その瞳に映る世界を見た、まるで夜闇に浮かぶ白い星の合間に自分の姿が映っていた 「 その瞳に映る世界 C 」
リーオが頷いた時から、どれくらいの時間が経っただろうか。
ぼんやりとしているとリーオが口を開いた。 「・・・・・・今回でわかったよ」 「?何がだ?」 「エリオットが本当の・・・・・・な、こと」 「・・・・・・?最後の聞こえなかったぞ」 「もの凄く嫉妬深くてこんなことする物好きだってことだよ」 「嫉妬深いのはわかるが、物好きな覚えはないぞ?」 「縛ってまで僕を捕まえようなんて、物好きだよ」 「そんなこと・・・いや、それなら俺の従者でいるために偽装結婚までしようとしたお前も相当 だ」 「なんだよ」 「なんだと」 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 ふいとリーオは顔を逸らした・・・リーオの白い両腕は既に白いリボンタイに縛られてはいない。解かれた白い布がリーオの顔の横で何事もなかった様に横たわっていた。 しかし、リーオは解放されてはいなかった。俺が直接リーオの両腕を押さえつけて動きが取れないようにしている。 解いた直後、リーオは弾かれたように両手を動かした。だが、俺は「置いて行かれる」とその動きに恐怖を覚え、咄嗟に押さえつけそのままだ。 リーオは俺の顔を見るとしばし目を見開いたが、すぐ目を細め諦めたように体から力を抜いた。 「エリオット、いい加減疲れないの?」 「別に、疲れるようなことはしていない……お前こそ風邪はもう治ったのか?悪くなってないか?」
「悪くなったとしたらエリオットのせいだよ、病人を縛るし……挙げ句に、あ、あんな風に僕を……っ!」
「………わるい」
しかし、もう一度リーオが身じろぎしようとすると俺はまた力を強めて押さえつけた。 自由になったリーオを見て感じることは不安と解いたことへの後悔だった。
どこか俺の知らないところに行こうとしているわけではないと理性は理解しても、一度でも離れるかもしれないと思った恐怖は最悪な形で表現されているのだろう。 「……エリオット、離したのになんで僕をまたこうして押さえつけたの?」 「………」
「僕がどこにも行かないっていったのを信じたわけじゃないんだ?」
「ああ、わるい……」
もちろん信じていない。好きだから、信じない。信じられないし、信じて託す気にもならない。
だから真っ先にリーオの信頼を投げ捨てるような力付くで自由を奪う真似をした。できた。 俺の言葉にまた激しく動こうとするリーオを、また押さえて身を寄せる。きっと顔をこっちに向け睨むと長い前髪が舞い上がる。
やわらかい髪先が鼻先に触れてくすぐったい、その先に世界を見たくないといった黒い瞳が俺を瞳いっぱいに映している。 「リーオ」 その瞳に映る世界を文字と鍵盤以外のものに向けて欲しいと始めてリーオの顔を見たときは思っていたのに、今は文字と鍵盤と俺以外が映ることに怯えていた。 気がつき始めていた。文字と鍵盤の外の世界にはこの変わり者で読書狂ですぐキレてカンの触ることばかり言って手の早いリーオの、わかりにくい気の遣い方や見返りを求めない不器用な優しさ、早いくせに丁寧にページをめくったり滑らかに鍵盤を泳ぐ手の暖かさ、何事にも冷静でマイペースなくせに不意に見せる不安を感じるほどの無防備な脆さを、理解して愛する誰かがいる……そんな風に初めて思ったのはいつだったか。
誰にも傷付けて欲しくはないから自分の手で守ろうと思っていただけなはずだったのに、時間を共有するほどこんなリーオを他に愛する存在がいないはずがなく、まだ見ぬ誰かに奪われてしまう怯えばかりがいつからか胸の奥に巣くい始めた。
そして、まだ見ぬ誰かは手紙の向こうの少女の姿で現れた。ただの政略結婚で、リーオと面識もないことはいっそ救いだった。それも恐怖は思った以上のものだった。
