ハッピーポイズンウェディング















そのC・当日〜花嫁と花婿〜














「・・・・・・全く、あなたという男は私を待たせるとはいい度胸です」


「べ、別に好きで待たせたのではない・・・・・・。
本当は一時間前から来ていた・・・・・・のだが、母上が急に「やっぱりお色直しできないなんてつまらない、その衣装じゃいまいちだから着替えて」と言って、延々拘束されたのを逃げてきて・・・・・・」


「言い訳は結構。それより言うことがあるのを忘れていませんか?」


「う、ち、遅刻してすまない、こんな日に」


「結構です、まあわたしはまたこの新薬に新たな改良点を見いだして、早速改良していたから特に時間を遅らせるのは構いませんが・・・・・・」


「ちょっと待て、今なんと言った?新薬・・・?そ、その手に持っているドス紫の瓶はなんだアニシナ!?」


「ただの色染め薬に爆発剤を加えていたところに、ちょっと・・・・・・それはともかく今日は陛下を始め国民一同を待たせているのですから、遅刻の謝罪は陛下と家族と式に出席している全ての女性と子供になさい。ああ、もちろんつまらぬ男どもなどは骨になるまで待たせても一向に構いませんが」


「待て、待てアニシナ!なぜ私たちの結婚式に毛染め剤に爆発剤をくわえたものが必要なのだ!?説明しろ!!」


「まあ、一種の余興のようなものです。あまり気にすることはありません」


「いや、ものすごく気になるが・・・・・・」


「私が問題ないと言っているのですから問題はないのです・・・・・・そんなに気になるというのなら、今すぐにこの毒薬品の実験体になりますか?それなら口で説明せずとも分かるでしょう」


「いいや、やっぱり結構だ!・・・・・・赤い悪魔め(ぽそ)」


「何かいいましたか?」


「いいや!なにも言ってない!」


「まあ、いいでしょう。それにしても、デンシャムときたら!ここで待っている間に「はなよめのこめんと」とやらを加えた記念冊子を追加価格で販売するとか言ってしつこく私の実験を邪魔してきて!まあ、昔私が開発した挽肉機の思い出話をしてやったらさっさと退散しましたが・・・・・・そういえばよく考えればこの毒薬品一度デンシャムで実験すれば手間が省けてよかったですね」


「いや!結婚式のその日に花嫁の兄の訃報が届くのは大変縁起が悪いし、せっかく集まってくれ国民に恐怖を、いや不安の種をまくのではないのか!?」


「・・・・・・ちっ」


「おい!?」


「・・・・・・まあ、仕方ありませんね。この毒薬品はぶっつけ本番でやりましょう、あとはこの「即席!炸裂花畑」の種を混ぜれば終了です。これでむさ苦しい男でも華やかにならざるをえないでしょう」


「いや、母上が企画している結婚式なのだから十分華やかなのでは・・・・・・」


「結婚式・・・・・・はあ、まったくあなたがよく書類を読みもせずに署名するからこのようなことをする羽目になってしまったのですよ。
男という生き物は実に注意力が散漫です、あなたも陛下の政務を一任されているのですから反省なさい」


「は?何の話だ?」


「記憶力まで脆弱なのですか?あなたは私が「これは永久もにたあ誓約書ですから、署名なさい」言ったからといって婚姻届だと言うことに気付かないで署名して・・・・・・」


「何の話だ?別に私はあれが婚姻届だと言うことに気付かなかったわけではないが」


「・・・・・・はあ?じゃあ、何で署名したのです?」


「い、いや、その・・・・・・この前お前が実験で気絶した私を放ってカーベルニコフに行っている間に妙な夢を見てな・・・・・・その、お前がいない世界の夢だった。
それはまあ、夢の話だが起きてみてもお前がいなかったので、妙に落ち着かなくなって、そんな時に血盟城に帰ってきていきなりお前が婚姻届に署名しろと怒鳴るから、つい手が・・・・・・」


「・・・・・・・・・」


「まあ、改めて考えると私もどうかしていたのかもしれんが、そこに母上が出てきて私も引っ込みがつかなくなって・・・・・・その、私としてお前とも付き合いも長い、と言うか腐れ縁もここまで続けばもう一生続いても変わらんと言うか、確かにお前以上に印象に残っているものもいないというか・・・・・・結婚しても、いいのかと思って」


「・・・・・・・・・そうですか」


「いや、無論別にもにたあになることを望んでいるわけではなく、ただ出来ればお前の側に・・・」


「分かりました、あなたがそこまで私の相方になりたかったとは知りませんでした」


「・・・・・・あ、ああ!そうだ、アニシナ、お前は確かに頼りにもなるし、その尋常ではない魔導装置に対する情熱に対しても、情熱だけに対しては尊敬できるところも・・・・・・」


「そこまで私の魔動装置のもにたあの座を誰にも渡したくないとは、いっそ天晴れです!!」


「は・・・・・・違う!違う違う違う!私は別にもにたあにはなりたくない!」


「照れずともかまいません!アニシナの側にいたいということはすなわちもにたあ嘆願でしょう。終身雇用の」


「違う違う!ちがーうっ!人の話を・・・・・・き、聞くわけがないか(がく)」


「それではさっそくそこまでもにたあになりたかったグウェンダルのために、さっそくさっき私が開発した「これでらくらくお色直し・改良版」をお飲みなさい。これでいちいち着替えずとも髪や目の色が数秒間に十回変化します。さらに毒薬品に含まれている毛髪爆発材によって髪型が見ているものの度肝を抜く画期的なものになります」


