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注意!:直接描写はありませんが、ちょっとそれに近い感じの描写があるので苦手な方はお引き返しください。





















俺の名前は渋谷有利。
ごく普通の高校生だったのは最近までの話で、ひょんなことから異世界の魔王に就任してしまい、地球学生、異世界魔王という勤労学生だ。
就任してから永世平和主義を唱えてきた俺は再び異世界に呼ばれてみれば、眞魔国は人間の国と開戦寸前になっていて、戦争回避の為に魔剣モルギフを探しにヴァンダーヴィーア島に来たわけだけど・・・・・・。


ロッククライミングみたいな山道で、ただでさえきつい道程を頑張る俺を邪魔する二人の声が・・・!!


「何をするんだ!コンラート、離せ!」

「疲れているだろう?船酔いもまだ治っていないだろう、無理するな」

「うるさい、子供扱いするな!こんな道一人で歩ける!」

「こら、暴れたら落ちるぞ」



「・・・・・・」


さっきからずっとこんな調子だ。
異世界で途方にくれた俺にいつもナイスフォローをくれるコンラッド。
いつのまにか俺の婚約者になってしまって、この旅にも勝手についてきたヴォルフラム。
その二人の会話が、この山登りをより過酷なものにしている。


コンラッドはさっきまでへろへろだったおれをおぶってこのきつい山道登っていたのだけれどまだ他人を抱える余裕があるなんてたいした体力だなぁとか思う気力ももうない。
ただ、脱力感だけが増していく。


この二人の話の内容だけ聴いていると単なるブラコン兄弟のじゃれあいみたいだが、驚くなかれ、今の二人の格好は地球で言えばお姫さま抱っこ。
その前からコンラッドがヴォルフラムに過剰に密着しながら
腰に手を回したり、あちこち触っている というのに二人にとっては当たり前のことらしく、ヴォルフラムにとってはさっきコンラッドに子供扱いされたことのほうがお姫様抱っこされたことより問題らしい。
理解不能だ。


「なー、ヨザックー」

「なんです、へーか?休憩はもうすぐですよー」


あの二人に話し掛けるのは不可能に近いのでもう一人の同行者であり、かつコンラッドの幼なじみらしいヨザックに話し掛ける。


「いや、そーじゃなくて。何なのあの二人」

「いやー、それを俺に聞かないでくださいよ」


何となく疲れた様子でヨザックはため息を吐いた。


「だって、ずーっとあの調子なんだよ、あの二人」

「ずーっとというか・・・俺の知るかぎりあの二人はいつもあんな感じてすよ」

「マジ!?」


一気に疲れが増してきた。これを八十年近く・・・おそるべし。


「うわー、余計に頭痛くなってきた・・・」


コンラッドは基本的にいつもおれをヴォルフより優先させている。さっきのお姫様だっこだっておれのおんぶの後だし。


しかし、なんというかヴォルフラムの時とおれの時は違うんだ。
具体的に言うと、
目つきがあやしいというかスキンシップが激しいというかいやらしいというか。
ヴォルフラムはヴォルフラムでコンラッドの態度には疑問を持っているわけではない。
ただ、おれとコンラッドの間に割ってはいる以外の時はコンラッドに反抗はしてもその行動を咎めるのではなく、ごく当たり前といった風なのだ。


「なー、ヨザック。あの二人ってやっぱりというか、絶対というか」

「ええ、それは昔から100%両思い。相思相愛ですよ」


ちょっとげんなりした口調だった。今までの彼の苦労が忍ばれる。


「しかし、あの二人は自覚がないんですよね。お互いにすれ違い兄弟としか思っていないらしくて」

「・・・それは俺も驚いた」


最初、船旅にヴォルフラムが着いてきたことには驚いたものだったが、その後の二人のイチャつきっぷり 以上にその自覚のなさに驚かされた。
船での出来事を思い出すとおれは自分の感じた驚愕を話さないではいられなかった。


「あの二人さあ・・・」










 

