めえ・でぃ (後編)  そのA
























「ネコアレルギーです」

「「ねこあれるぎぃーーーっ!!?」」



涙とくしゃみが止まらなくったコンラートを連れてきた医務室で1時間待たされた後にギーゼラの説明を聞いたユーリとグレタは叫んだ。



「アレルギーって・・・眞魔国にもそんなものが!?」

「もちろんございますよ陛下。ネコアレルギーのものはネコの毛を不用意に吸うと涙、くしゃみなどの症状がとまらなくなります」

「確かにコンラッドは涙とくしゃみが止まらなくなったけど・・・ネコアレルギーとは」

「そっかー。だからコンラッドあの時泣いてたんだね」



ぽんと手を叩いて納得するグレタの横ユーリも思い出した。そうだった。ヴォルフラムのことで涙ぐんでいたのだと思ったが執務室中に飛び散っていたヴォルフラムのネコっ毛のせいだったのだ。



「でも、コンラッドからそんなこと聞いたことないけど」

「コンラッドがネコアレルギーだったのは幼少の頃で、ある程度の年齢になってからは少しネコと接触する程度ではアレルギーが出ないようになったのです」

「え。でも、さっきは」

「あれだけの間ずっと成人サイズのネコの毛と接していればいくら幼少時になくなる程度のものだとしても再発しても仕方ありません。特にくしゃみが止まらなくなる前はヴォルフラムとかなり接近したのでしょう」

「そうなんだ・・・なんだコンラッドあんなに落ち込んでたのに自分で原因だってことに気づいてなかったか」

「まあ、仕方がないのかもしれません。コンラッド自身も幼少の頃のことで忘れていたようですし」

「え、でも、じゃあなんでコンラッドがネコアレルギーってわかったの?」



ユーリの疑問にギーゼラはくすりといたずらっぽく微笑んで幼馴染の名を呼んだ。



「ヴォルフラムからですよ。先ほどフォンヴォルテール卿がフォンカーベルニコフ卿のネコの言葉を理解する魔動装置「めえりんがる〜これであなたの亀きっとはえてくる〜」に自身で魔力を注いで話を聞いたそうです」

「グウェンが?・・ああ、そっか!その為に自分からアニシナさんに連行されたのか」



つくづく兄弟想いのおにーちゃんだ。いつもはアニシナから逃げ回っているというのに、ヴォルフラムに拒絶されて落ち込んだコンラートのためなら自ら実験室へ向かうとは。

と、ふと気付く。



「ん?てことはさ。ヴォルフがコンラッドから逃げ回ってたのってコンラッドのネコアレルギーのせいだったの?」

「そうですよ、コンラッド自身は覚えていないことだっだのですがヴォルフラムは幼いころに聞かされた話を覚えていたらしいです」

「じゃあ、コンラッドだけから逃げ回ったり、ひっかいたりしてたのは」

「ええ、ネコアレルギーの症状が出ないようにコンラッドに近づかなかったようです」



優しく微笑むギーゼラの前でユーリは脱力して椅子の背もたれに寄りかかった。
そうか、そうだったのか。だったらいってくれよ・・・ってむりか。ネコだし。



「ね、ユーリ言った通りでしょ。ヴォルフがコンラッドに近づかないのはちゃんと理由があったんだって」

「そっか・・・なんだよヴォルフも大概おにーちゃん想いだな」

「うん、コンラッドもヴォルフもお互い大好きなんだね!グウェンもだけど」

「そうだよな〜コンラッドもあんなに落ち込んでたくせに自分で理由が思い出せないで余計に落ち込んで・・・・・・はは、ヴォルフはコンラッドのこと心配してただけだったのに、おれも皆もあんなに心配してさ」

「みんな二人のこと大好きだからだよ」



グレタの言葉になんだか今までの苦悩がおかしくなってきてユーリは笑った。































三日後、魔王の寝室でユーリはヴォルフラムにネグリジェを着せようと奮闘していた。




「めえ〜」

「なんだよ、ギーゼラが言うにはもう明日の朝にはお前は「ネコはしか」は治っているっていったから、明日は毛がぜーんぶ抜け落ちて素っ裸になっちゃうらしいから今日は服を着ないといけないんだぞ」



