日記から再録













「 婚約届け騒動 」












「ああーもうヴォルフのやつ〜。「日本の法律では男子は16歳じゃ結婚できないんだよって言ってやっと婚姻届のことを諦めたかと思ったら、今度は何度も何度も「婚姻届にサインできないなら婚約届にサインしろ」ってうるさくて、おれもうやだ〜」


「あらあら〜ん、陛下ったら真面目なのねえ。でもそれだけうちの息子との婚姻を真剣に考えてくれるなんて・・・嬉しいけど我が息子ながらちょっと妬けちゃうわ〜」


「イヤ、ツェリ様、そういう意味じゃなくて・・・」


「全くヴォルフラムときたら!!あのような婚約など無効だというのにことあるごとに婚約者だと陛下を困らせて!!そ、その上、婚姻届など持ち出して・・・!私の、私の陛下に対して・・・!!!」


「まあまあ、ギュンター。落ち着かないとお茶会が汁会になってしまいそうだぞ。まあ、婚姻届ならともかく婚約届くらいなら良いじゃないか、なあグウェン?」


「何故、私に振る・・・まあ、それくらいなら良いのではないか」


「グウェン、真面目なあんたまで何いってんだよ。婚姻にしろ婚約にしろそんな簡単に・・・」


「あら?でも私もそういえばヴォルフラムと婚約届を昔は書いたわねぇ」


「ええ!!?」


「たしかヴォルフラムが成人前に「これで母上とずっといっしょなんですね!!」と嬉しそうに言うものだからついつい3枚くらい書いたような気が・・・」


「こ、子供の頃の話ですか・・・イヤそれにしても届け出の書類にサインするのはどうかな・・・」


「確か、グウェンも書いたわよね。婚姻届?」


「う・・・まあ、十枚ほど」


「ええ!?あんたもかよ!!しかも十枚!!?」


「仕方がないではないか・・・断ったらあんなに涙を目にためて「あにうえはぼくがおきらいですか?」といわれたら」


「だからってなあ・・・」


「あ、そうだ、ギュンターも書いたんじゃなかったか?」


「えええーーーーーーー!!??」


「そ、そんなことを陛下の前でばらさないでください、コンラート!」


「まあ、事実だし」


「あれはヴォルフラムにサインの見本を見せただけです!!よく見たらそれがたまたま婚約届だっただけです!全くどこからあんなに大量に」


「ギュ、ギュンターまで・・・小さい頃のヴォルフって一体・・・」


「まあ、最初は婚姻届に仲のいい人をサインさせたがっていたようです。「ずっといっしょにいられますように」というささやかな願いの元に。まあ、幸い俺が最初にその申し出受けたので「婚姻届より先に婚約届を書かないとね」とそれは阻止したんですが」


「・・・元凶はあんたかよ」


「いやだな元凶だなんて。まあ、俺に真っ先に言ってくれたのが嬉しくてついつい100枚くらい書きましたね・・・今でも全部とってありますし」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「あら、コンラート良いわね。私も息子の成長記録にとっておこうと思ったのだけれども、ついつい殿方のお手紙の中に紛れ込ませてなくしてしまって」


「へえ、それは残念ですね。・・・でも、グウェンはとってあるんでしょう」


「・・・い、いや、その」


「私の婚約届けの行方は分かりませんね・・・ヴォルフラムが持って行ってしまったから」


「ああ、それなら俺のところに持ってきて「あにうえ!これでしろじゅうのものたちにかいてもらいました。これでずっといっしょです!」っていってたよ。ギュンターのやつはまだとってあるよ」


「何ですって!!?そんなものさっさと捨ててください!私は陛下だけのものなのに〜〜〜!!!」


「まあまあ、とっておいたら面白い・・・もとい良い思い出になるかと」


「まあ、コンラートったら、思い出をとっておくのが上手ねえ」


「いや、いざとなれば自分のやつを届け出そうかと思っていただけですよ。その時の為には他の婚約届の行方が分かっていた方が確実ですから」


「あら〜冗談が冗談に聞こえないわよ〜」


「イヤだな、冗談なんかじゃないのに」


「・・・・・・・・・・」



仲良く、婚約届けの話で盛り上がるみんなを見ていて

「城中で書いてないのはおれだけかよ」とぼやくと、婚約届を書いてない自分が仲間はずれなような気がしてユーリはちょっとだけサインしなかったことを後悔してテーブルに突っ伏した。