異世界で初めての船旅、しかも豪華客船の旅なんて。
緊張するやら興味津々やらで忙しい俺の目の前にいきなり密航して着いてきたヴォルフラムには驚いた。


しかし、それ以上に俺を驚かせたのは・・・・・・。


「ヴォルフラム!!?どうしてここに?」

「・・・あー、しまった」


驚くおれに、しまったという風のコンラッドの前でいる予定などこれぽっちもなかったヴォルフラムはおれに用意されていた部屋の真ん中で堂々とふんぞり返っていた。


「遅いぞお前たち!何処で二人で何をしていた!」

「遅いぞって・・・」


なんでここにいるんだよ、という前にコンラッドが答える。


「へい・・・・坊っちゃん・・・、たぶん密航して付いてきたのかと」

「密航!!?なんで!?」

「決まっている!僕はユーリのこんやく・・・・・・うえぷっ」


驚く暇もなく、ヴォルフラムはさっきの元気はどこに行ったのかいきなり真っ青になって床にうずくまった。
慌てて声をかける。


「あ、ヴォルフラム!!?いきなりうずくまって、今度はなんだよ」

「へい・・・、いや坊っちゃん。ヴォルフラムは極度に船酔いしやすい体質でして、船に乗るといつもこうで」

「・・・き、気持ち悪・・・・・・吐きそ、うだ」

「うわ、コンラッド!洗面器、洗面器」

「ヴォルフ、いきなり吐くとかえってきついぞ。まずは横になって気分を落ち付けろ」

「あ、そうなの」


なれた様子でコンラッドに少し安心する。
コンラッドはヴォルフラムに近づくと優しく背中をさすった。


「うー」

「ホラ、ちょっとこっちに体を預けて」

「ん・・・」


てきぱきとした看病をするコンラッドにに素直にそれに従うヴォルフラム。「ヴォルフラムが色々言っててもやっぱり兄弟だな」って感じでほほえまし・・・・ん?


「・・・?コ、コンラッド、なんか近づきすぎじゃ?」

「え、そうですか?いつもこんなものですが」

「いつも!?抱き寄せて腰に手を回しながらおでこくっつけたり、ほっぺたくっつけたり、手をつないだりするのが!?」

「まあ、兄弟 なので」

「いや、違うでしょ!それとこれとは」


そんな当たり前な顔でいわれるとどっちが正常な判断なのか混乱する。


「うー、うるさいぞお前たち・・・。あー、あたまいたい」


渦中のヴォルフラムは今の状態に全く異論はなさそうだった。


「うー、コンラート。いつまでもぼくを子供扱いするな・・・。
 だいたいそんなにさすらなくてもぼくはふにゃよいなんて・・・うえ」

「あんまり喋ると余計に酔うぞ」

「うー、ぼくは子供じゃない・・・」


お前も、なんだその反応!!?? いいのか、それで!?
お前、さするっていっても太ももなで回されてるんだぞ!!??

 











「ていう感じでさ」

「そりゃまた、一番よくあるパターンに遭遇しちゃいましたね」

「一番よくあるパターン?あれが?」

「ええ、当たり前にべたべた隊長が触ってるってのが」


ということはあれは珍しい光景じゃないってことか。ますますもって恐ろしい話だ。


「まあ、よく考えれば俺も兄貴に小さい頃はあんな風にされてたこともあるらしいし、コンラッドが過保護なのかなと最初は考えもしたんだけど」

「へえ、俺は兄弟がいないからよくわかりませんがうちの上司もそんなもんなんですかね」


グウェンダルが・・・想像するのはやめよう。


「い、いや!おれだって覚えないくらい小さいときの話だから!あくまで!
第一あんなにくっついてなかったらしいし!あの二人はもういい年だし!」

「陛下ー、あんまり喋ると足元が危ないですよー」


言われた途端に転んだ。地面に叩きつけられる前にヨザックが庇ってくれた。


「わ、悪いヨザック。興奮しすぎた・・・」

「いやいや、わかりますよ陛下の気持ち。
 どうせあの短い船旅でほかにも色々あったんでしょう?あの二人のことだから」


絶対の確信と諦めのこもったため息。おれより遥かにコンラッドとの付き合いの長い分だけ彼の苦労も長いのだろう。ヨザックの人生(魔族だけど)に乾杯。


「しかも、次がまたさぁ・・・・・・」












 