(そして、俺の恐れていたとおりリーオは俺を置き去りにしようとした。 いつか母親のために自分がいないほうがよかったと言ったときにように、俺に何も言わないつもりで、俺がお前がいないと壊れてしまうなんて考えもせずに) 外の世界に出たのにリーオは自分の価値をいまだに知ろうとしない。 この漆黒の瞳だけでも魅せられずに入られないという人間はきっと俺だけではないのに……夜の色の瞳に魅入りすぎたのか、リーオは俺を睨むのを止めて声をこぼした。 「……エリオット、なんで?どうしてそういう目をするの?」
「?なんのことだ?」
「どうして、そんな、辛そうな顔ばっかり……僕を縛ってからずっと……そんなに辛かったの?そんな辛い思いをしてまで僕を縛り付けたかった?」
「……辛いのは、突然縛られたお前だろう。何を言ってるんだ」
「そんなに苦しくなるくらい、僕が裏切ったと思った?苦しくて、何かせずにはいられないくらいに?僕がいるからエリオットは苦かった…?」
なら、ごめん……と小さな声と一緒に白い頬に涙が伝った。 「違っ……なに、いってんだよ!酷いことをされたのはお前だろ…!……やめ、泣かないでくれ、お前のせいじゃない!そんなわけあるか、リーオは……嘘はついたけど、悪いわけじゃない。謝らないでくれ」 「なんで、だろうね。僕は君が好きだから、嫌われたくなくて、邪魔になりたくなかっただけだったのに。
君が手の届かない所にいってしまうことだけは耐えられないから、少しだけ離れた場所で死ぬまで君にいて欲しかっただけだと思っていたのに……その事は君を怒らせるとしか考えていなかった。 そんな辛くて苦しくて…泣いて欲しくだけはなかったのに、結局僕が君を追い詰めた」 「違うって言ってるだろ!ただ、俺は、俺が……頼む泣かないでくれ、酷いことをしたのは俺だ、俺のために泣くな……な、かないで、くれ……リーオ」
どうしてこんなことになったんだろう、自分でやったことなのにそんな愚かなことを考える。 酷いことだと分かっていた、傷つけないはずはないと、知っていたのに。 それでも気がつけばリーオの頬に頬を触れさせて涙を拭おうとしていた。涙が混じり合って、もうどっちのものか分からない。
バカみたいだ。 リーオを押さえつけてる手を離して自分の手で拭えばいいだけだというのに。 「……わるい、本当にわるかった。 離す、今手を離すから、もう縛り付けないから、リーオは何も悪くないから……自分を悪く言うな」 白い手首から離す俺の手は鎖のように離れようとしなかった。 (いやだ、いやだ)と駄々をこねる声に迷いはしたが、それでも剥がす。リーオが泣いてる、これ以上泣いて欲しくない。自分が悪かったなんて、絶対にお前には言って欲しくない。 意を込めるとあっけなく離れた手に痛みを感じた気がした。ふれた温もりが消えた。もう一度夜の色の瞳を見ようと思ったのに、何も見えなくなってリーオが見えない。 どこにいったのかわからないで手を動かすがシーツの感触しかしない。消えたはずはないのに、リーオを触ろうとしても見つからない。 しかし、すぐに手に温もりが触れた。白い手が俺の手首を掴んでいる…リーオが俺を束縛した。
「エリオット、君が僕を縛りつけておかないと苦しいならいいよ。そんな顔をさせるくらいなら僕は本当にずっと縛られていてもいいんだ、心から」 一回り小さなぬくもりが、傍らにあったリボンタイを俺の手に握らせた。俺は見つけたぬくもりに捕まると、リーオはもう片手で俺の涙をぬぐっていた。 「縛りたいなら縛ればいい、でも僕の頼みをきいて欲しい」 そして、ずっと縛られてたときもこうしたかったんだと俺の首に両腕を回してしっかりと抱きしめた。確かに目の前にリーオがいた。キスをされている時がつくまでかなりの時間が掛かった。 