やっぱり次男は黒いなあ。


















「 愛の言葉 」











「なあ、ヴォルフ、俺には言わないのか?」


「は?何の話だ」


「だからこう色々あって俺とお前はこうして愛し合っているというのに、お前は俺には言ってないじゃないか」


「・・・・・・っそ、そんな気軽に「愛し合っている」とか言うな!だから何のことだ。話が見えない」


「だって陛下にさんざん言ってたじゃないか、俺には言ってくれないのか?」


「だから!何のことだ!!?」


「分からない?・・・陛下にはさんざん言ってのに?」


「・・・・・・ど、どの台詞だ?」


「一番よく言って言葉だよ、多分」



(な、何だ?
・・・・・・「好き」は・・・かなり前だけど一回だけ言ったし・・・・・・。
「愛してる」とはユーリには言ったことはないし。
「忠誠を誓ってやる」?・・・・・・それはないか・・・・・何なんだ?)



「『へなちょこ』」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」


「『へなちょこ』って俺には言ってくれないのか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・何を言ってるんだお前は!それは、まあ、言ってみれば罵るための言葉だぞ!!?」


「だってお前が陛下に言う『へなちょこ』はものすごく陛下への愛がこもっていたじゃないか。まあ、陛下への愛と恋愛感情は別としても俺は陛下が羨ましかったんだよ。いつかもしお前に『へなちょこ』と言われたらいいなあと思うほどに」


「・・・・・・お前はバカか?」


「酷いな、真剣に言っているのに・・・・・・で言ってくれないのか?」


「言わない・・・う。そんな顔するな。分かった、呼んでやる」


「本当か?嬉しいな・・・じゃ言ってみて」


「いいかよく聞け、コンラートお前と来たら本当に」


「お前と来たら?」




へたれだ」




「・・・・・・は?」


「聞こえなかったのか、へたれと言ったんだ」


「・・・ええ!?そんな、それはちょっとと違うんじゃないか!?」


「知るか。ユーリは確かに『へなちょこ』だがお前は『へたれ』だ。ありのままのぼくの意見を言っただけだ」


「・・・・・・ヴォルフ〜〜〜」


「うるさい!へたれと言ったらへたれだ!」














ユーリへの愛とコンラートへの愛は違うんですよ、コンラートさん。





















「 名前 」








「全く!この花は「麗しのヴォルフラム」だ!人の花のことを「わがまま」だの、つ、「つんでれ」?だの好き勝手に呼ぶな!!それだったらコンラートの花も「嘘つきのコンラート」や「根性悪のコンラート」で十分だ!!」


「えー?それはないだろ。
それを言うなら「さわやかスマイルのコンラッド」とか「女房役のコンラッド」とか・・・・」


「女房だとぉぉぉぉぉっっ!!!!????」


「うわ、ちょっと、い、今のナシ!!よく考えればバッテリーの女房役はおれ・・・」


「何だとぉぉぉぉぉぉ!!この浮気ものぉぉぉぉぉ!!」


「タ、タンマ!タンマ!今のも!今のもナシ!!だから首を絞めるな・・・おい村田!ヨザック!見てないで助けろよ!!」


「いやー、ほほえましい光景だね。ヨザック」


「ええ、でも隊長はさわやかスマイルとは違いますね。せいぜい「胡散臭い笑顔の隊長」とか」


「あ、いいねそれ!「腹黒のウェラー卿」とか」


「お、猊下もわかってるじゃないですか!「人の話を聞かない部下泣かせの隊長」とか」


「「へたれのウェラー卿」とか」


「「過保護さは王佐以上の隊長」とか」


「「カルガモという名のストーカー何じゃないの?のウェラー卿」とか」


「「へそ曲がりの隊長」とか」


「おいおいおいおい!!お前らそれは悪口だろ!?本人のいないところで言うなんて最低だぞ!!?それにそんなの言いがかりだろ!」


「そうだ!!兄上をバカにするんじゃ・・・・・・」




「「「兄上!!??」」」





「・・・・・・・・・・・・ち、ちがうっ!!ぼくはあいつのことを兄何て呼んでない!」


「いや今、はっきり呼んだろ」


「うん、はっきり聞こえたね」


「聞こえましたね」


「違う違う違う違うーーーーーーーーーーーーーー!!」










コンプにせずにはいられません・・・・。

私的に「ツッコミ時々大ボケのコンラート」に一票。