お題 19  バカ













こいつはつくづく、バカだ。
















久しぶりに風邪を引いて、何日も寝込む羽目になった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・そしたら、コンラートがきた。



「・・・!?何しにきた!?」

「何って、そりゃヴォルフの看病をしに」

「余計な世話だ!ぼくは寝ていれば治る、さっさと帰れ!!」

「ああ、そんなに興奮するなよ。治るものも治らなくなるから・・・・・・ほら、枕を代えてやるから」

「さっさと帰れ・・・・ぼくは一人で問題ない!」



本当に、何しにきたんだ。

ユーリのことはどうした。

お前が一番大切なものの、ユーリの側から離れて何をしている。

ぼくの、看病なんかしなくていい。

どうせ寝ていれば治るのだから、看病なんて必要ない。



「さっさと、帰れ・・・・・・ユーリの護衛に戻れ」

「大丈夫、ユーリの護衛はちゃんと他に人に代わってもらってきたから」

「別に、ぼくの看病だって誰がやったって同じだろう」



いらいらする。お前がなんでぼくの看病なんかするんだ。

ぼくなんかの看病に・・・・・・お前がユーリが一番大事なら、いつも一番側で守っていればいいだろう。



「ユーリに言われたのか?ぼくの看病をしろって・・・・・・だから」

「ヴォルフラム」



コンラートの声が硬くなった。思わず身がすくむ。

ふいと目を逸らすと、それを追うことなくコンラートは言ってきた。



「陛下はお前を心配していたんだ。だから・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」



ふと心が急にしぼんでいくのが分かった。


ユーリが余計な心配をして、コンラートが余計なことをするのはいつものことなのに。

それなのに、コンラートの顔がまともに見られない。

どうしたんだ、「ああ、やっぱりユーリのためか」なんてぼくが思う必要はどこにも・・・・・・!



「・・・・・・・・・・お前がここにいたらユーリが心配で治るものも治らない。
だから、帰れ」

「でも、ヴォルフ」

「いいから・・・・・・怒鳴って悪かった」

「そうか・・・・・・そうだな、心配したら治るものも治らないか」

「・・・・・・・・・・いいから、さっさと行け」



もう、話をここで打ち切るつもりでコンラートに背を向ける。


これで、こいつは出ていくだろう。

そう思うと、別の虚脱感を感じたが、これでいいと思う。

コンラートが出ていったら・・・・・・そしたら顔を隠すことなく、思いっきり・・・・・・



「・・・・・・・・?」



と、ふとこめかみに柔らかな柔らかな感触。

どこかで覚えのある感触に、視線をその感触の方向へやるとコンラートの顔があった。



「・・・・・・・・何して」

「何って早く治るように、可愛い弟におまじない」

「・・・・・・・・・・・」

「小さい頃はよくしてやったろう?」



この大馬鹿者と胸中でつぶやいて、ぼくはシーツを被るとそれきり一言も口を開かなかった。















こいつは、つくづくバカだ。


「可愛い弟」なんてなんの意味もないのに。そんな言葉に意味はないのに。

一番好きと言われなければ意味がない。

「可愛い弟」は欲しくない。一番好きになってもらえないなら、意味がない。



それでも、その仕草1つでぼくはお前に堕ちていく。



そんなぼくに対して「可愛い弟」なんて言って、優しくするこいつをつくづくバカと思う。

そんな彼を見てどうしようもなく愛おしい、ぼくの方こそがずっとバカなのだろうけど。














ポエムチックなものを目指して、挫折・・・・・・また挑戦したいです。

可哀相な三男を目指してみたのですが、むずかしい・・・・・・。

コンプって三男可哀相にすると次男にはユーリがいるのでどこまでも可哀相になる。

三男可哀相なのもまた挑戦します(・・・・・・)。