もともと毛皮に覆われているため暑いのかヴォルフラムはなかなかネグリジェを着ようとしない。ユーリはもともと着たこともないような寝間着を着せるのに余計苦労していた。

そのユーリの苦労のことなど意識の外とばかりにヴォルフラムは不満そうだった。




「ほら、じっとして。右手上げて」

「めえ〜・・・・」

「なんだよ、お前の為だろ」

「む〜、めえ〜」

「陛下、ヴォルフラムはネグリジェを着る時は左から着ると決めているんですよ。昔からそうじゃないと何が何でも着ようとしないんです」

「へえ、そっかー・・・・・・・・・ってなんでいるんだよコンラッド!!?」

「めえ!?」



ここにいるのは当然とばかりの態度のコンラートが何時の間にやらベッドの端に座っている。



「イヤ、今日でヴォルフラムの「ネコはしか」は治ると聞いて最後にそのネコぶりを堪能しようかと」

「だって、あんたネコアレルギーで昨日まで医務室で寝てたじゃないか。
これじゃまたアレルギーが・・・・・・って、あれ?何それ?」



コンラートの姿にユーリは驚いた。顔を下半分が布でぐるぐる巻きにされている。



「地球の日本ではこういうものでアレルギーを防ぐんでしたよね。何とかこっちでも使えないかといろいろと試行錯誤した結果こういう姿に」

「いや、マスクはどっちかってーと風邪の人とかが・・・まあ、花粉症の人もしているけど」

「これでおれもヴォルフに近づいても大丈夫なはず・・・ほらこんなに近づいても症状が再発しないでしょう?」

「めえ・・・?」

「あ、ほんとだ・・・あれコンラッド?寝間着まで着て、ひょっとして泊ってくつもり?」

「め!?」

「もちろん、この三日間みんなヴォルフのネコぶりを堪能したのに俺だけできなかったのですからいいでしょう?ほら、ヴォルフにこんなに近づいても症状が出ないし。な、ヴォルフ」

「めえっめえっ!」

「コンラッド、アレルギーが出ないとしてもヴォルフにそんなにくっつくなよ。ただでさえ暑くてネグリジェ着るの嫌がってるのに」

「大丈夫です、おれはヴォルフにネグリジェを着せる道では達人ですから・・・ほらヴォルフ、左手あげて」

「めええめえ・・・・フーーー!」

「あんなに俺から逃げてまで心配してくれたなんて嬉しかったよ、ヴォルフラム」

「いや、少なくとも今は怒ってると思うけど・・・」



やたらと嬉しそうなコンラートに3日前の落ち込みは欠片も残っていなかった。あんなにヴォルフラムに拒絶されたたびに海よりも深く落ち込んでいたというのに大した回復力だ。

まあ、ヴォルフラムが拒絶された理由はコンラートのためだったのだから、その分嬉しかったことには違いないだろうが。



「ほら、コンラッド。着せるのおれも手伝うからもうちょっと離れてやれよ。嫌がってるぞ、今度は本心から」

「照れてるんですよ・・・ほら今度は右手をあげて」

「めえーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「かわいいなあ、ヴォルフは」

「・・・・・・おれはコンラッドの立ち直りっぷりがすごいと思うよ・・・・・・」



ヴォルフラムに抱きつきながらも着々とネグリジェを着せているコンラートにユーリは呆れた。
でもそれ以上にうれしいような気分になる。やっぱりコンラートとヴォルフラムはは落ち込だり避けたりされているよりじゃれあってケンカしているほうがずっといい。

ユーリはそう結論すると「それじゃ、今晩は三人で寝ましょうか」というと3人でベットに寝転がった。
隣で繰り返される2人の「めえめえ」という声の混じった会話に、明日からまたいつものヴォルフラムとコンラートのケンカのようなじゃれあいのようなコミュニケーションが再会するのだろうなと思う。

それもいいものなのだろう。いや、それこそが2人にはいいのだ。きっとそうだ。

ユーリがそう夢うつつに思った頃にはもう眠りの縁に落ちていた。






























「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」



血盟城の朝に悲鳴が響いた。
しかし、三日前と違って今度の悲鳴の主はユーリではなかった。



「おい、ユーリ!起きろユーリ!」

「ん・・・・・・ヴォルフ?なんだよ、お前もう「ネコはしか」は治って・・・」

「いいから起きろ、ユーリ大変だ!!」

「・・・・・・めずらしいなお前がおれより早く起きるなんて」

「そんな話をしている場合じゃない!み、見ろ、ユーリ、コンラートが・・・!!」



叫んだヴォルフラムの指さす先を見て、ユーリは三日前と同じように、いやそれ以上に驚愕してその光景を見た。



「コ、コンラッドにネコミミ生えてるし・・・・・・!!」

「そうなんだ!!朝起きたらなぜかコンラートがいるし、しかもぼくに抱きついてるし、挙句の果てにネコになってるし!!」

「コンラッドも「ネコはしか」まだだったのかよ・・・うわ、ちゃんとネコの手になってるししっぽもある」

「「ネコはしか」だと!?コンラートの歳なってかかるなど前代未聞・・・・・・うわあ!!?」



叫ぶヴォルフラムの鼻先をを茶色の尻尾がくすぐった。その背後でむくりとコンラートが起き上がる。




「・・・・・・・・・・・・・・」

「うわ、起き上がった!ユーリ何とかしろ!!こっちを見ている!!」

「いやなんとかって言われても・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ち、近づくな!」



コンラートはヴォルフラムに近づくと・・・・・・顔をべろんとなめた。



「や、やめろコンラート!!ユーリ助けろ!!」

「めえ」

「なめるな、くすぐったい!!」

「めえめえ」

「うわなめるな触るな、押し倒そうとするなーーーーー!!」

「めえめえめえ」

「ああもう!ユーリ早くなんとかしろーーーーーー!!」


「えーと・・・・・・」




とりあえず


まだネコ騒動は終わりそうにないことはユーリは確信した。






















終わり











こんな話にお付き合いいただきありがとうございました。

ギャグテイストで行けば気楽に書けるだろうと思って、いたら(3)は5回書き直すハメになりました。でも、大たいの筋も内容も変わっていません。ああ。

猫っ毛の描写が多いのは実家で飼っている猫がやっぱり毛が抜けて大変だからです。ネコアレルギーについてはあんまり調べていません。(おい)花粉症っぽい症状が出てくることにしてみました。

もちろんコンがネコアレルギーというのは捏造です。





おまけがあります→おまけ