「 甘くて、苦い味 」



 


夜に一日の疲れを取って、寝巻きに着替えるといつものようにカップを片手に読書に向かおうとすると声をかけられた。


「お前、そんなのが好きなのか?」


エリオットに言われて振り向く、青い瞳がリーオを不思議そうに眺めていた。
そんなに変かな?と持っているカップに目をやる。

マグカップの中には黒い液体、手製のかなり濃いコーヒーだ。
リーオが自分の好みでいれたものでエリオットが一度興味をもって飲んでみたら、涙まで滲ませたという特製の苦みを持っている。


リーオとしては本の続きが気になっている途中で眠気が邪魔をしないように開発したものなので味に関しては特に気にしてはいなかったが、眠気が来るときに飲むとカフェインの効果だけではなくて目が覚めるような苦さが結構気に入っていた。

もう片手にはチョコレート、エリオットからもらったものだ。

ナイトレイ家ではバレンタインとかいう恋人やごく親しいものにチョコレートを贈る庶民の習慣を拡大解釈して、家族や従者にまで贈ったり、あげく貰った方からも送るのが通例となっているらしい。家族仲、特に兄弟仲がいいナイトレイ家らしいほほえましい習慣だった(その分貴族の出でもないリーオが疎まれることになるのだが)。

リーオは貧しい家の出身だったし、母が死んでからはフィアナの家という孤児しかいない環境にいたので、庶民の行事であるバレンタインを知らなかった。

知ったのは「お前ももう俺の従者なんだから・・・ほ、ほら!」というエリオットに差し出された貴族からの贈り物らしくやたらと丁寧な包装されたチョコレートに不思議そうな顔をしていた後に、一向に受け取らないことに心底傷つけられた顔をされたエリオットに後で説明を受けてからだった。
庶民の行事を大貴族のエリオットに説明されるというのもなんだか不思議な話だったが、そんなものもあるのだなとバレンタインに関する本をいくつか図書館で何冊か借りた。

その本を読もうと思って、コーヒーを入れて自分のベッドに積んである本の上に手を伸ばした時、急にエリオットに声をかけられた。

片手に持っているエリオットから送られたチョコレートの綺麗な包装はリーオなりに丁寧に解いたのだが、結局破れて無残な姿になっている。しかたなくせめて小皿にとって(よくみればこの皿も高級品なのだし)、見栄えよくして夜食にして本を読もうと思っている矢先だったのだが・・・。


「そんなのって・・・コーヒーが?」


だったら、かなり今更な話だ。会ってまだ1年とたっていないがエリオットはリーオがよくコーヒーを飲むのを知っていたし、その味に涙をにじませたのも結構前だ。今話題にするのはずいぶんタイムラグがある。

エリオットはベッドから立つとリーオの傍らに立つ。持っている皿に目をやると自分の贈り物だったチョコレートに目をやると不思議な表情をする。むすっとしているような、でも怒っているわけではなさそうな・・・?

贈り物を読書の軽食にしたことに怒らないまでも複雑な感情があるのだろうか?だとしたら、ちょっとバツが悪い。
美味しそうだったから早く食べようと思ったのだが、適当にポリポリ食べられるというのもちょっとあんまりかもしれない。

キッチンに戻ってチョコレートをしまおうとリーオが足を上げる前にエリオットが口を開いた。青い瞳が不意にそらされて、ベッドの本の山を見て少し視線を下げる


「コーヒーに関して今更どうも思わないが、そんな苦いものとチョコレートを一緒に食べて美味いか?」

「え〜、苦いのを甘いのが引き立てるから美味しいじゃない?」


どうやらエリオットはごく単純に食べ合わせを気にしてかけた声だったらしい、リーオは少し安心するといつものように軽口をたたいた。それが癇に障ったのか、エリオットは何かを諭すような口調になる。


「お前な、俺のチョコレートはお前の頭が痛くなるほど苦いコーヒーの引き立て役なのか?」

「う〜ん、それは悪かったかなと思ったから箱に戻してこようかと思ったんだけど」

「それにいくらお前が苦い味が好きだからって、そんな苦い味と甘いものを交互に食べたらさすがに頭が痛くなるぞ。
夜食替わりでも何でもちゃんと食べるんなら何でもいいが、それはさすがに味の落差がありすぎるだろう。やめとけ」