三十分だけでいいから!と護衛なしの豪華客船の探索を渋々コンラッドに「十五分だけですよ」と許可してもらって探検気分でおれは豪華客船のを走り回った。


見るものが何もかも珍しく、結局時間ぎりぎりになってしまった。時間厳守主義なのに。
時間に気づくとおれは慌てて長年鍛えたダッシュで急いだ。
滑り込みセーフでなんとか自分のために用意された豪華新婚さんルームに滑り込む。


「・・・っセーフ!ごめんな、コンラッド。結局時間ギリギリに・・・・・・」


そこで起きている出来事をおれはきっかり十秒間凝視してしまった。


おれを硬直させていたのはいつまにかネグリジェに着替えているヴォルフラムでも、しかもやたらと似合っていることでも、おれの部屋なのにベットの真ん中で大の字になって寝ているいることでもない。


眠っているなすがままのヴォルフラムにコンラッドがキス していることだった。それはもう思いっきり
しかも、凝視してしまったのでコンラッドの手がヴォルフラムの
顎をつかんで口を開かせている ことがわかってしまった。開いた歯と歯の間から何を入れているのか・・・・・・考えちゃダメだ。


何も口をはさめない。というかはさみたくない。
気付かれたら終わりだ。ここから逃げないと・・・でも足が、足が動かないーーー!


固まっているおれの気配にコンラッドは気付いたらしくキスをしたままこっちに目を向けた。
彼は名残惜しそうにヴォルフラムから離れると何事もなかったかのように笑いかけてくる。


「ユーリ、お帰り」

「お、お帰りって・・・・な、なななにをして!」

「ああ、すみません。見苦しいところを見せてしまって」

「見苦しいところって・・・・・・」


涼しい顔をしているコンラッドを見ているとどっちが正常な反応なのか再び混乱する。


「あんた実の弟になにをしてたんだよ!?第一本人の意思を確認せずにキ、キキキスなんてしてさ!!」

「驚かせてしまいましたか?」

「当たり前だろ!!?」


ちょっとキレ気味なおれとは対照的にコンラッドは呑気な様子でヴォルフラムの上に毛布を掛けてやって乱れた髪を手櫛ですいてやるとおれに向き直った。


「さっきヒスクライフ氏に船酔いの薬をもらったんです。部屋に戻ったときはヴォルフは眠っていたのでら口移しで薬を飲ませていたんですよ」


とりあえず、「何を」入れていたかは判明した。しかし、問題はそこじゃない。


「いや、起こせばいいじゃん!!?」


「やっと寝付いたのに起こすのもどうかなと思って、それに船酔いには眠るのが一番いい薬なんですよ、
ヴォルフは寝つきがいいので助かりました」


俺に向き直った名付け親は涼しい顔だった。


「だからって、そんなこと勝手にしちゃいけないって!!」

「そんなこと?」

「だからキスだよ!か、勝手に人の口に・・・」

「え、でもいつものこと ですし」

「いーつーもー!!??」

「ヴォルフが調子が悪いと眠っているとき起こさないように口移しで 薬を飲ませるのはいつものことですが?」

「そ、そんな・・・・」

「坊ちゃんにも兄君がいらっしゃるでしょう?してもらっていませんか?」

「いや、ジョーダン!!!するわけないし!!」

「え、兄弟なのに。もしかして、同じ家に住んでいないとか殆ど会ったことがないとか」

「違うから!一緒に住んでるし、出掛け際に二度寝してる勝利をたたき起こしたし!」

「じゃあ、何でしないんですか?普通するでしょう、兄弟なら。 どんなに仲が悪くても」

「兄弟だからで何もかも説明するなーーー!!」

「うー、うるさいぞ・・・。何を騒いでいるんだ」

「あ、起きちゃったか」

「ああ、ヴォルフ!聞けよ!コンラッドがお前が寝ている間にお前のファースト・・・じゃないかもしれないけどキ、キキ、キスしてて・・・」


天の助けとばかりにおれはヴォルフに訴えた。


しかし、


「何だと!コンラート、お前またぼくを子供扱いしたのか!?いい加減子供の頃の世話を今のぼくにするのはやめろ!!もうぼくはとうに成人したんだぞ、そんな子供みたいに扱うのはやめろ!」


ちょっとちょっと、何でそんな方向性に怒るんだ!?論点が違うだろ!!