なんでもするつもりだったが、昨日と同じことをリーオを拘束したまま望まれるとは思っていなかった。罪悪感を感じなら、ボタンを外して白い肌に触れる。 『僕はさ、昨日エリオットとここに来て気兼ねしないでずっと…君を馬鹿みたいに独占できるのを楽しみにしてたんだ、本当に浮かれてさ。だから、それを叶えてよ』 どういう意味だ?と問えば、あっさりと「このまま抱いてよ」と言われ赤面すれば「今まで自分が何したのか、わかってるの?・・・本当に馬鹿だね」と冷たい呆れ返った目で見られた。白い肌に触れる度に初夜の時のように、指先が震える。 「エリオット、君…絶対緊張するところが違うよ…まあ、僕も僕だけどさ」 リーオは言葉のとおり両腕を頭の上に縛られる形で俺の前に横たわっている。その腕は今度も拘束されているが、今度は縛られた側でも簡単に解けるような結び方になっている。それでもその姿に感じた安堵感を見抜かれたのか、何度かため息を疲れた。 早くしてしまうべきか、ゆっくりするべきか分からず、しかし聞くこともできずに結果として慌てて体をまさぐる形となる。リーオが触れられた感触に身をひねる度手が止まって狼狽えてしまうたびに同じ言葉ばかり投げかけられる。
「……本当にこんなことしてもいいのか?」 「エリオット、さあ…さっきまで僕を縛って手でするなんてかなりなことしてたのに、なにその反応?まるで僕の方が変なことしてるみたいなじゃない、絶対君の方が規格外だったのに。理不尽だよ、その反応」
「そんなこといってもな……そ、それとこれは違うんだよ!あの時は絶対手を出さないって決めてたんだ、今とは違う」
「あれで、何が手を出してないって言うんだよ…本当にエリオットは馬鹿だ」
必死に弁明するが何か言おうとしたが、どう言えばいいか分からずそのまま無言で服を脱がせていく。 集中しすぎたのか気が付けばベッドの上には上着を腕に通した以外は全裸のリーオが横たわっていた。思わず硬直すると「さっきもぼくを無理やり脱がしたでしょ?」と悪態をつかれる。事実そうだったので、反論の余地はない。 おそるおそる手を伸ばして心臓の辺りを大事に撫でるとリーオが急に無口になった。
一瞬何が起きたのか分からなかったが、リーオの上気した頬に気がついてまた赤面する羽目になる。ああ、どうしよう。こんな感情はリーオの自由を奪った時点で、もう感じられないかもしれないと思っていたというのに……一日ももたないとは予想していなかった。最悪だ。 もう一度心臓を撫でると、上気した頬に触れて口付けた。薬やりんごを飲ませたときには全くためらわなかったのに、ただ口付けるだけとなるとどうすればいいか分からずに昨日までどうやってキスをしていたのか思い出そうとしていると、舌が唇を割って入ってきて口内を舐められた。
硬直したまましばらく時間が経つとリーオが離れて「よかった…もうケガは治ったんだね」と泣きそうに微笑んだ。
「あの時は死ぬかと思ったよ、僕がエリオットを怪我させるなんて」 「あれは別に怪我ってほどじゃない……どう考えても俺の方が悪いだろ」
「うるさいなあ…挙句に、手間で怪我するし、エリオット最悪だよ」
「これも別に怪我ってほどのものじゃない、なんでこんなのをそんなに気にするんだ?」
言うと、すごい目で睨まれた。 どう考えても隙を見て縛って自由を奪い、挙句一生自分の意思で俺のそばにいるかこのまま無理やり傍にいさせるか選べとまで言った俺が、少し口を噛まれたり軽く手を切ったりする程度で気にされる必要はないと思うのだが……心を読まれたように今度は目を涙を浮かべられた。 謝って涙をぬぐったが、まだ泣くので今度は抱き寄せるともう一度謝った。それでも「全然わかってない、いい加減泣きたいよ」と言われ「もう怪我をしないようにする」というとようやく泣き止んだ。
