって肩を震わせていた。風邪か? と疑ったが今は春だ。信勝が病弱だったの幼い頃だけの話だ。
「なにかあったのか?」
「……少し」
「なんじゃいうてみよ」
「……」
信勝は口をぎゅっと引き結び、俯いた。どうやら黙ってるつもりらしい。家臣や母となにかあったのか?
「そんな言いにくいことか?」
「いえ、なにもないのです」
「嘘をつけ」
「少し気分悪いだけです、最近忙しくて疲れているのかもしれません」
嘘だと信長は見抜いた。体調が悪いだけなら弟は自室でちゃんと休む。幼い頃は病弱だったからその習慣がある。
「姉上。姉上のお話を聞きたいです。昔みたいに。姉上が語るいつも新しいお話が信勝は何より好きでした」
病床で話をねだるような弱々しい目で姉を見上げる。幼い頃話をねだられた時のように信長は話を始めた。
「わしが思うに戦とは……」
朗々と語り始める。信長にとっては自然に思う市や戦の形。幼き日に語ったそれは今は色褪せている。自分には他人の言葉の価値がさっぱり分からないのだ。人を使う戦や人の行き交う市のことを語ってなんになる。
(父上が色々いおうがわしは織田など継がん。信勝がやればいい。お前もそのつもりだろう?)
言わなくてもわかってくれているはずだ。
けれど弟に語る内に姉は上機嫌になっていった。弟は聡明で大抵の人は意味不明と切って捨てる話を割合理解してくれたのだ。
「そう銭というものは……で……が……」
しかし。
信長が話に熱中するほど、信勝は理解できなくなっていった。
信勝は必死に勉強してきた。本だけではなく高名な僧の話を聞いたり、戦上手の武者の話も聞いた。
けれどダメだった。
結局、努力しても弟は姉の発想を理解することができなかった。
「……もういい」
「……姉上?」
姉の熱弁は突然冷めた。秋の夕陽が突然夜を連れてくるように。
「わからんのに無理に聞くことはない」
「無理なんて……ぼ、僕は!」
結局、信勝だって自分の事は分からないのだ。なら傍にいてもお互いに苦痛なだけに決まってる。……どうせ、自分の事は誰も分からないのだ。
「もういい、釣れんし帰る」
「あね……うえ」
「お前は昔からそうだな、話を聞くフリがうまい。思わずつまらん話をしてしまった」
信長は釣り竿を肩にかけると信勝をおいて河原から立ち去った。
信勝が初めての謀反を起こしたのはその三ヶ月後だった。
そして遥か時は過ぎ、明治維新の特異点が終わると信長はその時を思い出した。
一人きりの自室で一筋の涙をこぼした。『信勝はいつだって姉上の味方!』。特異点でそう言った弟はきっとあの時、悩んでいたのだ。謀反のことを打ち明けようか、本当にこれでいいのか。だって本当に酷い顔をしていた。
ずっと姉貴面していた自分はそのチャンスを自分で放り捨てたのだ。あの助けを求めるような弱々しい目は「自分ごと死ぬような謀反をやめたい」というメッセージだったのだ。それなのに自分から立ち去った。
(どうせ自分の事は誰にも、信勝にだって分からないと話を打ち切った。自分のことばかりで馬鹿だった。あの時、無理にでも聞き出していればきっと死ななかった)
それはだれも知らない話。
魔王が一人きりの部屋で後悔の涙を流した誰も知らない話。
つづく
あとがき
大変なとこで続くになってしまいましたが次回も見守ってくださるとありがたいです。二月を目指します。
いつのまにか二万字越えてて焦りました。
割とスランプだったので初めて読んだ村上春樹の本を読み返したら大分進みました。さすが神。
2021/12/8
ノッブ
誰にも自分を理解できないと思ってると人から遠ざかるものです。
子供のことは自分より大事にするのがうまいものがいると人に任せて本人は遠ざけた面がある。愛していたが伝えるのが下手なので忙しさを理由に避けてしまった。
信勝を見ているとそれが間違っていた気がじわじわとしていきている。
カッツ
河原の釣りの時は危なかった。何日も寝ていなくて、なにも考えられず本当に泣きつくところだった。
姉だから、すごい人だから、いつまでもそばにいたいから。きっかけはいくつもあるけれど好きが育ってしまえば、好きであることに理由はいらない。枯れることもあるけれど彼は枯らす気はちっともなく水をやり続けた。彼女を好きでいつづけるのは幸せそのものだったから。
景虎
信勝を見ていると自分に怯えた家族のことをやけに思い出す(信勝はちっとも信長に怯えないので)。
脳内シュミレートでぐだぐだメンバーに信勝の死のことを尋ねると景虎と森くんは「そいつは立派な忠義ってやつだ」と褒めるような気がした(逆に龍馬と茶々は絶対褒めない、なぜなら命を重んじる精神性なので)。
景虎も話してますが信勝の死は結果だけ見ればあの時代の忠義で美談なんじゃないかなあと。家臣だったら忠義と断言できるのですが家族だとよくわからない(でも大まかに忠義のある弟なのではと)。
毛利元就の三本の矢の話はつくり話らしいですが、三人の息子への長々した遺言書をウィキで読むと(わりと長い説教聞いた気分になる)いいから家族で結束しろといいたいんだろうなあと。家族の重要性を重んじた毛利元就なら信勝の死のことをなんていうか色々空想します。
牛若丸
牛若丸は信長のようなヒトならざる異能と信勝のような激しすぎる上兄弟への思慕と献身があるので会話させると面白いです。そして信勝と同じく見返りを求めない献身なので制御不能になる。
景清実装で牛若ちゃんめっちゃボイス追加されたからうれし~。バビロニアクリア後に「コールタールとか見たくない(嫌いなもの)」とか追加されてるので「ケイオスタイドォ……」ってなる。聖杯にかける願いは兄ともう一度話すこと……愛してほしいとは願わないのね。