「ならないよ、試してみようか」

「って、おい・・・!?」


怒っているのかと思ったら心配しているとは、なんともエリオットらしい。一見乱暴な言葉遣いで大雑把な印象を与える彼だったが、根本的にとても細かい優しい気の遣い方をする。それもひどく自然だから、自分との落差に少し申し訳ないような気持ちになったり、それなのに距離を感じさせないから何となく嬉しくなる。

エリオットには、ずっとそのままでいてほしい。その為になら何度だって死んでもいいのにと、彼が愛読書の一番嫌いな人物のようなことを考える。

固まったエリオットの前で皿を積んだ本の上に小皿を置くとチョコレートを1つ口に運んで食べる、甘い味。そしてマグカップのコーヒーを2口ほど飲んだ・・・・・・うん、別に頭痛なんかしない。確かに苦みがいつもより増した気がするけど、チョコレートは確かに甘かったし、コーヒーもいつも通り。

ほら大丈夫だよ、ともう1つコーヒーを飲んだばかりの口に甘いチョコレートを運ぶ。うん、今度は甘みが増したみたいだ。食べ合わせがいいじゃないかとエリオットに振り替えるとまだ固まっていた。


「・・・・・・信じられねえ、なんで平気なんだ」

「え〜、エリオットは味覚がお子様だよ。これくらいの苦さ普通だって」

「それだけは絶対違う・・・まあ、平気ならいいんだが」

「そりゃ、平気だよ。うん、これ美味しいね、エリオットありがとう」


エリオットはすごく驚いた顔をしてしげしげと顔を覗き込んでくるから、なんだかおかしくなってどんどんチョコレートを口に運んで最後になってしまう。あっという間に甘い時間は過ぎていった、なんだか浮かれていたみたいだ。

空になった皿を見るとなんだか少しさびしいし、なにより恥ずかしい気もする。これはからかったということにしてみよう。甘すぎる味に濃い苦味で相殺するとマグカップが空になって、いつものようにエリオットに向き直ると呆然とされていた。さすがに全部食べるなんて、やりすぎたかもしれない・・・からかうのはやめとくか。


「お前、いくらなんでもそんなパクパク食べたあげくごくごくと・・・・・・頭痛くならないのなら、どっか病気じゃないのか?」

「いや〜、それだけ美味しかったんだよ。あはは、また僕からもお返しするね。
今日用意できなかったけど、まあ僕には初めてのバレンタインだからってことで日付が違うのは大目に見てくれない?」


実は贈り物なんて初めてだったから、今度は初めて人に贈り物をするというのも悪くない。きっと相手がエリオットなら、控えめに言っても悪くないなんてものじゃないだろう。なんだか楽しくなってきた、これはバレンタインについての本を読んで早く何を送るのか考えよう。
しかし、エリオットの行動は全く想定外のものだった。


「え?いやいいぞ、俺はこれは習慣として贈ったんだし・・・・・・ああ、べつにこれでいいぞ」

「これって・・・・・・へ?」


今度はリーオが固まる番だった。エリオットはリーオの指先に残ったチョコレートを無造作に口で加えて舐めとっていた。固まっている間になんでもないようにエリオットはリーオの指を1本1本丁寧に吸った。

リーオは今世界を見たくないために伸ばした長すぎる前髪に心底感謝した。頬に熱が集まってくるどころか心臓の音がうるさく耳元でなっている。あああああ、どくどくうるさい!何も考えられなくなるだろ、少し静かにしろよ・・・!

最後の指にのこったチョコレートを舐めとるとエリオットは何事もなかったようにリーオに向き直った。


「ほら俺がやってお前のものになったんだから、お前のチョコレートを俺が食べればお返しになるだろ。
 ・・・・・・ほら、お前は初めてのバレンタインなんだから、貰ってるだけでいいんだよ。来年でいいって」


エリオットはリーオの傍らから離れると本棚の方に歩いていった。いい加減今夜読む本に意識が向いたのだろうか、それはいつものことだったがリーオはそれどころではなかった。
心拍数がおかしい、いやわかってる、お互いそういう関係になってはいるがエリオットにとって今の行動は深い意味はない。ないが、何も意識しないほどリーオは人生経験が豊かではなかった。どこかの恋愛小説のように、顔が熱い。しかも、エリオットは何も意識していない。


