どこにもあるどこか






















彼女と白ウサギと夢魔













ごめんなさい ごめんなさい


私は、元の世界を捨てたの


イーディスも父さんも猫のダイナも、あの人も・・・



そして、姉さんを捨てたの

あんなに大切にしてもらったのに

姉さんを犠牲にしたのに



ごめんなさい ごめんなさい 



許してなんて言えない

だって私は自分でこの世界に残った



でも、ああ、これだけはこれだけは信じてほしい・・・









「彼女は大丈夫なんですか」


「大丈夫・・・変な訊き方をするな、白ウサギ。
大丈夫とは何のことだ、アリスが夢を見ていることか?」


「そうではなくて、彼女が傷ついていないかどうかです」


「傷ついてねえ・・・なあ、アリスは確かに夢を見ているが、それはこの世界に残っているからだ。罪悪感に望んで自分を痛めつけているんだ。
・・・いや、違うな、その罪悪感があるから彼女はこの世界に残ったんだ。
罪悪感が彼女を傷つける限り、彼女はここに残る。望み通りだろう、ペーター=ホワイト?」


「名前で呼ばないでください、雑菌が移る気がします」


「夢の中に雑菌なんていないが・・・なあ、彼女はこの世界にいること自体は合理的なことなんだ、それでいて不合理。夢の世界ではあまり重要なことではないがね」


「あなたが合理だの言い出すとエース君並に胡散臭い」


「姉に罪悪感を持っている、その理由を彼女は姉を傷つけたと思っていることだ。この世界にる間はここにいることだと思っているが、元の世界に戻れば本当の理由を知ってしまう。
この世界にいても姉の気持ちは想像しかできないが、元の世界に戻ったとしても想像しかできないと知ってしまうんだ。残酷だろう、ここにて罪悪感で傷ついてるよりずっと残酷だ。
姉を傷つけたとこの世界に残っているのに、この世界に残ったことに罪を感じる。一見不合理なようで、とても合理的だ・・・分かるだろう?」


「・・・心を覗ける程度で彼女をことを知ったつもりですか、芋虫?」


「・・・・・・その、呼び方は心外だな、私は蓑虫だ、蓑虫。
・・・・・・こほん、まあつまりだな彼女がこの世界にる理由は姉を愛しているからさ。知っているのかもしれない、ここにいることで彼女はまだ姉を直接愛することができる。感情を想像して、傷つくことができる。でも、元の世界に帰れば悔やむことしかできない」


「あの女は本当に目障りです、殺せるなら殺してやりたい。僕たちが撃ち合うことで殺せるなら一刻も早く殺したい・・・もう、無理なことが悔やまれます。僕はあの女をこの世で一番殺してやりたい」


「おやおや、それは矛盾していないか?
ロリーナがいるから君が彼女に愛され、彼女に愛されたから君は彼女を愛さずにはいられなかたんだろう?
アリスがロリーナを愛し、悔やみ続けているから君はずっと彼女に愛され続ける・・・ふふふ、直接的とまではなかなかいかないようだがね」


「・・・だから僕はあなたが嫌いなんですよ。さも、彼女と僕の関係を理解しているかのような気になって、勘違いに浸っている。
エース君の次くらいに殺してやりたい、同士討ちでもしてくれませんか?エース君をあなたが殺して、あなたが吐血して死んでくれれば一番理想的なんですが・・・ああ、もちろん雑菌をまき散らしそうなので僕の見えないところでお願いします」


「お、おま・・・彼女をここに連れてきた恩人に対してひどくないか?
一応、今はここはクローバーの国で私は偉いのに、一番偉いのに」


「黙れ、芋虫・・・彼女が起きてしまう・・・」


「・・・そうだな、また目が覚めて泣くんだろうな。
この世界にいることはアリスにとってロリーナの為も同然なのに、知ってしまえば帰ってしまう。これは袋小路か、それとも・・・」











ごめんなさい でも信じて欲しいの

本当に、本当に、姉さんが大好きだった









「知っているわ、ええ、今もいつだって、感じているわ。
ここにいて、この時間で、いつもあなたと午後を過ごしているから」








 





クローバーではひたすら鬱モードだったアリスに、おなじみの二人をつけてみる。

ロリーナが好きだから不思議の国にとどまる、ロリーナが好きだから元の世界に帰る。

終わらない矛盾と矛盾に潜む精一杯の愛。