日記から再録
「 はめるのはどっち? 」
ヴァン・ダー・ヴィーア観光旅行・ショッピング班にて
「見ろユーリ!この名物「ヴァン・ダー・ヴィーアの熱い恋人たち」は赤い菓子と聞いていたが今だけ限定で白いものや青いものもあるらしい、これも城の者全員分・・・・・・」
「マジ、勘弁してくれよ〜。ヴォルフ、一体いくつ買えば気がすむんだよ?さっきからあっちの土産物屋こっちの土産物屋でさんざん見比べたと思ったら、今度は色違いでそんなに沢山も買ったらコンラッドもおれももう持ちきれないって」
「ユーリ、心配しなくても俺は平気ですよ。まあ既に両手は完全にふさがってますが、肩や頭の上にのせたりすればまだまだいけますよ。そんなに遠慮してないでユーリももっと沢山買えばいいのに」
「それじゃ曲芸じゃ・・・・・・そんなこと言われても、おれはもう十分買ったし・・・・・・ああもうこんなにヴォルフの買い物が長いと知っていれば、村田たちとゴルフでも何でも行ったのに」
「何だとユーリ。今度の休みにはグレタも帰ってくるんだ、父親として娘に相応しいと思う土産物探しにも付き合えないというか?婚約者としてぼくは恥ずかしいぞ」
「おれはもうグレタへのお土産は星の砂みたいなのとか貝殻のネックレスとか最初に買ったの。そんなこと言ってヴォルフはまだじゃん」
「そういえば、お前こそ真っ先にグレタへの土産を買いそうなのにまだ手をつけてないな、どうしたんだ?」
「別に、最後にじっくり選んで買おうと思っていただけだ。城の者たちへの土産も大事だが愛娘への土産はじっくり選びたいからな。愛情は出し惜しみするものではないからな」
「じゃあ、せめて一回宿に帰ろうよ〜。朝に出発したのに昼飯も食わないでもうおやつタイムになってるし、コンラッドもおれももう持てないって。時間かけたいなら出直してもいいだろ?」
「う、仕方ないな・・・でも今日中にもう一回くるぞ。明日は回遊型大型哺乳類見学で明後日は素潜りで海洋生物見学指導者付きでその次は・・・」
「うう、満喫するつもりだよ、こいつ・・・・・・」
「まあまあ、陛下ももっと楽しめばいいじゃないですか。サラレギー陛下のよからぬ思惑があったにせよ、ここはいい観光地ですからこちらにいるときいつも城ばかりに閉じこもっているのももったいないですよ」
「うーん、それもそうかな・・・・・・確かに指は痛かったけど、こんな機会でもないと観光地なんて来ないなー・・・・・・って」
「?何ですか?」
「陛下って呼ぶな名付け親」
「ああ・・・・・・すいません、ユーリ」
「こら、そこ!ぼくを差し置いていちゃつくな!だいたいコンラート!ユーリはただでさえ城にいることが少ないのに余計なことを言うな」
「何だよ〜自分はそれだけ満喫してるくせに」
「まあ、観光ならいいじゃないか。さ、陛下陛下の分の荷物はおれが持ちますよ。ほら、手に持っている荷物を貸してください」」
「こら、コンラート!どさくさに紛れてユーリの手に触ろうとするな!油断も隙もない!・・・・・・ああもう、おいユーリ!」
「何だよ、荷物持ってくれそうになっただけで・・・・・・何指さしてんの?」
「最後にあれを買う。お前も買え」
「は?何言って・・・・・・何々これは今月の限定品です?」
「御利益バッチリ、ヴァン・ダー・ヴィーアの恋人たちの生き霊があなたとあなたの恋人が離れがたくなるように呪いをかけてくれます。ペアリング、今ならペンダント付き・・・・・・」
「ユーリは本当に浮気性だからな。これをつけて少しはぼくへの貞節が身につくといいのだが」
「これ呪いの指輪じゃん!!?お、おれはもう絶対指輪なんてはめないって言ってたのに・・・・・・呪いの指輪はサラのでもう一生見たくないくらい十分だったのに〜」
「しかし、これは変わった品だな。何というか、安っぽいような、禍々しいような・・・・・あ、ヴォルフ!?」
「ほら、ぼくははめたぞ。お前も早くはめろ」
「ええ!?そんな簡単に呪いの品をつけるなよ!?しかもまだ金払ってないってのに・・・」
「いちいち、けちくさいぞ、ユーリ。土産物屋で売っているものだからそんな大した効力はないだろう。だから早くしろ」
「・・・・・・い、いやだ〜〜〜〜〜!呪いの指輪はもう二度と見たくもないし、ましてやはめたくもない〜〜〜〜〜・・・・・・」
「待て、ヴォルフ。婚約者であると同時にお前はユーリの臣下だろう?大したことがなさそうとしてもそんな呪われているものを陛下につけさせようとするなんて臣下失格だぞ」