「でも、せっかく眠ったからと思って」

「ぼくは子供じゃない、だいたいぼくはお前を兄だとなんて思っていない!いつまでも小さい弟扱いするな!」

「子供だなんて思っていないよ」

「じゃあ、なんで・・・!」


なんだこの会話・・・・おれもうついてけない・・・ていうか。


「ていうか、やっぱりお前ら冗談じゃなくマジなのね・・・・ううう(がくっ)」














「というわけなんだ」

「出ましたね『兄弟だから』」

「あの二人どんなにくっついてても、コンラッドは『兄弟だから』ですますし、ヴォルフは『子供扱い』ですませるし。
 あの二人の常識はどうなっているんだ」

「あの二人に常識なんてないんじゃないですか?しかもうちの上司はあの『兄弟だから』を真に受けて、でもまさかあの二人みたいにすることもできないんで『私は兄らしくないのだろうか・・・』なーんて黄昏れてるし」

「うーわ、可哀想と思うべきなのか真に受けるなというべきなのか微妙ー・・・」

「俺は兄弟持ちの連中があんななっているとこなんざ見たこともないですがね。
ま、あの二人つきあうにあたっての予防接種みたいなものですよ。これ以上のことにはなかなかなりませんから慣れればそれなりに・・・陛下?」

「いや・・・実はすでにこれ以上のものにぶつかっちゃってて・・・」

「まだあるんですか!?」

「そうさ、次こそが最悪だった・・・」















異文化コミュニケーションの差異では片付けられそうにないバカップル兄弟を前にしておれは早くも頭を抱えていた。


この際いろいろ言うことはやめた。
これも個人のつきあいの問題だし思ったより仲が悪くないというか仲が必要以上によいことは悪いことじゃない、はずだ。


必死にそう言い聞かせておれは後ろで繰り広げられている光景を忘れようと、もとい無心になろうとしていた。
何があっても平常心を失わないように。
おれの後ろでは船酔いの薬が切れて調子の悪そうだったヴォルフラムがコンラッドに胃が空のまま薬を飲むと身体に悪いからと軽い食事をとらされていた。
もうこの際 コンラッドがヴォルフラムの頭を膝の上に乗せていることも、コンラッドがヴォルフの額に乗せている手をヴォルフラムがしっかり握っていることも目をつぶることにした。
ヴォルフの口にコンラッドがスプーンで食べ物を運んでいることも無視だ。関わるべきではない。




でも、これだけは心の中で叫ばずにはいられない・・・!






「・・・・ん、んんっ・・」

「ホラ・・・ちゃんと口開けて全部飲み込むんだ」

「ん、うるさ・・・・ちゃんと開けている・・・!・・・・あ」

「ホラ、ちゃんと開けないからついちゃった。口の周りが真っ白」

「の、飲み込むときにむせただけだ・・・ちゃんと口は開けていたぞ!?」

「飲み込む前にちゃんと咥えないからだ。ホラ、今度はちゃんとしっかり咥えて全部舐めとってキレイにして」

「う・・・わかった。・・・・あ・・・・んぐ」

「ん・・・今度は上手に飲み込めたな・・・」

 




何で食べさせてるのがヨーグルトなんだよっ!!!!?????


確かに、食欲のない時にヨーグルトはいいけどさ。胃に優しいし、腹持ちもする。
でも、
コンラッドがヴォルフラムの頭を膝の上に乗せてヨーグルトをちょっと無理矢理気味に食べさせる・・・なぜかものすごくまずい光景のような気がする。
特に何が悪いわけでもないのにいけないことのような気がどうしてもしてしまう。
この場におれがいるのってまずいよなという気にさせられる。


(何でおれがこんな目に・・・)


いっそ食べさせ終わるまで出て行こうかと考えたが護衛役のコンラッドは俺を目の届かないところへは行かしてくれない。つまり、逃げられない。
絶望して天を仰いで見ても天井があるだけで、がくっと今度は床を見る。
と、首を振ったせいで不意に一瞬ベッドに腰掛けたコンラッドと膝の上のヴォルフが目に入ってしまった。