「お返しなんて別にいいが・・・そんなに気にすることないぞ、このチョコレートはだな・・・・・そ、その!これは俺の家の習慣で、その小さいころから普通にやってたから、俺も知らなかったんだが・・・・・・いや、それでこの前何かないかと街に行ったんだが・・・・・・」

「え、エリオット、街にまで行ったの?なんで?」


頬の熱を一瞬忘れるほどには貴族のお坊ちゃんとは思えない不用心さ。4大公爵家の中でも敵の多いナイトレイ家の嫡男としては危険な行動だ。リーオがとがめるような目線を向ける(長い前髪のせいで見えないが)。後ろめたいのかエリオットは慌てた様子で本棚に何かを探し始めた。


「いや、何か少し違ったものがないかと・・・探しに行ったんだ。そこで見つけたんだが・・・」

「ていうか僕エリオットが街行ったこと知らないよ?街に一人で行くなんて不用心だよ、そりゃ僕はほとんど護衛としての能はないけど連れて行ってくれたっていいじゃないか」

「・・・・・・その件に関してはヴァネッサにこっぴどく叱られた、反省してるからいうな」

「ふ〜ん・・・でも、そこまでエリオットが気を遣ってくれなくてもよかったのに、それなら僕も返さないわけにはいかないよね〜なんにしようかな。コーヒーくらい苦いチョコレートってあるかな?」

「おい!・・・いや、そのお返しは本当にいいから」


少しむっとする、そこまで嫌がらなくてもいいだろう。カップと皿を無造作に置くと本棚に近寄ってエリオットの彷徨う視線を遮ってやる。
下から覗き込んで睨んでやるとエリオットはなぜか頬を紅潮させて、リーオから一歩急に引いた。特製のコーヒー並みの避けられ方だ・・・・・・これはなんだか腹が立つ。

確かに、そういう関係になったからって何が特に変わったわけじゃないし、むしろお互いにそう言う空気を避けているところはあるが・・・・・・腹が立つものは腹が立つ。これはこっぴどくからかってやろう。


「エリオットがそこまで言うなら、何が何でもお返ししなきゃね。そうだね、僕のコーヒーと一緒に砂糖抜きのチョコレートなんてどう?」

「ちょ、ちょっと待て!少し近づくのを待て!返してくれるなら、ちゃんと貰うから!貰うから今は近づくな!やばい!」

「はあ?なにそれ?なに限りなくどうでもいい感じの投げやりっぷり、喧嘩売ってるの?」

「(ヤバい、キレる・・・!)わ、悪かった!
・・・・・・お前に隠してたことがある、白状するから話を聞け。できればソファーで待っててほしい」


エリオットの顔色は赤くなったり青くなったり忙ししく、リーオは一応にじり寄るのをやめる。隠し事?なんだかわからないし、腹も立ったままだが・・・・・・何か白状してくれるというなら聞いてみるまで保留にしてもいい。せっかく、バレンタインに生まれて初めての贈り物をもらったのだから。

ソファーにどんと座ると、背もたれに思いっきり背中を鎮めると足をぶらぶらと振ってみる。なんでこんなことになったんだっけ?今日はエリオットにチョコレートをもらって、ただの習慣からだとしても親しい(いや、確かに親しい以上の関係なのだが)人間として認められている証拠をもらったようでそれだけで十分嬉しかったのだけだというのに。

エリオットが何か物を動かしている音がする。それを聞きながら天井をぼんやりとみれば月明かりがゆらゆらとして、リーオはああ今日は月がきれいだろうなとぼんやりと思う。しばらくその光を見つめているとそれが陰る、エリオットがリーオを見下ろして影を落としていた。

エリオットは奇妙なほど無表情だった。情緒豊かな彼がリーオに向ける表情としては珍しい、どうしたの?と声をかける前にずいっとリーオの前にエリオットの腕が差し出された。

正確には差し出されたのはいくつかの小さな箱だった。さっき貰った高級な包装ではない安っぽいカラフルな包装だった。下町で売っているような、安っぽいけれどどこかわくわくしたような彩りがいくつも並んでいる。