「だから、私はもにたあにはなりたくな・・・・・・なんだと!色々突っ込むのも馬鹿馬鹿しくなるが、それを飲むのか!そのさっきお前が種を入れた途端真っ赤に変色して煮えたぎりだし、さらに時折黒い煙を吐き出しているそれを私の口入れろと!?」


「当然でしょう、また改良版と銘打ってあるからには先ほどのの効果のみではなく画期的に変化した髪型から四季折々の春夏秋冬の花々が華麗に咲き誇る予定です!これで華やかにならざるをえない者は存在しません!我ながら実に画期的で素晴らしい出来です!!
・・・・・・・・・全く、自分の才能が恐ろしくて身震いがするとはこのことです」


「遠くを見つめるな!だいたい四季折々というのに春夏秋冬の花を全てというのは無節操では・・・・・・いや、そうではない!私はそうなる予定なのか!?何かされるかもしれんとは思っていたが、よりによって公衆の面前でそんな姿になれと!?」


「無論です、あなたは私のもにたあなのですから・・・・・・さ、グウェンダルさっそくあなたの望み通りにこれを飲みなさい。記念すべき「永久もにたあ」の第一歩です」


「い、いやだ!色々覚悟はしていたが、それはイヤだ!第一そんな見るのも恐ろしげなものを飲めるか!」


「ここまで来て怖じ気づくとは、これがから男というものは根性無しだというのです!こんなちょっと変わった飲料物を見た程度でそこまで取り乱すとは、それでは「永久もにたあ」の名がすたりますよ」


「そんなものになる気は金輪際ない!!だいたい、それのどこが飲料物だ!明らかに人為的に作られた自然界には決して存在しないであろう毒々しい色・・・・・・や、やめろ、飲ませようとするな!!もうすぐ式が始まる!」


「式が始まるからです、つべこべ言わずにさあさあさあさあ!」


「やーめーろー・・・!ぐ、だいたいお前どうしたんだ!?さっきから妙に嬉しそ・・・・・・・」


「アニシナはいつも絶好調ですとも、さ・あ・の・み・な・さ・い・!」


「やめろといって・・・・・・・・・・・・うわあああああああああああ!」
































『えー、式場の皆さん司会進行の一兵士リリット・ラッチー・(中略)・ダカスコスです。ただいま花婿と花嫁が立て込んでいまして式の開始が遅れておりますがしばしご歓談を・・・・・・』









「あれ、どうしたんだ?グウェンのやつ柄にもなくおめかしして遅刻でもしてるのかな?」


「いえ、彼に限ってそういうことはないかと・・・・・・多分、えー、花嫁の実験か何かの関係かと」


「・・・・・・!?何だって、それじゃまさか兄上は控え室でアニシナの実験の餌食に・・・・・・!?
そ、そんな・・・・・・あ、兄上ー!(だっ!)」


「まーまー、放っておいてやれよ(がし)」


「ほらほらヴォルフ、式直前の新郎新婦に水を差すなんて野暮なことをしちゃいけないよ(がし)」


「はーなーせー、ユーリ!コンラート!この薄情者ども!お前たちは兄上がアニシナの毒牙にかかるのを平気で見ていろと言うのか!」


「いや、もう手遅れかと・・・かなり前から計画進行してたし」


「何だと!?何を知っている、ユーリ!?」


「まあまあ、グウェンもアニシナと結婚するんだからあれくらい覚悟の上さ。ここはやっぱり弟として兄の覚悟を見守ってやらないと」


「黙れ!お前が言うと嘘くさいんだ!」


「そんなこと言ってさー、ヴォルフ、お前グウェンの代わりにアニシナさんのもにたあになるのか?」


「・・・・・・うっ」


「おやおや、何を騒いでいるのですか?このめでたい日に」


「やあ、ギュンターちょっとうちの弟が兄離れをしてくれなくてね」


「あれ?ギュンターなんか今日はやたら嬉しそうだな、そんなにグウェンとアニシナさんの結婚式が嬉しいの?」


「はい、陛下。それもちろん!なにしろこれでもにたあの負担がグウェン一人のものになるのですからね!これが喜ばずにいられるでしょうか!?あんな恐ろしいことはグウェン一人で十分です」


「・・・え、そ、それはどうかな?」


「あらあら盛り上がってるわね〜!みんな、グウェンとアニシナの結婚式今から楽しみなのね〜。それだけ期待をされてこそあたくしが着付けを担当した甲斐があるというものだわ、ああんもう!早く始まらないかしら〜?」


「ツェリさま、いやどうも遅れてるみたいで・・・・・・あ、ドアが開いた!」


「お、やっと始まるな」


「兄上は無事だろうか・・・・・・」









『えー、司会のダカスコスです。ご歓談の中失礼します。
皆様お待たせしました!ついに新郎新婦の入場です、どうぞ皆さん新郎新婦を盛大な拍手でお迎えください・・・・・・!!』














わー!わー!わー・・・・・・!ぱちぱちぱちぱちぱち・・・・・・・・・






















後日談