しまったと思ったがもう遅い。


ヴォルフの口の周りについたヨーグルトをコンラッドが指でとってヴォルフに食べさせている。
というかコンラッドが白いものをつけた
指をヴォルフラムに咥えさせているところをがっつりおれの目はとらえてしまった。


がくりとおれは力尽きてテーブルに突っ伏した。
もう何か考える気力もない。
ただ、おれの耳に二人の会話だけがやたらとはっきり聞こえてくる。






「まだ付いてるぞ、口の周りに沢山」

「ん、わかっている・・・こんなもの拭けばいいじゃないか」

「駄目だよ、もったいない。食べ物を無駄にしちゃ駄目だろう。ホラ、ちゃんと先まで舐めて」

「ん、んくっ・・・子供扱いするな。・・・・しかしお前といるといらいらする!」

「それは悪かったな、おれはヴォルフの傍にいると嬉しいけど」

「お前といると調子が悪くなるっ!胸は急に苦しくなるしそわそわするし顔から熱が出るし!!」

「そうだな、俺もヴォルフといると身体が熱くなるような、胸が締め付けられるような」





聞いてない、聞いてない、おれは何も聞いてない。





「その上っ!お前から離れるとなんかまた違う感じで胸が痛くなるし、気分は落ち込むし、涙は出てくるしっ!
 最悪だ!全く、お前といるとろくなことがない!!」

「奇遇だな、おれもヴォルフから離れるとこう胸に穴が開いたような気分に」

「全くとんだ災難だ!!
お前がいつまでもぼくをこういう風にするからぼくはすっかりうんざりして他の奴が少し触るだけで寒気がするよ うになったんだぞ!お前だけだ、こんなことをぼくにするのは!」

「それは悪かったな、俺もヴォルフの世話をずっとしてたからお前以外にこんな風に誰も触ったことはないよ。
なぜかヴォルフの他の誰にも触る気にもならないし」





聞こえない、聞こえない、おれには何も聞こえてないですから・・・・!






「ふん、ぼくには迷惑な話だ!!」

「それはすまなかったな・・・・さあ少しだよ。口開けて」

「(プイッ)・・・もういらない」

「わがまま言うなよ、あとほんのこれだけだから。ホラ・・・」

「っ・・・!離せ、その手をはな・・・あ」

「ヴォルフ・・・じっとしてて」

「あ・・・ちょ・・・・やだっ」

「あと少しで終わるから、我慢して・・・」

「ん・・・や、やめ・・・・コンラー、ト・・・」

「ヴォルフ・・・ホラ、いい子だから・・・」

「子供扱いするな・・・ん・・・」

「ヴォルフを子供だなんて・・・思ってないよ」

「・・・・ん・・・・んんっ・・・!」

「ヴォルフ・・・・もう、終わるから。もう少し・・・」

「コン、ラー・・・・ト・・・・」

「ヴォルフ・・・」












・・・・ぶちっ。



「い・い・か・げ・ん・に・し・ろ・お・ま・え・らーーーーーーーーー!!」


・・・・・・・・・この後、最後の一口のヨーグルトをだだをこねるヴォルフの口を開かせて無理矢理食べさせていたコンラッドがおれをなだめて正気に返らせるまで一時間近くかかったらしい。






















「・・・・・・・・・」

「・・・というわけでさ」

「・・・陛下」

「そんな哀れみのこもった目で見るのはやめてくれ・・・」


無言で肩に手を置かれても脱力感が増すだけなんだから。
ため息をついておれは前方で痴話げんかを繰り返している二人を見た。


「ああ、またやってるあの二人。
何つーかさどうにかなんなのかな、おれには無理だけどさ」

「陛下、俺も今まで八方手を尽くして隊長に自分の気持ちを自覚させようとしてきました。でも駄目なんです。兄弟愛だって聞かないんです。ヴォルフラム閣下なんて隊長の話しただけで怒るし、手の尽くしようもありません」