「これはな、たしか本の形をしているとかなんだとかっていう説明でな!こっちは音符の形をしているとかなんだとか・・・!あとこっちもお前が好きそうな、ちょっと変わった・・・・・・だから、これをやる!」

「・・・・・・へ?僕に、また?」

「またとかじゃなくてな・・・その、いつも家族と送るのと同じじゃ、せっかくこんな関係になったのにつまんねえかと思って、何か違うものがないかと思ったからこっそり街に行ったんだが・・・・・・そ、そしたら!知らなかったんだがバレンタインには、こ、ここここ、恋人に贈り物をする日だとかなんとか・・・・・・・」

「・・・・・・え?知らなかったの、ぼくが君から聞いて最初に読んだ本でも真っ先に載ってたのに?」

「!?し、知ってたのか!?」


怒りを忘れて可哀相になるくらい顔を紅潮させて、エリオットはリーオから一歩引いた。その拍子にばらばらとエリオットの手から小箱たちが散らばる。

それをリーオがとっさに手を伸ばして拾い上げようとして拍子にソファーから滑り落ちる。一つだけ掴み取れたが、身を乗り出したせいでリーオはこのままだとあっさり床に衝突するだろう。ああ、僕って運動神経いまいちだよなと近づいてくる床を見て思うとグイっと襟首を掴まれて息が詰まる。エリオットの声が上から降ってくる。


「こ・・・の馬鹿!怪我したらどうするんだ!」

「・・・っ!けほっ、息が一瞬できなかったよ・・・」

「大丈夫か!?・・・・・・だいたい急に身を乗り出したりするから!」

「だって、エリオットが落とすから・・・・・・あーあ、ほとんど落ちちゃった」


一つだけ手に取った青いリボンの小箱を見ると、半分つぶれていた。中身のチョコレートがのぞいている、音符の形だった。しかし、ほとんどが砕けている。手を伸ばそうとしてかえって壊すなんて、本当に馬鹿なことしたかな。


「でもしょうがないじゃないか、エリオットがせっかく買ってきてくれたのに落としたりなんかするけど」

「だからってな・・・おい、本当に大丈夫か?どこか苦しくないか?」

「うん、大丈夫だよ。それでさ、なんで?」

「なんでって・・・なにがだよ」

「どうして、これ隠してたの?ていうか、僕にくれるつもりだったならこっちを最初にくれればよかったじゃない?」

「そりゃあっちはナイトレイの一員だからのやつだからというか、それはそれでやりたかったし・・・でも、お前に俺が何かやるのはこれが初めてだからそれとは別のをやりたかったんだが、そしたらあれもこれて勧められて・・・・・・とにかくもう少し座って待ってろよ、もう一回ちゃんとやるから」


リーオをソファーに戻すとエリオットはまた眼をそらした。散らばった箱に手を伸ばして集め始める。無視された様な形になったが、毒気を抜かれたようにリーオは屈んで箱を拾い集めるエリオットの背中を見た。耳まで赤い・・・でもこっちだって多分同じようなものだろうな。


「エリオット、ありがとう」

「んだよ・・・急に」

「急なのはそっちだよ、こんなにたくさん僕にバレンタインにプレゼントくれるなんてもったいないよ」

「はあ?なんだよ・・・それ」


手にしたつぶれた箱には砕けた音符のチョコレート、カケラをつまんで口に運ぶとあまくて少し苦い。砕けていびつになっているけど、ちゃんと美味しい。


「だって返しきれないから」

「返さなくていいんだよ」

「そんなに僕が返すのはいや?」

「いやなわけないだろ、でもお前言ってたろ。贈り物は貰うのは生まれて初めてって」


そんなことを言っただろうか・・・?今度バレンタインだからお前にもやるよとエリオットが自然に言うから、ついそんなことを口走ったのだろうか。
すべて集め終わったエリオットは少しへこんでしまった箱をバツが悪そうに、でもとても大切そうに抱えてリーオの隣に座った。緊張しているのかぎゅうと箱を抱きかかえて余計に箱をへこませているが気が付いていない。砕けたチョコレートを口に運ぶのを止めるとリーオはエリオットに向き直った。なんといえばいいかわからずに「美味しかったよ」とそっとつぶれた箱を差し出すと「そっか」と振り返られる。


