お題47 三角関係
「・・・はぁー」
「あ、このお茶おいしいねえ」
「はあー」
「お、こっちのスコーンみたいなのと相性いいな。そっちも試してみなよ」
「はぁー・・・」
「・・・・・・渋谷ー、さっきから何溜め息ばっかりついてるんだい?
恋する女子以外の溜め息は聞いていていい気分じゃないよー」
「・・・・・・男女差別反対」
「フェミニストの渋谷がそんなこと言うとはね」
「フェミニストの意味は男女平等主義者ですー」
「おや、今日は博学だねぇ。おばかたんなゆーりたんが」
「お前お袋からおれの過去の呼び名を聞き出すのは止め・・・・・・て、おばかたん!?実の親からそんな」
「知らないほうがいい過去もあるんだねぇー」
「うわーなんかショック・・・・・・はぁー」
「なんだい、渋谷。ふりだしに戻って溜め息ついて」
「誰のせいだよ」
「ところで男女差別反対ってことは恋するの部分は正解なのかい」
「うー・・・・・・そーなのかなぁ」
「ええ!?」
「はぁー・・・・・・」
「ちょっと、渋谷!?溜め息なんてついてないでどういう事か教えてよ!」
「な、何だよ。そんなに慌てて」
「親友に好きな子がいると聞いて落ち着いてなんていられないよ!」
「はぁ?好きな子がいるなんていってないだろ」
「とぼけないでよ、ほーら白状しなさい」
「いや、その、別に好きな子ってワケじゃ・・・」
「大丈夫、ぼくは口が堅いから。誰誰、誰なの?」
「えーと、その」
「シーブーヤ、もったいぶらないでよ。早く早く」
「・・・村田、お前すごく楽しんでるだろ」
「人聞きが悪いなぁ、まるでぼくが親友のスキャンダルを楽しむようなヒドイやつにみたいに」
「みたいじゃなくてそうなんだろ」
「まま、硬い事言わないで。つるっと話してよ、つるっと」
「・・・・・・誰にも言わないか?」
「心配しないで僕の口の硬さは知ってるだろ」
「・・・・・・」
「シーブーヤ、大丈夫だから」
「おれさぁ・・・」
「うんうん」
「おれって・・・・・・ヴォルフラムが好きだったのかな」
しーん・・・・・・
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・な、何だよ黙りこくって」
「・・・・・・渋谷」
「・・・なに」
「失恋はつらいけど自棄になっちゃダメだ!」
「は?」
「いつも当たり前のように近くにいる可愛い子にある日彼氏ができてしまう・・・。あの子はただの友達だった・・・それなのに、この胸に吹くすきま風は何?そうか気が付かなかったおれはあの子の事が・・・!」
「勝手に話を飛躍させるな!」
「渋谷、甘酸っぱい初恋には失恋がつきものなんだ。だから自棄を起こしちゃダメだよ」
「うう、両肩に手を掛けられてそんな真剣な眼で説得されるとほだされそう ・・・・・・ってなんだよ!