「うう、なんか絶望感さらにが増したような・・・・」

「まあ、ここは犬に噛まれたとでも思って諦めた方が」

「マージーかーよー・・・」


がっくりとうなだれる。
犬なら噛まれたら噛まれた傷を治療すれば済む話だけど、こっちには特に治療法はなさそうだ。
うなだれたおれの耳にはまた懲りずに痴話げんかしてる二人の声が聞こえてくる。





「どうせ、お前はぼくのことを馬鹿にしているんだろう!!だからこんな風に子供と同じに扱って」

「違うよ、馬鹿になんしてない」

「じゃあ、そんなにぼくが嫌いか・・・」

「そんな、どうして」

「じゃあ、何で半人前扱いするんだ!
 半人前だから、ぼくが近くにいるのがイヤだからさっさと帰れといいたいんだろう!!
 ぼくが傍にいることがイヤなんだろう、コンラート!!」

「そんなわけないだろう!!」

「・・・っ(びくっ)」

「あ・・・悪かった、怒鳴ったりして・・・。でも、俺がヴォルフを嫌いなわけがないだろう。
 ・・・俺を嫌っているのは、お前の方じゃないか」

「そ、それは・・・・・・っもういい!下ろせ!!」

「こら、暴れるな!危ないぞ!」

「うるさい、ぼくはお前なんて大嫌いだ!!」







いや、絶対大好きだろ


全く、周りの気も知らないであれだけお互いに『好きだ』と大声で言い合えるものだ。
オブラードにつつんでいる自覚すらないのかもしれないが直接言わない分その思いの強さが余計にストレートに伝わってくる。


お互いに好き会っていることに気がついてないのは二人だけだ。
お互いに気づいてないけど、相手の気持ちがどうあれ誰よりも相手を思っている。
つまりは・・・


(あの二人って・・・)


ふと思いついた考え。ひらめきみたいなものかもしれない。でもきっと真実だ。


(・・・あ、そうか)


そう思いついたらなぜかおれの頭を悩ませていた頭痛がスーと軽くなっていった。
いいじゃないか、それでも。


そう、思えるとなぜか笑いがこみ上げてくる。堪えられずにヨザックに寄りかかってしまった。


「陛下、何笑ってるんですか?」

「いや、急にあの二人はあれでいい気がしてきてさ」

「そりゃ、何でまた急にそう思ったんですか?」


だってさ、100%お互いのことしか見えてないのに、100%これは恋じゃないと思いこんでて、100%すれ違っていても変わらずに想い合っているんなんてそれはもう運命としか言いようがないじゃないか。


「そりゃ、あの二人が他の誰よりお似合いだからさ」

「ふーん、それには同意見ですね・・・でもヴォルフラム閣下の婚約者は陛下ですよ」

「うーん、そう言えばそうだった。・・・まあきっと何とかなるんじゃない。ホラ、あれは異文化コミュニケーションの誤解ってやつだし。それにさ・・・」


だって、八十年もお互いに100%自分の気持ちに無自覚なまま続いているんだぜ?
多少の試練は付き物だろ。
二人ともとても鈍そうなので時間はまだまだかかるだろうけれど。
でも、それでも


「大丈夫。きっといつかは100%のハッピーエンドを迎えられるって」

「いつになることやら・・・それまでずーっと付き合わされるってことですね」

「ま、二人の幸せのために我慢ってことで」


ため息をついているヨザックだって本当のところは同意見なのだろう。
目を合わせて共犯者の笑顔を浮かべてやる。
しばらくして、ヨザックが俺と同じ笑い返すのを確認すると俺は未だに痴話げんかをしている自覚ゼロのバカップルを追いかけた。





























コンプで甘甘をと書いてみたら自覚がない方がスキンシップが激しいことが判明しました(私だけか?)。

どんどんべたべたしてくれます、自覚がなければ。さすがにこれは素ではできまい・・・次男ならできるかな?

あと、キスハグでどこまで書けるか試してみたかったんです(何を?)。

でも、ヨーグルトはやり過ぎでした・・・・下品ですみません。

あと、この時ユーリとヨザックはそんなに親しくないのになじみきっちゃててすみません。

この時は同じ苦難?を理解しているもの同士だからってことで・・・。