「僕が初めて貰うから、こんなに用意してくれたの?」

「・・・・・・ちげーよ、逆だよ」

「どういうこと?」

「俺が、お前にとっての初めて贈り物をするなら・・・なんだか普通に終わらせるのはもったいないと思ったんだよ」


エリオットはリーオにもう一度たくさんの箱を差し出した。リーオは一つだけ自分の手に載った箱を膝に乗せるとたくさんの箱を落とさないように大事に受け取る。安い包装箱では落ちた衝撃でさっきのチョコレートのように壊れたものもあるかもしれない、だから少しでも余計な衝撃を与えないためにそっと抱える。


「これは、お前用だから・・・他にはないから」

「・・・・・・うん、ありがと」

「それにその返す奴は本当にいいから、お前が下手すると受け取らないかと思ってたから貰ってくれるだけでいいんだよ」

「なんでそういうことになるのさ、受け取るよ」

「いいんだよ、受け取った時点で返してもらったようなもんだ」

「・・・・・・エリオット、もしかして僕が受け取らないんじゃないかと思って隠してた?」

「・・・・・・だって、お前もの貰うの好きじゃないだろ、スターチスの時みたいに」

「嫌いじゃないよ、ちょっとあの時は驚いたからからかっただけで」

「お前のは冗談に聞こえねえんだよ!
だからあの時みたいな反応されたら、こっちの方のチョコレートはさすがに・・・そのショックというか」

「恋人用だから?」

「・・・・・・・・〜〜っ!そうだよっ、悪かったな!」

「え〜、これ君の愛なんだ。確かにちょっと重いな〜」

「お前、言った先からそれかよ・・・・・・」

「だって返しきれないよ、こんなにたくさん「好きだ」なんて言われても」

「ち、違う!そういう意味・・・だけどな。つーか、本当に返さなくていいから、貰ってくれんならそれで本当にいいから」


エリオットは頑なだ。リーオは色とりどりの箱の中で幸福そうに笑って、エリオットに手をばした。


「・・・・・・さっきみたいに僕がもらったものをあげたら、お返しになるよね?」

「へ・・・リー」


口移しで運んだチョコレートと一緒に渡したファーストキスが、エリオットも同じだったと知るのはまた別の話。

 

終わり

 



 





omake


「ていうかさ、どうして最初に僕のコーヒーにケチつけたの?」

「そりゃ、食って腹いっぱいになったら余計受け取らなくなるかと思ったからな」

「え〜、僕そこまで薄情じゃないよ〜」

「薄情とは思っていないが、お前は気分が変わりやすいからな。満腹の時に食べ物なんて出されたら、「え、なにこれいらない」とか突っ返されるかもしれん」

「そんなことないよ、エリオットからもらうなら宝石でも雑巾でも大事にベッドの上に置いとくから」

「雑巾なんてやるか!それにお前の本の山になってるベッドには置くな、場所がわからなくなるから!」

「え〜、僕には快適な空間なんだけどなあ・・・・・・ねえ、エリオットいい加減ベッドに行かない?
というか一旦離してくれないかな」

「・・・・・・なんだよ?もう眠いのか?」

「・・・・・・・・・いや、まあいいよ。このまま抱きしめあってるのも悪くないし、朝までこうしてよっか」

「そ、そういうことははっきり言うな!」


(う〜ん、年頃だからそっちに反応があるかと思ってるんだけど、エリオットは年頃の割に淡白なのかな。
 まあ、別にまたの機会でいっか。しばらくはこのままで)

(・・・・・・手とが握ったら、どつかれるかな)

 

終わりの終わり

 


 


atogaki


まだ・・・バレンタインだ・・・。

2012-02-15


【追記】さすがに一夜で書いた勢いがあったので、結構修正しました。

そういえばリーオ視点だけで書いたのは初めてですね。背景描写とモノローグと結構ごちゃごちゃしていますね。

冒頭から一貫してエリオットが考えてるのは「やばい日付変わる、早く渡さないと渡さないと・・・!」だけです。指舐めてるのは邪心のかけらもないから始末が悪いです。

ラストを追加してみましたが、順序の思考の落差のイメージはこんな感じです・・・。