村田、お前何勘違いしてるんだ、おれは何も自棄になってなんかないぞ?」
「えー。婚約者を奪われた嫉妬に我を失って魔王の権力使ってウェラー卿からフォンビーレフェルト卿を無理矢理奪い返すんじゃないのー?」
「んなわけあるか、何でそーなるんだよ!そもそも何で残念そうなんだよ!」
「ちっ・・・ウェラー卿め。悪運の強い・・・・・」
「おい!?村田やっぱりお前、影でコンラッドをいじめて・・・!?」
「人聞き悪いなー、まあほら座って座って。何でそんなこと思ったのさ」
「もともと座ってるっての・・・何でって、そりゃ・・・」
「さあさあ、つるっと、何もかも」
「そ、その・・・・・・コンラッドとヴォルフがなんだかんだで付き合ってるんで、婚約も解消予定だし、その、もうおれのベッドにもグレタが来たとき以外は来ないし、なんか調子狂うし・・・ちょっと寂しい・・・ってなにいってんだおれ!!?」
「あー、典型的症状だね」
「男同士だけど、ヴォルフは女の子よりも可愛く見えるときもあるし、おれもいつもあいつに助けられてるし、か、可愛いとか抱きしめたいとか世界で一番好きとか思うことも、実は・・・全く、ないわけじゃ、なかったし・・・・・・うわあああああ、なにいってんだおれ!!?」
「恋の病だねー(可愛いとは誰もが思っているともうけど)」
「それに、ヴォルフもいつもは同じだけど、コンラッドといるときなんか、こう・・・」
「恋する美少年ぽくなってるよねー」
「そ、そうだよ、な・・・・・・」
「・・・・・・寂しい?」
「!?べ、別に寂しい・・・て程・・・なの、かな・・・やっぱり」
「んー?渋谷にもまだチャンスはあると思うよ」
「え!?・・・チャ、チャンスって何の?」
「そもそも、ぼくはウェラー卿は卑怯だって常々思っていたんだよね」
「は?何言ってんだ、村田?」
「よく考えてごらん、渋谷。
ウェラー卿とフォンビーレフェルト卿は兄弟で小さい頃は一緒に育った仲。育てられる中で絶対の信頼を勝ち取り、食事をするも寝るのもずーっと一緒。その中でフォンビーレフェルト卿は寝ているときも起きているときもウェラー卿無しにはいられなくなる」
「え、そ、そうかな・・・?」
「混血という壁も逆手に取り、一見嫌われたように見せかけてツンデレのフォンビーレフェルト卿が気になってしょうがないように「いつまでも君のことが好きだよ」オーラで嫌がられながらも接し続ける。そうしているうちに根がおまぬけでだまされやすいフォンビーレフェルト卿は、もともと本人以外は嫌っていないことなんてバレバレだったのに表面上ツンを維持しつつも内面はどうしようもなくデレていく・・・」
「ちょ、村田、話し方が勝利みたいだぞ・・・・・・そ、それで?」
「それでいて、ツンデレモードのフォンビーレフェルト卿にセクハラ同然の接触を繰り返し、嫌がれつつも触られることがだんだん自然になっていくようにし向ける」
「・・・・・・・・・・・・(心当たりがあったらしい)」
「そして、トドメに愛の告白・・・「兄弟だから言い出せなかった」とかなんだか言いつつも最初からフォンビーレフェルト卿に断る道なんて無いようにし向けられていたんだよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「恐ろしい計略だよ・・・ぼくでもここまで出来るかどうかは分からない。とにかくウェラー卿の周到で綿密な計画によってフォンビーレフェルト卿はまんまとウェラー卿の手を取らされてしまったというわけだよ」
「・・・・・・だ」
「ん?どうしたの、渋谷?」
「なんてやつだコンラッド!!そ、そんな計画を実行していたなんて・・・いくら、いくらコンラッドが・・・・・・」
「渋谷・・・(ぽん)。ウェラー卿はフォンビーレフェルト卿がそれだけ好きだったんだよ」
「それは・・・・・・だ、だとしても許せない!告白は正々堂々とするべきだ!
村田の言うとおりだ!やっぱりコンラッドにヴォルフは渡せない!婚約も解消しない!!」
「ちょ、渋谷、落ち着いて!」
「こうしている間にもコンラッドにヴォルフが・・・待ってろ、今行くからな」
「まあ、確かにウェラー卿の魔の手がフォンビーレフェルト卿に迫っているかもしれないけど・・・」
「ま、魔の手!!?・・・ヴォルフーーー!!」
「ああ、行っちゃった・・・・・・」
お人好しな魔王陛下が去った部屋で漆黒を纏う大賢者の魂を持つ村田は溜息をつく・・・・・・ふりをしてにやりと三日月のように嗤った。
「全く、渋谷はお人好しというか騙されやすいというか・・・こんなに素直に乗ってくれると思わなかったよ」
ごめんねと親友に心でわびると、眼鏡を指で上げる。それでもこっちだって恋は盲目なのだ。
本当は三角関係じゃなくて、四つ巴だってことなん知らない親友の足跡を追いながら村田は彼を手に入れるための計略を練り直して、歩き始めた。
FIN
コンプなのに次男も三男も出ないお話。
今までの話の中でもユーリの扱いが悪い気がする!ごめんよ、ユーリ!
ウェラー卿の「さんなんいくせいけいかく☆」に綿密な計略があったかどうかは謎です(おい)。
2008/07/12