「・・・・・・う」
「そうだよ、おれもう呪いの指輪なんて沢山だって」
「・・・・・・・う、分かった。それじゃこれはいらないから外す・・・・・・ってコンラート?」
「まあまあ、一度はめたものを返すのは行儀が悪いよヴォルフ。ここは陛下の代わりに俺が対のなってる指輪をはめるってことで」
「何でそーなる!?」
「だってせっかく見つけた面白そうな品なんだから試してみるのも面白うそうじゃないか。陛下には危険だから俺が代わりに・・・・・・」
「おい、コンラッド。あんたこれが目的だったんじゃ・・・?」
「え?何のことですか?観光ガイドブックにも載っていないような穴場情報なんて、俺は知りませんよ」
「知ってんじゃねーか!・・・・・・ヴォルフ、ペアリング貸して。はめるから」
「は?でもさっきは呪われた指輪はイヤだからって・・・・・」
「いいから、貸して!早くしないとコンラッドが・・・・・・!」
「ユーリ、さっきはあんなに嫌がっていたのに急に意思変更なんてずるいですよ。主君の無事の祈る臣下の心遣いをくんでください」
「そんな殊勝なこと言いながら指輪をとろうとするなー!ダメだ!これは俺がはめるんだ!!コンラッドには渡せない!」
「ユーリ・・・・・・そんなに呪いの指輪を気軽にはめてはいけませんよ。さあ、俺に貸してくださいね」
「ダメダメ、絶対渡さないからな!」
「そんな聞き分けのないこと言ってないで、弟と末永く仲良くありたい兄の気持ちを察してください」
「あんたの気持ちは兄とかじゃないだろ、絶対ダメ!・・・・・・って言いながらこっそり指輪をとろうとするなー!」
「 俺 が は め る ん で す 」
「 い や 、 お れ が は め る ん だ 」
「・・・・・・・・・・!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」
「ど、どうしたんだ2人とも・・・・・・?」
ゲーム「はじマりの旅」サントラに付いてたドラマCDネタ。
次男がはめようとしたとたん、三男死守にかかるユーリが好きです。
「もしも、惚れ薬を飲んで三男を見ちゃったら・・・」
ユーリの場合
「うわああああああーーーーーーー!!」
「どうしたんだ、ユーリ?ぼくの顔を見た途端叫んだりして・・・」
「だってだってだって、お、おれさっきこの薬を」
「薬?何だそれは、一体何の薬だ?」
「飲んじゃって、それで真っ先にお前を見たのに・・・」
「・・・・・・・?なんだ、ぼくの顔に何かついているのか?」
「・・・・・・そ、れなのに・・・・・・なんで何ともないんだーーーーー!!??」
コンラートの場合
「・・・・・・(じぃっ)」
「何だ、人の顔をまじまじと見たりして」
「いや、さっきアニシナに惚れ薬を飲まされてしまってね。
飲んで一番最初に見たものに恋をするという薬なんだが・・・」
「!!??なんだと!?ま、まさか、その薬を飲んで真っ先にぼくを・・・!?」
「うん、まあそうだけど」
「なんてことだ・・・お、おい!近づくな!今ギーゼラを読んできてやるから、そこで待って・・・何で近づく!?」
「うーん、おかしいな(ぎゅう)」
「放せー!!正気に戻れコンラート、薬を飲んだと分かっているなら血迷ってないで、大人しく治療を受けろ!早まるな!!」
「おかしいな、やっぱりさっきと何も変わらないんだけど・・・?」
グウェンダルの場合
「お、おい!」
「?はい、兄上。どうかなさいましたか?」
「い、いや、さっきから、何か・・・」
「?・・・何か起きたんですか?」
「う・・・・・・・・・・・・ヴォ、ヴォルフラム!!」
「は、はい!!」
「これをやる・・・・・・何も言わずに受け取ってくれ」
「え・・・あみぐるみですか?しかし、これはずいぶん古いような」
「そ、それは私が初めて作ったもので・・・・・・(ぽそぽそ)。
だいたい、それもこれもアニシナが・・・・・・(ぽしょぽしょ)」
「・・・よく分かりませんが、兄上がぼくにくださるものなら大事にします。
ありがとうございます、兄上(にっこり)」
「うう・・・・・・そ、そんな目で、私を見、るな・・・・・・」
「え、兄上何か仰いましたか、お顔が真っ赤ですが・・・?
・・・・・・兄上!?どうしてそんな急に走り出して・・・!?
あ、アニシナが・・・兄上ーーーーーー!?」
ギュンターの場合
「ぶぼへぇっ!!」
「ぎゃあああああああああ!?
