どこかにあるどこか
ワンダーランドにようこそ
これは夢 全部夢
本当は家の庭で日曜日の昼下がりのまどろみの中にいてその内姉さんが起こしてくれる
この世界は夢 すべては夢
目が覚めれば覚えてもいないかもしれない 現実ではないもの
現に触れればあっという間に消える儚い ほんの僅かな時間の白昼夢・・・
ああ、もう目を覚まさないと・・・
「いかないで下さい」
薄闇の中で光のある方に歩くと、手を捕まれた。
振り返れば白ウサギのペーター、私をこの世界に引きずり込んだ張本人。
泣きそうな顔で私を引き留める。いかないでと、切なくなるような声で。
「知らなくていいんです、あなたはここにいればいい」
ここ。この世界。誰もが私を愛する、そんな都合のいい世界。
そんな世界で、ペーターが私にいかないでと懇願する。
ああ、でも彼も本当はただの夢なのだ・・・夢、ただの夢
「そうだよ、これは夢だ」
ペーターが消え、ナイトメアが現れる。
夢の中の夢にしか現れない夢魔。
いつのまにかナイトメアが私の手をつかんでいる。
離せないことはない、でもどこかでブレーキをかけている自分がいる。
「夢だよ・・・覚めることに急ぐことはない」
甘い言葉。
そう、急ぐことはない、まだ小瓶の水は満ちるにはほど遠い。
この夢のくせにシビアで血生臭くて、それでいてふわふわと甘い夢を、姉さんが起こしてくれるまでただ見ていればいい。いつか、自然と目が覚める・・・。
再び、私はまどろむ。姉さんが起こしてくれるまで。
「そうさ、覚めなくてもいい夢だ。いつまでもお休み、アリス」
姉さんが起こしてくれるのはいつ?
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