不意に肌が布越しにしか触れていないことに気がつくと焦れったく感じ、自分の襟元を緩めると少しずつ直接肌の触れる面積を増やしていく。全身が直に接触すると、昨日のただの恋人同士らしい触れ合いを思い出し、体の奥が熱を持つのを自覚せざるを得なかった。
直に触れ合うと、自分の欲を自覚せずにはいられなかった。それはリーオも同じようだったので感情のままに、手や唇を触れさせる。リーオの抑えた嬌声を可愛いと恋しいと思う感情が素直に嬉しいと思えたが、同時に自分の罪悪感で抑制された感情が熱に浮かされて口をついた。
「リーオ、その、聞いてもいいか?」 「なんだよ、こ、こんなときに…エリオット少しは時と場合をわきまえなよ…っ…な、なに?」
「お前、あの手紙をどうするつもりなんだ?…捨てるのか?」
「そんな、こと…考えてもいなかったよ!こんな色々ある間に考えるほど深く考えたわけじゃいし……なにその選択肢、捨てて欲しいの?」
「ああ、それが一番いい。正直もう一度お前の手に渡ると思うと、今すぐ破りたくなる……おい、や、やめろ…!」
顔が近かったせいで、耳に噛み付かれる。 甘噛みなので痛いわけではないが、こういうこと今されると痛いよりもずっとまずい……今でも抱き潰して、全部自分のものにしてしまいたくて仕方ないというのに……俺にも非があるのかもしれないがこいつは、なんというか、無自覚すぎる。気がつかれないように下腹の方に手をしのばせる。 「変なこと、こんな時言い出すからだよ…っ、ちょ、やり返すのは反則っ……!」 直に触れた自身は既に軽く固くなっていた、傷つけないようにそっと握ると甘い声を必死で堪えているのが分かった。俺はいつもそうやって抑えるのを嫌がっていたが、もしかしてリーオ自身抑えたくてやっているのではないのかもしれない。俺自身も早く一つになってしまいたい願望とどうすればいいか分からず戸惑う感情の狭間でどちらが自分の本当の感情かと聞かれても困るだろう。
上下に扱うと、抑えきれなくなった嬌声が漏れ初めてリーオが必死でこらえているのが分かった。俺は良くそれをやめて欲しいと言っていたが、今は胸の突起をもう一方の手で撫でて自然と堪えられなくなるように仕向けた。こらえるをのやめた声を聞くと早く欲しいと素直に感じた。
手の動きを激しくして、先端に強く親指を押し当てると可愛くて淫らな声が上がった……食べてしまいたいと思って、慌てて自省する。あくまで恋人としての行為だ、何もかもを支配することはリーオの言葉で思いとどまれた。
「〜〜っ……っは、はあ……こういう場合は返事で断ったほうがいいのかな?それとも無返答がいいのかな?」 「……どっちもいい、俺がお前に二度と近づくなって書く。それで終わりだ……触っていいか?」
今までの経験のせいか慣れた手順で体をリーオの両足の間に侵入させると後ろの穴に触れた、妙に初心な心地だったが潤滑油のビンの蓋を開けるあたりはとてもそうとは言えない。指を香油に絡めると、もう一度確認をとる。 「そういうのきかなくていいから、僕はエリオットの好きに…して欲しいんだよ、……君が断るって、そんなことでいいの?」 不安げな表情のリーオにもう一度キスをして、髪を梳く。そして、腰を軽く浮かせると指を侵入させる。お互い初めてではなく、なんどもした行為だからかすんなりと入った。 面映ゆい気がしたが、同時に早くこの熱を彼に注ぎ込みたい、触れさせたいという欲望がかなり強まった。だがそれを抑制するだけの話をもう一度訂正する。 「痛くないか?……いいも何も、お前がそいつに手紙を書くというのを想像するだけでいやだ、燃やしたくなる。こういう場合は俺が入ったほうが早い、もう絶対お前には近づかせないし、これからもそういう奴が来たら俺が全部断る」 「……いた、くはないけど、なんか……!