し、汁がこんなにかかって・・・。 何をするんだギュンター!ぼくはおかげで汁まみれだ!」
「べ、べへえ・・・う、うるさいですよ。私だってアニシナにあんな薬を飲まされなければ・・・こんなわがままプーに、一生の不覚です!!」
「誰がプーだ!うう、何かぐっしょりする・・・」
「こんなプーが、まさか陛下に見えるなんて・・・陛下すいません。私は陛下への曇りなき心を汚してしまったかもしれません・・・」
「汚れたのはこっちだ!ああ、汁が、汁が〜〜〜(泣)」
陛下と次男の反応はお約束。
長男は純情に、王佐はあくまで陛下一筋。
「 花束 」
魔王ツェツィーリエの庭園は今日も花を咲き誇らせていた。
その端の方を魔王の次男であるコンラートはちょっと疲れて歩いていた。両手には沢山の花。それだけではなく、頭や袖にも花がいくつか差し込まれている。
やれやれと花たちを困ったように見下ろすと、騒がしくも可愛らしい声がコンラートの耳に届いた。
「ちっちゃいあにうえ〜〜〜!」
「ん?どうしたんだ、ヴォルフ?」
コンラートは足を止めると、花のような笑顔で駆け寄ってくる弟のヴォルフラムに振り返った。両手には沢山の花を抱えていて、足は力一杯動いている。
「ヴォルフ、それじゃ転ぶよ。待ってるからもっとゆっくり・・・」
「やだ!待っててすぐ行くから!」
たしなめる兄の声にヴォルフラムは必死に走りながらもぷうと頬をふくらませた。すぐじゃないといけないんんだ。一刻も早く、コンラートの側に行って、そして・・・・・・
と、視界が急に地面に変わった・・・・・・!!危ない!コンラートの言うとおり転んでしまった・・・!
「・・・・・?」
いつまでたっても地面との激突の衝撃のない。ヴォルフラムはぎゅっと閉じていた目を恐る恐る開くと心配そうなコンラートが青空を背にしてヴォルフラムを見下ろしていた。
「ああもう、だから危ないって言ったのに。間に合って良かった」
どうやらコンラートが助けてくれたらしい。結局コンラートの言うとおり転んでしまったヴォルフラムは少し申し訳なくなり小さな声で「・・・・・・ごめんなさい」といった。
珍しく素直に謝る弟にコンラートは目をゆるめた。嬉しそうなその顔にヴォルフラムは少し
(ぼくが転んだから、ちっちゃいあにうえすぐに側に来てくれた)
とちょっとだけ不埒なことを喜んだ。転んだことを心配して助けてもっらったことも嬉しいし、走って近づくよりも転んでコンラートがすぐ来てくれたことで結果的に早く側に行けたのが嬉しい。言ったら、あにうえ怒るだろうけど。
しかし、コンラートの次の言葉でヴォルフラムの喜びはどこかへいってしまった。
「いいよ、怪我がなくて良かった。でも、ヴォルフの持っていた花がちらばちゃったみたいだけど」
「ええ!?」
そんな!自分の手を見下ろすが、確かにさっきまであった花たちがない。慌てて周囲を見回すが、花が咲き誇る庭園ではもうどこにあるか分からない。
「そんな〜・・・・・・あにうえにあげようと思ったのに〜」
「俺に?ヴォルフラムが花を?」
「だって・・・あにうえみんなから花を。みんなばっかり・・・・・・」
純血魔族派からは嫌われているコンラートだったが内面は誰よりも母に似たのか種族問わず女性からは恋い焦がれられている。今日のように母が自分の庭園で仲の良いものたちだけでお茶会を開くとこぞってコンラートは女性に囲まれていた。今日のように花が沢山咲いている日なら「受け取ってください」と本気からからかい混じりのものまで花を差し出されるという事態になり、少し疲れたコンラートは沢山の花に苦笑しつつも休憩も兼ねて人気のない庭園の片隅を歩いていたわけなのだが。
「花なら、お前もいっぱいもみんなからもらえるよ。今日はやけに大人しく隅の方にいたけど、今からでも戻れば、きっとみんなから沢山花を・・・」
「ちがうよ!ぼくは、ち、ちっちゃいあにうえに花をあげたいの!それなのにみんなばっかり・・・」
徐々に消え入りそうな声になっていく、ヴォルフラムの目には涙がたまっていた。
いつも、自分が一番側にいるはずの「ちっちゃいあにうえ」は今日は沢山のひとに囲まれて近づくことも出来なかった。その上、「私の気持ちです」など言われて花を受け取るコンラートを見てヴォルフラムは急に焦った。
ぼくも花を贈らないと・・・誰より一番ぼくがあにうえを大好きだって・・・・・・。
「だから・・・・・・冠を作って持ってきたの。早くあにうえにあげたくて・・・」
ただの花では駄目だと思った。冠の編み目1つ1つに「大好き」という想いがこもるように作ったそれは今までで一番いい出来で、これならと思って真っ先に届けたかったのに。
それなのに。
「なのに〜〜・・・ひっく、ううう〜〜」
「ああ、ヴォルフ泣かないで・・・・・・ありがとう、気持ちだけでも嬉しいよ」
「ひっく、だってだって・・・・・・」
わーんと結局ヴォルフラムは泣き出した。よしよしと慰めてくれるコンラートの腕の中でそれならもう絶対どこへも行かせまいと必死でコンラートの服を掴んで、その胸に泣き顔をうずめて。
この想いが、伝えられなかったらせめて誰よりも側にいたい。
判明。
幼少なら、プコンはアリです!(え)