……は、あ、そんな勝手に…君だってたくさんお見合いの話がきてたくせに、僕に何にも言わずに返事書いてるし……んっ…だ、だいじょうぶ」 「そうか、じゃあこのまま……そんなのお前がいるから断るに決まっているとか、考えなかったのか?」
「思えるわけ、ないよ…いいよ、このまま来て……僕は君とまっとうに結婚できるわけでもないのに、君は自分の家が大好きだし、成人したら結婚話が散々舞い込むし、僕は君のそばにずっといれるなんてどんどん思えなくな……っ、ま、待って、そんな急に、ダ、ダメ……あああああああああああっ…!」
後孔に熱をねじ込むのには慣らししていたのあまり抵抗はなかった。急に訪れた圧迫に耐えられず身をよじる彼の体を捕まえた、抱きしめるとそのまま深い場所へと進んでいくと頭の中が何もかも白くなってしまいそうだった。 このまますべてを忘れるほど、交わってしまえばいい気もする……でも。 それでも、伝えたいことがあった。
「……っう、はぁ……おま、えは、バカだ……俺がどんな気持ちでいるか、知りもしないで……俺が、そんなことを一度も考えたことがないと、勝手に……どんなに好きかも知らないで…!」 「ま、待って、エリオ、ット!そんな急に…!……僕だって君が好きだよ!君がいないとどうやって立てばいいのかわからない位好きだよ、独り占めにしたいよ…でも家族を好きで家に誇りをもってる君も大事に思ってるから、邪魔だけはしたくないから……もう…なにがなんだかわからないよ、エリオット」
「痛くないならやめないぞ……勝手をしたのは俺だと分かっている。でもこれだけはもう一度言わせろ、勝手に俺の気持ちを決めるな!…頭がおかしくなりそうなんだ、お前がどこかに離れていくと思うだけで、そんな俺に邪魔だから離れたほうがいいとか馬鹿なこと考えるな」
抜き差しを繰り返す速度を少しずつ早くするたびに、白い躰にしがみついて、捕らえようとする。どこにもいかないように、いけないように。何か口にしそうなところをもう一度リーオ自身に触れ、今度は性急に煽り立てた。 「いつか傍にいられないと思うだけで俺が壊れそうなんだ……お前じゃないとダメだ、嫌だ。他の女を替わりにして片手間にお前を愛するなんて無理だ。きっと最後には、今と同じにお前を閉じ込めて全部壊す……だからその道は選ばない」 熱くてたまらないのに、どこか冷静な声音だと自分でも分かった。 見開かれた目を覗き込むと所有の口付けをした。やりたくない、外の世界を見てもいい。でも俺を一番大きくその瞳に映す権利はやるわけにはいかない。 「エリオット……っ、ちょっと、待って。僕の話を…」 「お前が好きだ、だからずっとお前を一番傍にいてもらいたいのがおかしいかよ!?
俺がリ−オを好きで、だけどそれを周りが認めないならあきらめないといけないのか?俺は嫌だ、お前もどこにもやらないし、嫌がってもこうやって閉じ込める。 他の誰かと好き合う振りもしない、出来もしない!それが認められないのはわかってる、でもそれを前提にあきらめないことだって出来るだろう!?」 「待ってって、手を止めて!僕は君が……待…っ、はっ、はぁ…」
「お前が俺を大事に思ってないなんて思ってない、でも頼むから気がついてくれ。お前は自分を何かあったとき邪魔になると思っても俺はそう思ってない。
好きなのはお前のままだし、どうしようもなくなったらお前だけ連れてナイトレイを捨てる」 手の中で果てていくリーオを感じながら、俺は自分の言った言葉を反芻した。リーオの手だけをとって幼い頃から当たり前に自分の信じてきたものを手放す。 心だけは、その高潔さだけを信じる続けることは出来るかもしれないけれど、きっと世界はそうは思わないだろう。家族だってそうだ、それでもリーオをなくせば俺はきっとその世界自体を今までのようにはまず愛せない。 だから、いい。
惚けたように射精後の特有の微睡むような表情を見ると、きっと俺は最後にはこの手を取るのだろうと頬に首を埋めるとリーオにもう一度深く侵入した。離してしまいたくて仕方なかった熱が彼の中に注がれることを感じると、リーオの身体に沈んだ。
「……リーオ?」 あのまま眠ってしまった…?慌てて起き上がると、リーオは窓辺に立っていた。 あっさりと解けるように結んだリボンタイはリーオの手に握られていた、毛布を肩にかけて窓にもたれていた。 「……エリオット起きたの?寝てればいいのに」 「そんなわけにいくか!……その、大丈夫か?」
「……君、本当に人の話聞かないよね」
いつもならリーオには言われなくない台詞だったが、今回はその通りだったので異論なく受け入れる。 傍によると少し体が痛い。リーオはもっと痛いだろう、ベッドに戻そうとするがリーオは窓から俺の体にもたれて来た上にそのまま体重をかなりあずけてきた。
慌てて支える。リーオは俺より軽いが、それでも急に重心をあずけられると体が傾いた。 「エリオットなんて、本当に馬鹿なんだから」 「何言って……おい、体がきついのはわかるがこのままじゃ倒れる。
ベッドに運ぶから少し」 「君なんて僕に押し倒されてればいいんだよ」
「って、おい・・・!」
本当に押し倒された。呆然としていると馬乗りになったリーオが夜の色の瞳で俺を静かに見下ろしていた。 「本当に、馬鹿、ばかやろう、親不孝もの、なんで、なんで君は・・・・・・本気にするよ?」 「……なにをだ」
リーオはいつものマイペースさが全く消えた子供のように泣いた顔で俺を、その瞳に映る世界に一番大きく映していた。 ぐいと手をつかまれる、さっきまでリーオを縛っていたリボンタイを手首に結び付けられる。その端を掴まれるので俺の手はリーオに繋がれた。
「君を独り占めしたくて、いつか君が今日のことなんか忘れて誰かと幸せにしているところに割って入っても君を僕の元に繋いで、僕だけ見てくれるように連れていってもいいって、思っちゃうよ。いいの?」 「……?俺はお前が」
「いつか君が僕のことを邪魔に思って憎んでも、今日の君が何をしても僕が君を奪ってもいいっていったからってその言葉を本気にしていつか君のことをめちゃくちゃにしてもいいって、本気で思うよ……きっと君は後悔する」
「……リーオ」
「こんな風に縛って、君が僕以外誰も見られないように…して、いいんだね?……僕が君を好きで独り占めしたいからって、君がどこかにいかないように縛って僕のもとに置く、から…エリオットが好きだから」
最後はすすり泣きだったかもしれない。床に崩れ落ちそうな体を慌てて支える。 ボサボサの黒髪が俺の胸の中で小さく震えていた、いつもよりも一回り小さく見えたのは背中に回された腕のせいだろうか?・・・なんにせよ俺は半分身を起こすとしっかりとその体を抱きしめた。
(ああ、なんだか……気が抜けたっていうか、ほっとした……) やっと捕まえた、そんな気がした。 だってリーオが俺を縛りつけると言っているのだから、きっと俺と一緒に縛り付け合えば離れることはないだろう。 だから、やっと安心できた。現金な話だ。 乱れた黒髪を梳いていると「……いいの?」と本当に小さな声が聞こえた。疑り深くて、ひねくれもので、とっても一言では言い尽くせないたった一人の俺のリーオ。 お前が俺をやっと捕まえてくれたからそんなことはいくらでも構わないと言うと、今度はリーオは何も言わず胸の中で頷いた。 おわり
おまけ 「あー、もうエリオットのせいで最悪…」
「……………」
「あー、なにその顔……いちいち深刻になられてもうっとうしいよ……あーもう、エリオット僕の話聞いてた?」
「……?聞いてたぞ?どうしても結婚させられそうになるまでは独身で通して家に残ってナイトレイとして生きていくが、最後の最後でダメなときはお前と二人で駆け落ちするから、今から資金やら逃走ルートやらを念の為に確保していくんだろう?」
「そうじゃなくて、僕は本当にここに君といること楽しみに……もういいよ!君は全然どうでもよかったんだってよーっくわかったよ!」
「ちょっと待て!どうしたんだ、何を怒ってるか言ってくれねえと」
「君は何もかも言わせようとしすぎなんだよ!ばかやろう!」
(もっとイチャイチャした別宅生活をめちゃくちゃ楽しみにしていたリーオさん) おわりのおわり あとがき
また、リアリ朝チュン・・・・! えっと、あれです!エリオットがリーオを縛るだけでは不安なので、リーオが縛れば安心したというオチです(寝不足)
無駄設定
・エリオットが中出ししたからリーオは先に起きてたんだよという、本当にどうでもいい設定(しかもあれな話)
・風呂やトイレをどーしたんだという話はスルーするでもなんでもなく、縛ったまま暴れるリーオをエリオットがだっこして連れてったり洗ってたりするというエロいのかシュールなのかわからん話の設定。 ・さすがに二人ともギクシャクしますが、滞在後半ではもう少しイチャイチャ出来たようです。 ・これからはエリオットの縁談もリーオが捨てます(エリオットはもちろんリーオに来た手紙を見せる前にすぐ焼きます、わあ嫉妬深い)。 それでは・・・。
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